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Dropbehind  作者: ziure
第四章 学園祭編
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第百十六話 火の大精霊

開いてくださりありがとうございます。


誤字脱字あったら報告お願いします。

 唐突に現れた二つの存在。

 その二つの存在がどれほど強いのかは、ここにいる全員が自然と肌で感じていた。


『相手は人間か。しかも一人とはな』


 イフリートは哲也を敵だとすぐに判断したようで、睨みをきかし、存在を示すかのように熱気を撒き散らし、威圧をかける。

 その威圧の余波に、その存在を知っている、むしろ彼女らにそれを教え込んだ本人である志郎ですら、味方だと分かっているのに冷や汗が流れ出る。

 だが直接それを受けた哲也は、眉を軽くひそめるだけで、特に何も感じていないようだった。

 

『全くそうやってすぐに威圧して……』


 フェニックスはすぐに戦闘モードに入ったイフリートを相変わらずの戦闘狂……と言いたげな視線で見ていたが、近くにいるトシの姿を見つけて、すぐに切り替える。


 そして、一度美佳の方を向き、懇願するような彼女の表情を見た後、安心させるように頷き、再び視線をトシの方に戻す。


 朱里の腕の中で意識を失っているトシは変わらず腕から血が流れ続けている。このまま何も処置をしなければ、死んでしまうだろう。


 フェニックスは大きく翼を広げると、美しいさえずりのような声を上げる。


「きゃあ!!」


 それに合わせたように朱里が悲鳴を上げ、トシから離れる。

 それも仕方ないだろう。トシの身体が突如オレンジ色の炎に包まれたのだから。炎を見たら、人間は反射的に熱さから逃れるために動くのが普通だ。


 その後、朱里はトシの体が燃えているのを認識し、それをやったのがその精霊ということを直感して、キッと睨み付ける。なんでトシに手を出しているのよと言わんばかりに。確かに傍から見れば炎で燃やして埋葬しているように見えなくもない。


『落ち着け、そこの女子(おなご)よ』


 そこでフェニックスから声がかかる。その声は男とも女とも思える声で、不思議と安心感を与えるものだった。

 それにより冷静になった朱里は、その炎から熱さが感じられないことにようやく気付いた。だだ、心地の良い穏やかな温かさはしかと感じられる。さらに言えば、さっきまでとめどなく流れていた血が止まっている。


 そこからは目が奪われるような光景が流れる。

 

 トシを包むオレンジ色の炎が、切られた肘の部分のみ透き通るようなエメラルドグリーンになっているのだ。そして肘の部分だけに揺らめいていたそのグリーンの炎は、トシの腕の太さよりも一回り大きいサイズを模りながらユラユラと伸びていく。


「えっ!!」


 朱里は思わず驚きの声を上げる。朱里だけに限らずそれを見た全員が声を上げていた。

 それも仕方のないことで、ずっと目を離さず見ていたその炎の部分に、いつの間にか、傷一つない、肌色の腕が現れていたのだから。


 再生の鳳凰フェニックス。


 火の大精霊であり、その中でも唯一の治癒の力を持つ存在。

 その炎を与えられたものは、死人ですら生き返らせるという噂もあったという。

 ただ、召喚する際には多大な魔力がかかり、再生の炎を使う際にも異常ともいえる魔力を召喚者から容赦なく奪っていく。

 さらに一番厳しいのは、召喚を失敗した際の代償が、命を奪われることだ。だから召喚をするのには、それ相応の覚悟がいるのだ。

 ちなみに精霊召喚に失敗した時の代償は、それぞれ違うが、基本的にはかなり重いものになる。


「美佳、平気?」

「へ、平気とは……言えないかも。でも、大丈夫」


 トシの腕を治し終えると、魔力を消費した美佳は苦しそうな表情を浮かべる。 

 六家の中でも高い方と言われている美佳だが、精霊の召喚は負荷がひどい。それからさらにトシの治癒に魔力を使えば、いくら魔力が高いとはいえ、それでもすぐに魔力が枯渇ギリギリになってしまう。

 

『ぐおおおおお!』

 

 一方、哲也と対峙していたイフリートは戦闘に入っていた。

 雄叫びともいえる声を発しながら、その巨漢に似合わない鋭く速い動きで哲也に向かっていく。

 だが、哲也はそのスピードを見ても特に慌てた様子もなく、完璧に見切り、余裕をもって躱す。


「……っ」


 躱したはずの攻撃。しかし哲也は眉をひそめる。

 

『それしかダメージを受けんとはな』


 イフリートは感心したように呟く。

 見れば、哲也の胸元あたりの服が切れ、一部分だけ肌が露出していた。その肌も熱で真っ赤になっている。さらに、一筋の赤い線が走り肌が切れ、血が肌を伝う。


 実は、腕に刃のように鋭い形状をした熱を纏わりつかせて攻撃をしたのだ。よく見ればその部分だけ異常にユラユラと景色が歪んでいる。

 その範囲は余裕をもって躱したはずの哲也にダメージを与えるほどのもの。

 炎ではなく、熱のみで構成されたそれは、目に見えない。

 つまりは、見えない刃となって相手を襲う。


 破壊の獄熱イフリート。


 フェニックスと同じく火の大精霊であり、その身にまとった炎は、万物を焼き尽くし、相手を破壊し、確実に死へと追いやると言われている。

 

『ぐおおおおお!』


 そして、再び同じようにして、イフリートは哲也に向かっていく。

 それに対して哲也は、突っ込むように地面を蹴り、一直線にイフリートに向かう。


『笑止。精霊に物理敵に攻撃するなど』


 精霊というのは魔力を源として創られていて、一種の幻に近い存在である。事実として、精霊に対して物理的な攻撃を仕掛けたとしても、実質的なダメージは与えることはできない。もし、攻撃を仕掛けるなら魔法でダメージを与えるしかないのである。


 だからイフリートは哲也のことを愚かしい目で見つめた。そして、同時にここで戦闘不能に追い込もうと思った。


 イフリートは先ほどよりも腕の刃の数を増やし、リーチを伸ばした熱を創る。そしてそのまま哲也に向けて拳を突き出す。

 これなら先ほどと同じように避けても哲也は、深いダメージを受けるだろう。

 

『――むっ!?』

 

 拳だけではなく、創り上げた刃も完璧に見切り、哲也は攻撃をかわす。今回避けれたのは、先ほどよりも体氣による目の強化を増加したからだ。その代わり足の強化を緩めているのだが、元々の速さ故にそこまで支障は出ないようである。


『ならばっ!!』


 イフリートは熱の刃では仕留められないと見るや、哲也の攻撃が振るわれる前に、一度大きく距離を取る。

 哲也はその間合いをすぐに埋めようと地面を蹴ろうとするが、瞬間、哲也の視界一面に、炎が映る。

 その光景は炎の波が襲ってくるような感じだ。

 気付けば、背後にも同じような炎が造られていた。

 炎に板挟みされる哲也。逃げ場が存在しない以上、いくらスピードがあろうとも逃げようがない。

 精霊の強み、それは人で言う魔法を無詠唱で使いこなせることにある。さらにその威力は計り知れない。


 そして、哲也は炎に呑まれた。



   

今回はいつもよりも書いては消して書いては消してを繰り返してました……。


おおよその内容が決まってても、ずばっ!! と書けない自分が辛いです。


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