第百五話 学園祭シーズン開始
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月日が経つのも早いもので、気が付けば学園祭シーズンに突入していた。
つまり、今日から学園によっては学園祭が開催されているのだ。
ちなみに俺を含めた何人かのメンバーで、今現在学園祭が行われている第五学園にやってきたりしている。
「おおー、すげーな!」
興奮した様子で顔を綻ばせながら大声を上げるトシ。
その気持ちも分からなくはない。目の前には俺らの学園にどことなく似ている感じの建物が幻想的に、そして色鮮やかに彩られているのだから。トシのように大声を上げるまではしなかったが、思わず嘆息してしまうくらいには目の前の光景はすごかった。
「入口のところからこれって、本当に気合が入ってるわね……」
「何言ってるの美佳ちゃん、当然でしょ! この学園同士の学園祭バトルで気合いが入っていないところなんてあるわけないよ!」
「……それもそうね」
これまた興奮しきっている様子の朱里が、美佳の発言に食いつくように声を上げている。
互いでは仲が良くないとかうんたらかんたら言っているが、トシと朱里はこういうところは本当に似てるよな。本人たちに言ったらまた愚痴をこぼしてくるのだろうけど。
「とりあえずどこから行く?」
「まずは中に入ってから決めましょうよ」
朱里の学園祭の熱に当てられてちょっと疲れたのか、美香がふらっとこっち側に寄ってきたので、俺は話題の一つとしてどこに行きたいの聞いてみるとそんな意見が返ってきた。
まぁ、確かにいろんなところがあるっぽいので中に入ってから決めるのは、一つの選択肢として普通にある答えだろう。
トシたちにもまずは中に行こうという旨を話すと二人とも頷いて同意を示してくれた。
ということで歩き出したはいいのだが……
「1―Cどうですかー!」
「気が向いたらよってね~」
「迷ったらまずはここだよー! はいどうぞ!」
「疲れたら、休みに来てねー」
「男は黙ってここに来い!!」
勧誘の嵐がとてつもなくやばかった。
あちこちからやってくる紙を持った人たち。
いつの間にかもみくちゃにされていて、玄関の中に入った時にはそれぞれのクラスで何をやっているのかが書いてある紙が山となりそうなほど、手元に積み重なっている状態だった。
「資料があればとは思ったけど……これはこれで困るわね……」
美佳が思わずそんなことを呟いてしまうくらいの大量の紙を俺たち全員が抱えていた。
「これじゃあここから探して決めんのも逆に大変かもだし、まずは適当に回ってみて面白そうなところに順次入っていくって感じでいいよな?」
「……仕方ないわね」
どさどさっとバックの中に資料を入れながら確認をとると代表したように美佳が賛成の意を示してくれた。
――――――――
「今の店もよかったな!」
「そうね。食べ物もおいしかったし、サービスもよかったし」
回り始める前に宣言したように、俺たちは面白そうな店を発見しては入るを繰り返して、学園祭を思う存分満喫していた。
想像以上にどの店に入ってもクオリティーが高くて、俺らの学園祭の出番が心配になってきた。
ちなみに言うと俺らの学園祭の出番は第五学園の次だったりする。
「さーて、次はどこに――」
みんなに声をかけようとしたとき、背中からゾワッと悪寒を感じた。
異質な魔力。
俺はその瞬間思わずバッと振り返って後ろを確認した。
「――哲也くーん、美佳ちゃーん!」
だが俺の目に映ったのは予想とは全く違うもので、透き通るような綺麗な声が聞こえてきた。
見れば、かわいらしいメイドの姿をしている人がそこにはいた。そのメイドは長い髪をなびかせて走り、手を振りながらこちらにやってくる。
「久しぶりだね!」
そのメイドは俺らの目の前に立ち止ると満面の笑みでそういってきた。
非常にかわいらしいし、メイド服も似合っているのでいいのだが、このメイドに限っては正直言って褒め言葉に困る。
周りのみんなも同じことを考えているのか難しい顔をしていた。
「あぁ、久しぶりだな」
「うん、久しぶり!」
「……それで、お前はいつ性転換の魔法なんて覚えたんだ?」
「え? どういうこと? 僕、男だよ」
こてっと首を傾げながら(その仕草が無駄に似合っていたりする)本人が言って見せたように、美少女に見えるのだが、いや、美少女にしか見えないのだが、目の前のこいつは男なのである。そう男なのだ。男だよな?
本人に確認は何度かしたことがあるはずなのに不安になるのは相手が相手なので仕方ないだろう。今回に限っては特に不安になる。
「まぁいいか……それでだ、葵。どうしたんだその恰好は?」
「よくぞ聞いてくれました! 僕たちの店でメイド喫茶っていうのやってるんだけど、みんな来てみない? すぐ近くの教室だし、どう?」
葵とは仲もいいし、誘われた以上断る理由もない。
遠慮なく立ち寄らせてもらうことになった。
――――――――
「大丈夫なの葵? 持ち場を離れて。別に私たちの見送りなんていいのよ?」
「大丈夫だから気にしなくていいよ。僕の今回の仕事は宣伝係だから、逆に店内にいる方が自分の持ち場を離れてることになるくらいだったし」
葵たちのクラスのメイド喫茶を思う存分楽しんだ後、俺らはこれで帰ることになった。
葵は俺たちの専属メイドのごとくせっせと動いて見せてくれた。
正直他の客には接客しなくてもいいのかと思わないでもなかったが、このクラスのことに口出しする義務など俺にはないのでやめておいた。
ちなみに俺らが食べた料理は結構おいしくて、「うまい」とかそういった感想を言い合っていたら、葵から「これ洸太が作ったんだよ」という言葉を聞いて驚かされたのはまた別の話。
「今日は楽しかったぜ」
「僕もみんなに来てもらえてうれしかったし、楽しかったよ」
照れもせずに満面の笑みでそんなことを言われるものだから、こっちが照れてしまいそうだ。
「葵は俺らの学園祭には来るつもりなのか?」
「もちろんだよ! 楽しみにしてるからねー」
そう言われると第五学園の学園祭が良かった分、プレッシャーになるな……
「ま、楽しみにしてて! こっちの学園祭も絶対盛り上がるから。なにせ美佳ちゃんと哲也くんが生徒会員として躍動してるんだから」
「それは絶対楽しくなるね!」
朱里の明らかな人任せの発言に突っ込みを入れようとしたが、その前に葵がキラキラした目でこちらを見つめながらそう断言してきた。
いや、そんな風に俺と美佳の名前が出ただけで期待されても正直困るんだが。
「それじゃあ、明後日に会おうぜ」
「うん、またね~」
葵に見送られながら、俺たちは自分たちの学園に帰ることになった。
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いつも座っている椅子に腰を掛けながら、私はカップに入ったお茶を口に含み一息入れていた。
最近は学園祭シーズンということで仕事が多くて大変なんだよね。
「はぁ……」
溜息が思わずこぼれる。
理由は目の前の机に無造作に広げられた手紙。
それを読み終えた私は時期が来るのは早いなと思う。
「あの人がこんな目的のために育てていたなんて知ったら、どう思うんだろう」
あの子に絶望がやってくるんじゃないか。
そんなことを考えてしまう。
もう一度目の前の手紙の最後の行に目を向ける。
『明後日に始めるからね』
何気なく書かれた文字。開始を告げる言葉。
これにあの人はどれほどの憎悪を込めているのだろうか。もしかしたらようやく始められるという歓喜かもしれない。
きっと明後日にこの国の制度がいくつか壊れる。
そんな想像が容易についた。
「とりあえず、仕事の続きをしましょ」
手紙を折りたたんで引き出しにしまい、私は切り替えるように仕事に没頭した。
明後日のことはできるだけ今は考えたくなかったから。