第十二話 呼び出し
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「あなたは生徒会の一員になることが決定しているのよ」
その言葉に俺は驚き、寮に戻ろうとしていた足を再び朝瀬川さん、改め美月さんに向ける。
「あのー、いつの間に俺が生徒会に入ることになったんですか?」
そしてとりあえずどういう経緯で俺が生徒会に入ったのかを聞いたら、
「会長からのプレゼントよ」
という答えが返ってきた。一瞬、プレゼント? と思ったが歓迎会の時の優姉の言葉を思い出して納得する。
優姉のあの時の笑みはこういう意味だったのかもしれない。でも優姉のことだからこれだけじゃなくて、色々と考えてるのかもしれないから特定はできないが……
どちらにしろ俺を生徒会に入れて一体何をさせるつもりなのだろうか……
「哲也くん?」
「……すいません。ボーッとしてました」
美月さんに呼びかけられるまで優姉の意を考え込んでしまい、言葉通りボーっとしてしまっていた。
こんな姿を見せてしまったことが恥ずかしくて顔が少し熱くなってしまうが、それを振りきるように俺は先程までの話の続きを聞く。
「会長のプレゼントって歓迎会の時のゲームで一位をとった時の景品的なものですよね?」
「ええ、そうよ」
美月さんは俺の質問に対して頷く。
ということは俺以外にも美佳が生徒会に入るのだろう。俺は別としても美佳の場合は優姉のプレゼントなんかなくても学年主席だし、入ることになっただろうけど。
「あんな決め方で生徒会に入っても大丈夫なんですか? きっと不満を持つ生徒もいると思いますし……」
「会長が決めたことだしね。文句がある生徒は私たち、というか主に会長がひねり潰しに行くと思うから大丈夫よ」
「そうですか……」
物騒な言葉に思わず苦笑いを浮かべてしまう。でもこの言い方だとやはり文句が出ることは間違いないのだろう。
「確認でしかないんですけど、生徒会に入ることを断ることってできませんよね?」
「別に断っても大丈夫よ」
きっと即答で肯定の言葉が出てくると思っていたが、答えは予想外にも断っても問題なかった。たぶんここで了承してしまったら、面倒くさい仕事や出来事に巻き込まれてしまう可能性は大。それは嫌だったからできたら断りたいと思っていたので、ここは断ろうと思ったが、
「ただ会長と私も含まれているその仲間があなたを追い回すことになるだろうけどね」
と満面の笑みでこんなことを言われなければ。なぜ姉さんといいこの人といい女性の笑顔はこんなにも怖いのだろうか……
「それは怖いですね。元々断る気もない俺には関係ないですけどね」
俺は断るという考えをごまかすようにちょっと早口になりながらそう告げた。それと同時に断るということが出来なくなってしまった。
「それもそうね。ちゃんとした連絡が後で来ると思うから大丈夫だろうけど、今日の放課後に集まりがあるから忘れずに来なよ」
「はい……」
これで俺は決定的に、生徒会という縛りから逃げることができなくなるだろう。
「それじゃ、寮に戻ろうか」
美月さんがそう言って寮に向かって歩きだし、俺も寮へと戻っていった……
そして学校。
俺はいつもより早めに学校に着いた。この時間帯だとあまり人がいない。あまりいないとは言っても少ないだけで普通に何人か生徒がいる。
そのなかに知り合い、という言い方は他人行儀すぎる人物が窓の外の景色を眺めていた。俺はそいつに話しかける。
「相変わらず早起きだな、美佳」
相変わらずというのも、昔から美佳は毎朝早くに起きていた。天性?の朝型なのだ。ちなみに夜にはあまり強くはない。
「毎日、朝早くにトレーニングしてる哲也に言われてもね」
そう皮肉っぽく言ってくるも、心なしか話しかけられて俺の方を向いたときに嬉しそうな顔をしたのであまり効果はない。しかし何で俺みたいなやつに話しかけられて嬉しそうにするのだろうか? 美佳の容姿だったら男には困らないだろうに……
「まさか……お前ってブラコンなのk、ぶはぁっ」
「何言ってるのよ!? そんなわけないでしょ!!」
俺は言っている途中で美佳に顔面をグーで殴られた。まさかいきなり殴られるとは思っていなかったので、反応なんてできずに避けることも受け身をとることもできずにぶっ飛んだ。
すげぇ痛い……自業自得かもしれないけど……
殴った美佳は怒ったようで顔を真っ赤にして自分の教室に戻っていった。
この一連のシーンを見ていた人が居なかったのが唯一の救い。不幸中の幸いというやつだ。
あれから俺は痛い頬をさすりながら教室に戻り、自分の席で腕を枕にして突っ伏していた。
「おーっす哲也ー……っておいおい、朝から何があったんだ?」
話しかけられたようなので顔を上げるとそこにはトシがいた。トシは俺の顔が腫れているのを見て何かあったことを悟ったのだろう。いきなり俺に質問をぶつけてきた。
「……まぁな」
「そうか……聞かないでおいた方がいいっぽいな。そういえばさ昨日――」
俺が複雑そうな雰囲気で曖昧に答えると、トシは俺から何かを感じ取り何事もなかったように面白い話始めていく。トシのこういう風に空気を読むことができる性格には感謝しておこう。
まさか、女子生徒、しかも妹をからかったあげく、殴られたなんて口が裂けても言いたくない。
生徒がだいぶ来た頃、雑談で段々と盛り上がってきた俺達のところに朱里がやって来た。
「おはよートシに哲也くん。あれ哲也くんどうしたの? もしかして自分の容姿を利用して女の子に変なことをさせようと迫ったあげくに殴られたの?」
「なぜそういう推測になる……」
来ていきなりこの質問攻めはひどいのではないだろうか……完璧にあってはいないものの、所々合っているのできっぱりと否定ができない。そのせいで朱里の推測が聞こえた周りの生徒からの視線がなかなかに痛い。
「あはは、ごめんね。で誰に殴られたの?」
謝ってから一応軽く反省はしたようで、小声で質問してくる。
「別に誰でもいいだろ」
「えー教えてくれたっていいじゃん。ねっ、教えてよ。こんな面白そうな話は聞き逃すわけにはいかない!」
俺は素っ気なく答えたが、朱里はそんな俺の態度を全く気にせずに聞こうとしてくる。
「おっ、朱里、そろっと教室に戻らないとやばいんじゃないか? チャイムなるぞ」
「あれ、もうそんな時間? 今聞きたかったけどしょうがないか……後でちゃんと聞かせてよ」
話をそらすように俺が朱里にそう伝えると、不本意そうだったが朱里はそう言って自分の教室へと戻っていった。
それから数分後にはチャイムがなって担任の岡嶋先生が入ってきた。
「さっさと席につけ―。……じゃあ出席とるぞ」
岡嶋先生が出席をとるために生徒の名前を呼んでいく。そして全員の名前が呼び終わったところで連絡事項を伝え始める。
「今日は午前は昨日とかと変わらずに普通に授業をする。んで午後からは魔法を使う授業をするからな。集合場所を間違えたり、遅れたりするなよ。連絡は以上だ」
クラスの人達が次の授業の準備をし始める。俺も準備しようとしたが、そこに岡嶋先生から声がかけられる。
「楠木、ちょっと話がある。授業の準備が終わってからで良いから学園長室に来い」
岡嶋先生は俺にそう伝えると教室から出ていった。
俺はできるだけ急いで授業の準備してから学園長室に向かった……