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Dropbehind  作者: ziure
第四章 学園祭編
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第百話 契約

開いてくださりありがとうございます。


誤字脱字あったら報告お願いします。

 魔法競技大会が終わり一週間ほどがたった朝。

 長かった夏休みも昨日で終わり今日から学校が始まる。

 確か夏休みって暑さのあまり生徒の集中力が欠いてしまうから存在するという話を聞いたことがあるのだが、それならまだ休みにしてほしいよな……ていうぐらいまだまだ暑い。

 だからと言って怠けることはせずに、俺はいつものように鍛錬を重ねていた。

 量が異常に増えた氣の扱いをよりうまく扱えるようになるための鍛錬だ。

 風切との対人の時のあれは、今となっては論外と言えるくらいの扱い方だ。ただ単に足に氣を集め、力任せに地面を蹴る。あれはもう無駄の極まりだ。今ならクレーターなど作ることもなくあれくらいのスピードなら余裕で出せるようになっている。方法としては氣を一点に集め、そこを蹴るようにすると同時に爆発するように弾かせるのだ。不思議なことに氣のみの爆発だと本人以外には衝撃すらないのだ。つまり地面は傷一つつかないことになる。だが本人は凄まじいスピードを得ることができるのだ。魔力を混ぜたら地面も俺も大惨事になるだろうけどね。

 それと氣だけを蹴ることでの移動を覚えたことで、いろんな幅を持たせることが可能になった。

 例えばだが、前回の戦いのように直線に低空飛行の如く飛びあがったとしても、氣の塊を蹴ることで直角に曲がるといった変則的な移動が可能になった。後はこれを連続で行うことで空中歩行ができるかもといったところだろうか。かも、というのもまだ何回も連続で飛びあがれるほど、早く正確に氣を作りだして、蹴って、爆発させての繰り返しが上手くできないからだ。せいぜい予備を作った状態で開始して四回が限界。それに空中歩行は滑らかに上に歩いていくイメージで優雅な感じがあるけど、俺の場合は飛び上がって、飛び上がってという感じで、歩くというよりは飛び跳ねてる感じ。

 まぁ普通の相手くらいなら適当に氣で強化して移動して攻撃してってやる方が、明らかに楽で無駄がないと思うけどね。

 だからと言ってそれに合わせる気はさらさらないので、より強い相手と対峙することを考えて、氣の扱いに関しては、移動ばかりになっている。


「ふぅ……」


 疲れも出てきたので一息いれる。ということで自分の荷物が置いてあるところで腰を下ろす。

 暑さから額に浮かぶ汗を拭きながら、水を入れた水筒でのどを潤す。こういう日の水は格別においしい。

 

 そしていつもなら持ってきていない、何もなければずっと扱わなかっただろう物に目を向ける。

 

 目線の先には鞘に収まった一本の剣。

 全体的に見れば十字架に似た形をした細身の剣で、柄と刃の長さは一対五くらいの割合だ。

 鞘の装飾はこれと言って特徴があるわけでもなく地味な印象を与えてくる。

 ただまるで封印してあるかのように巻きつけられた鎖と、縦と横が丁度合わさっている部分に付けられている宝石のような赤みを帯びた物が、妙な雰囲気をこの剣に与えている感じだ。

 

 ちなみにこの剣は姉さんが愛用していた剣。

 俺が旅立つときに姉さんから受け取ったあの剣だ。

 

 なぜ俺がこれを今日持ってきたかと言われれば、無論これを使うからだ。


 その剣に手を伸ばし、手にとって、改めてマジマジとその剣を見つめながら、姉さんとの二人きりで話した時のことを思い出す。



 あの時、姉さんの背中に付いていき辿り着いたのは一つの部屋だ。

 部屋の中にあったのは、テーブルとそれを挟むように置かれた椅子、そして中を灯すテーブルに置かれた一本の蝋燭のみだった。

 大分古くなってきているだろう扉がキィと音を立て、バタンと音を立てて閉まる。

 そこまで部屋の大きさは広くないし、それに先ほどまで歩いてきた道のりの暗さも相まって、蝋燭一本でもそれなりに中は明るく見えた。

 

 姉さんはさっきまでと全く変わらない歩調で歩き、奥の方の椅子に座った。


「そっちに座りなさい」


 姉さんからの言葉を受け、自分がボーっと立っていたことに気付き、そそくさと言われた通りに姉さんの向かい側となる手前側の椅子に座る。


 最初は他愛のない話から始まった。

 いきなり現れたとき驚いたでしょ? とか言われた通り風切の子を瞬殺したから合格だ、とかいろいろ注目を浴びたんじゃない? とか。

 姉さんはこういった会話を楽しむように話すが、一つだけ問題がある。

 こういった楽しみながらの長話の後は、重要な話がいきなりやってくる可能性が高いのだ。

 姉さんなりの気遣いで緊張をほぐすためなのかもしれないが、あまりに自然に重要な話が組み込まれていたりするので、気がつけば話が付いていたりすることもあった。

 そのせいで死にかけるような戦いを強いられたことが何回あったことか……

 まぁ意識を集中しきれてない俺も悪いんだけどさ。


「精霊の知識は知ってるわよね?」


 話題はどんどん展開していく。


「基本的なことくらいならね。学園でもそこまで深くはやってないから、詳しいところまでは知らないけど」

「なら話が早いわね。そろそろ精霊と契約してもらおうかなって思ってるのよ。出来れば六大精霊クラスの」


 とか思っているうちに早速それがやってきた。

 ちょっと冗談めかして言っているように感じるが、こういう時こそ姉さんの本気度は高い。


「いやいやいや。契約の方法も知らないのに、それも六大精霊クラスと契約とか……」


 六大精霊クラスって……確かあれでしょ。前授業でやったイフリートだとかシルフだとか。

 なんか授業で世界を制圧できるレベルとか聞いた気がするんですけど。


「なら教えるわ。契約方法はいたって単純よ。精霊を認めさせればいいの」


 そんなやばいものを認めさせるとか……無理じゃないの? それに六大精霊程のレベルを持った精霊が身近にいるかどうかも問題だと思うんだが……

 俺の考えが顔に出ていたのか、姉さんはフッと微笑みながら「大丈夫よ」と安心させるように声をかけてきた。


「居場所については問題ないわ。旅立つときに渡した私の愛剣があるでしょ。それを使えば大丈夫よ。それと契約は失敗しても死ぬことはないから。……死ぬほど痛い思いをする可能性はあるけど」

「全然大丈夫じゃないじゃん!?」



 とまぁ、こんな話があったわけだ。

 つまりこの剣を持ってきたのは今から剣の稽古をするわけではなく、精霊との契約を行うためだ。

 結局やり方についての詳細を知ることは出来なかったが「鎖を解いた後にあなた自身の体氣を剣に注ぎなさい。後は成り行きよ」と言われた。


 とりあえず、俺は鎖を解くことにする。

 

「あ、れ?」


 だが、鎖をよく見て、尾となる部分、または先端となる部分を探してみるが見つからない。

 力任せに引っ張ってみるが、ビクともしない。


「どうやって解くんだよ……」


 仕方がないから体氣で強化して、鎖をぶち破るか……

 一度呼吸を整えてから体氣で腕を強化しようとする。しようとした。

 不思議なことに体氣は集まらず、腕から抜けていく感覚が俺を襲ってきたのだ。

 まるで生命力を吸われているようだ。


 それと同時に目に眩い赤い光が差し込んできた。

 

 どうやらあの赤みを帯びた宝石から発しているみたいだ。

 力が抜けていく感覚とは逆に光はドンドン強まっていく。

 あまりの眩さに目を閉じてしまう。


 バリィン!!

 

 そしてその瞬間だった。

 まるでガラスが割れるかのような音が聞こえてきた。


 恐る恐る瞼を開けてみる。

 

 そこには鎖がいつの間にか消えて鞘から解き放たれている剣がフワフワと空中を漂っていた。

 幻かと思い目をごしごしとこすって改めて見てみるが、その光景は変わらない。

 見れば手元の剣は鞘しかなかった。


『誰じゃ、妾を起こしたのは』


 そしてそんな声が聞こえてくる。

 咄嗟に眼を強化して剣の方を見てみる。


 そこにはあどけない表情で剣をいじりながらこちらを見てくる少女が浮いていた。

 

百話目到達!!


これまでこの小説に付きあってくださった読者の皆さま本当にありがとうございます!!



後、この小説はこの章で完結の予定です。

少々無理矢理な展開や急すぎる展開があると思いますが、引き続きよろしくお願いします。

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