表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
Dropbehind  作者: ziure
第四章 学園祭編
107/128

第百七話 接触(1)

開いてくださりありがとうございます。


誤字脱字ありましたら報告お願いします。

 見回りの仕事は、まずは各学年ごとの場所で行うということになっている。

 要は美佳と俺は一年生の、美月さんと鷹已さんは二年生、野田さんは三年生といった感じだ。

 そんなわけで俺は美佳と一緒に一年生が活動するフロアへと足を運んでいた。

 早朝の時の静かな時間とは打って変わって、学園内はすでに活気に満ち溢れている。

 先ほどの会議で少々気が滅入っていたが、目の前の学園祭ムードはそれを打ち消すだけの高揚感を与えてくれている感じがした。


「会議をしてたほんの数十分で、空間って変わるものね」


 きっと美佳も早朝の静寂な時間と比べてそう思ったのだろう。

 変わったいるのは空気だけではなく、目で見える光景もずいぶん変わっている。

 前日に準備のほとんどが終わっていたとはいえ、最終の仕上げをして会場の光景が変わっている要因の一つだろうが、やっぱり多くの人がいつもと違う見慣れない恰好でうろついていることが一番大きいだろう。


「とりあえず半分に割って確認していくか。それでいいよな?」


 生徒会でやる最初の仕事はクラスごとでやる出し物に誤りがないか確認することだ。  

 確認し終えたら生徒室に言って優姉に報告するという流れになっている。

 

「ええ、構わないわ。それじゃ、私はこっち側から見ていくわね」

「じゃあ俺はあっち側からだな」


 簡単に仕事の分担をして、一旦美佳と別れる。

 とりあえず自分の仕事をこなしていくとしますか。



――――――――


 

「全クラスも問題なしっと」


 担当していた最後のクラスの確認を終え、確認用紙に記入する。 

 後はこれを提出すれば最初の仕事は終了だ。 

 それにしてもどのクラスも楽しそうで何よりだったな……

 まぁ楽しそうなのはいいことだし、全く持って問題はない。ただ学園祭独特の空気というか、そういうのに当てられたみんなが羽目を外しすぎないように監視することが、生徒会の方の警備の仕事となるので、俺たちの仕事が増えないようにしてくださいとだけは伝えておいた。


 俺が記入を終えて顔を上げると、ちょうど美佳がクラスから外に出て来るところだった。


「ほぼ同時に終わったみたいね」

「まぁ見る数は半分ずつだったしな」


 そんな感じの簡素な会話を行いながら、目的地が一緒ということもあり並んでてくてくと歩いていく。


「……悪いけど、ちょっとトイレ行ってくるから先行ってて。すぐに戻るけど、これ先に渡しておいてくれると助かる」

「トイレなんてこれ渡した後でもいいじゃない……」

「マジで洩れそうなんだって、頼む」

「……まぁ別にいいけど」


 ちょっと怪しまれている感じもしたが、一応は納得してくれたようで、美佳は俺の報告書を受け取って先に進んでいく。

 俺は目の前にあるトイレに入ってすぐに足を止める。そして一回ため息。

 もっとうまく一人になれる方法があればよかったんだけどと思わないでもないが、とりあえず一人になれたので良しとしよう。


「……もしかして学園祭の最中ずっと幻術魔法を使って姿を隠しながら監視するつもりなんですか?」


 俺は呆れたように一つ溜息をついて、誰かに向かって話しかけるようにそういった。  

 すると後ろの空間がぐにゃりと歪み、二人の人物が出てくる。

 一人は身長が高く細見でひょろっとしている。そして神経質っぽくていかにも研究者っぽい雰囲気を醸し出した黒髪の男性。

 もう一人はちょっときつめの印象を与えそうな釣り目が特徴的で、いかにも王女様っぽい感じがする女性。長いベージュ色の髪が妙に目を引く。

 二人に共通して言えることは、どちらも俺のことを警戒するように見ているということだ。 


「……いつから気づいていた?」

「最初からですよ。俺が生徒会室から出て来てからずっと監視してたでしょ、黒淵さん」

「…………」


 俺がそう答えると、男の方――闇の六家の黒淵さんは沈黙を保ったまま、より一層警戒するような視線で俺のことを睨み付けるように見てくる。

 俺はその視線の変化に内心で溜息をつく。

 とりあえずは聞くことを聞いて、それと同時にこちらの要求を言うか……

 聞き入れてもらえるかは別として、言うだけならタダだし。

  

「それにしても、なんで俺はこんな風に監視されるくらいに警戒されているんですか? さっきの話し合いの時といい正直言ってうんざりするので、できればやめていただきたいのですが……」


 沈黙の時間がしばらく続くと思ったが、女の方――光の六家の光磨さんがすぐにその沈黙を破った。


「残念ながらキミの監視をやめてほしいという要求を聞き入れるのは無理」

「……理由を聞いても?」


 あまりに即答だったので少しだけ理由を聞くことに戸惑いを覚えたが、言うだけならタダだと自分に言い聞かせながら俺はそう言った。


「そうね……まぁ本当はあまり言わない方がいいんだろうけど、キミ自身にも警戒心を持ってもらった方がこっちとしてもいいかもしれないから教えてあげるわ」


 光磨さんのその言葉を聞いて、黒淵さんは驚いたように目を見開く。

 ちなみに俺も驚いている。いやだって教えてくれると思ってなかったし。


「おい!」

「別にいいじゃない。姿を現した時点で私はこの子と話し合いをするつもりだったし。それにこの子賢そうだから話せばいろいろと通じそうだし」

「――好きにしろっ! 俺は知らんからな」


 黒淵さんは怒りを露わにしながらそれだけ言い残すと、先ほどのように姿をくらましてどこかへ行ってしまう。……こんなに早く綺麗に姿をくらます魔法が使えるのはさすがだなぁ。

 まぁそれは置いておくとして。


「それで聞いてもいいんですか?」

「ええ、問題ないわ。ただし――」

「ただし?」

「こっちが理由を教えてあげる代わりに、どうやって私たちがいるってわかったか教えなさい」


 まぁそれぐらいの情報提供はいいか……俺としてもなんで警戒されているのかわかればいろいろと対応できるかもだし、もし警戒を解く(すべ)がなかったとしても俺個人の心理的ストレスが少しは減るしな。


「別にそれくらいは構わないですよ」

「それじゃあ、教えてちょうだい」

「教えるのはいいですけど、理由の方、後でちゃんと聞かせてくださいね」

「約束は守るわ」


 なぜ俺が二人の姿に気づけたかといえば、『氣』を利用した相手の気配察知、もしくは相手の位置情報を知るための技を身に付けたからだ。

 どうやるかを簡単に解説すると、俺を中心として氣を薄く広げる。どうやるかの解説は以上である。


 さて、なぜそれでわかるかを解説しよう。 

 例え魔法で姿を消しても足音を消しても、魔力を上手く隠しても、本人がそこにいるという事実が変わらない以上、動くことによってできる空気の波(振動)は消すとこができない。

 つまり俺の『氣』でその空気の波を俺自身が感じ取れるようにしたのだ。

 ちなみにこれを思いついたのは魔法大会の時の『対人』で野田さんの探知魔法を見た時である。



 そんな感じでざっくりと光磨さんに説明した。  

 俺の話を聞き終えて光磨さんから最初に出てきたのはため息で、次に呆れたような表情だった。


「それやられたら、姿のくらましようがないじゃない……。キミ、相手によっては目をつぶっても勝てるんじゃないの?」

「……やったことないのでどう言いようもないんですが」

「できればそんなことできないですよ、くらい言ってほしかったんだけど……まぁいいわ。とりあえずそっちが教えてくれたんだし、こっちも教えるわね?」


 さっきまでの呆れた表情はどこへやら、真剣な眼差しをこっちに向けてくる。つり目と相まったその鋭さは姉さんとはまた違った怖さを与えてくる。 


「回りくどいことを言うのは好きじゃないからストレートに教えてあげるわ。私たちがキミに対して警戒を解けない理由。それはね――」


 そのせいか、この後の言葉を聞いてはいけないような気がした。が、もう逃げることなどできるわけもなく、ただ鼓膜に届く振動を聞き入れるしかなかった。


「――あなたが発端で事件が起こるという見解を六家(わたしたち)が抱いているからよ」 


  



後もう一日連続で投稿します。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
このランキングタグは表示できません。
ランキングタグに使用できない文字列が含まれるため、非表示にしています。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ