第十話 歓迎会(2)
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「グループを作り始めろ。できたグループから紙を探し始めてもかまわない」
副会長のその言葉がきっかけでここにいる生徒が動き始める。
「俺らも動くか」
俺は立ちあがってから二人を呼びかける。
「そうだな、二・三年捕まえて早く紙を探すとするか」
トシはそう言って動き出そうとした。しかし朱里が「ねぇねぇ」と、動き出そうとした俺とトシを面白いことを思いついたと言わんばかりに弾んだ声で引きとめる。
「このゲームを利用してこの三人で勝負しない?」
そして、そんな提案をしてきた。
「は?」「どういうこと?」
その提案にトシは意味が分からないという様子だ。俺もほとんど同じ様子になる。そして朱里の提案の意図を聞いた。
「どういうことって言われてもそのままだよ。この三人で勝負するんだよ。そっちの方がもっと面白くなりそうじゃん」
とてもシンプルな理由だった。朱里はとりあえず面白ければ良いようだ。
「勝負するならやっぱり罰ゲームが必要よね……一位の人が他の二人に何か命令を下せるって言うのはどう?」
朱里はルールを告げ、トシに挑発するような目を向ける。
「…おもしれぇ。いいぜ、やろうぜ」
その挑発に簡単に乗ってしまうトシ……どんだけ単純なんだろうか。とはいっても俺もこういう勝負事は嫌いじゃないからトシが乗るにしろ乗らないにしろ、やることにはなっていただろう。
「クリアの数が多い人が勝ちでいいよね?」
「いいぜ」「いいよ」
最後に朱里が勝利条件の確認をする。俺とトシはそれに頷き、それが合図となり三人がそれぞれの方向に動き出した……
(さて、どうしようか……)
俺は心の中でそう呟く。この学園の先輩との交友関係が少なからずあるあの2人は、俺よりはグループがつくりやすいことだろう。俺はあんまり知らない人に声をかけるのは得意ではないと自分では思っている。ということで、歩きまわって声をかけられるのを待つことにしよう。そう決定した瞬間に、後ろから聞き覚えのある女子の声がかかる。
「哲也じゃない。一人なの?」
「美佳か、それと……」
振り返ると、そこには美佳と見知らぬ一人の女子生徒がいた。胸を見てみると赤色のバッチを付けていた。ということは二年か……
「どうも、はじめまして。美佳の友達の朝瀬川美月っていうの。よろしくね。よかったら私たちとグループ組まない?」
「……別にいいですけど」
俺は朝瀬川さんからの提案に頷いた。美佳と組むのは俺にとっては少し不本意ではあるが、早くグループを作ることに越したことはないだろう。
そしてそこにさらに二つの人影がこちらに来た。
「美佳が男の子と一緒にいるなんて珍しいわね~」
「……もしかして彼氏かな?」
「そういうのじゃないですよ! お姉ちゃんならともかく涼香さんまでそういうこと言わないでください」
一人は生徒会長で、もう一人は生徒会の書記の人だった。
「ともかくってことは私は美佳に対していつでもそういうこと言ってもいいの?」
「よくないに決まってるでしょ!」
「なーんだ、つまんないの」
見事な姉妹での漫才が始まる。この二人は姉妹として仲が良かったから、これがお互いにからかいということを分かっている。だから本気で怒ることはないので心配はいらないだろう。
「ホントあなたたち姉妹は仲がいいわね」
漫才中の姉妹に、夏目さんが少し呆れたような感じで、俺の思っていたことを口にする。
「そうかしら」
まんざらでもなくうれしそうにする優姉。
「そういえば生徒会長と書記の方々が、こんなところに話しに来てて大丈夫なんですか?」
俺は優姉に問いかける。
「大丈夫も何も、私たちも参加するのだけど」
「そうなの!?」「そうなんですか!?」
何を言っているのかしら、とでもいうように、小首をかしげながら答える優姉に、驚きを隠せない俺と美佳。てか妹にそういうのって伝えないものなんだ……
「そんなに驚くこと? ちなみに私と涼香がこっちに来たのはあなたたちのグループに混ぜてもらうためよ。入ってもいいかしら? まぁ拒否権なんて与えないんだけど」
姉妹そろって同じグループになってしまうとは、俺は運がないのだろうか……
「俺は構わないですよ」
「会長にそう言われたら拒否することはできないですね」
「結局は無理矢理入るんだね」
俺は素直に頷き、朝瀬川さんは皮肉を言うように答えて、美佳がしょうがないとでも言いたげな口調でそう言った。
「じゃあよろしくね。これで各学年一人ずつ集まったことだし探しにいきましょうか」
ここにいる全員が優姉の言葉に頷いた。
第一体育館を出て俺らは目的地も決めずに適当に歩く。
これは朝瀬川さんの提案で『真面目に探すのもめんどくさいし、適当に歩いて見つけたものを解けば良くない?』という発言によるものだ。なんとも適当な考えだがここにいる人たちはそれに反対することはなかった。
「あ、紙ありましたよ」
周りに紙があるか探しながら歩くこと数分、俺は文字が書かれている紙を見つけた。
「え? ……あ、ホントだ。言われなきゃ見過ごすところだった……」
美佳は紙を見つけられてなかったことに少し落ち込んでいる様子だった。
「これは……闇系の隠蔽魔法が掛かっていますね。しかも注意してても気付かないこともあるくらいの強さで。私も言われてやっと気付きましたし、そう落ち込むこともないと思いますよ」
意外でもないけどしっかり気配りができるようで、夏目さんがそう言って美佳を励ました。
「それにしても楠木君、よくこの紙に気付いたね」
興味深そうに朝瀬川さんが言ってきた。
「なんというか……微量でしたけど魔力を感じたので、そこを視たらありました」
「へぇ~。すごいね」
朝瀬川さんはそう言って面白いものを見るような目線を俺に向けてきた。
「そういう朝瀬川さんも紙にちゃんと気付いてたんじゃないですか?」
「一応ね。まぁここは一年生の顔を立てるのもいいでしょ。それじゃあ楠木君、問題を確認してみて」
特に謙遜することもなく俺の発言に対して朝瀬川さんは頷き、そして俺に紙を確認させるように促した。
「分かりました」
紙には……
問題その21『この学園の生徒(第二部のみ)の数は何人でしょうか?A-623、B-611、C-652』
と書いてあった。
俺は書いてあったことをみんなに伝えると優姉が、
「会長である私にとってこんな問題は答えられて当然! 答えはAよ!」
「さすが会長ですね……」
ノリノリで答える優姉に俺は苦笑しながら言った。
この問題を作った人は会長を対象とすることを考えてはいなかったのだろう。
俺らが見つけた問題は、学園のことに関することばっかで、俺らのグループは優姉が全問すべてを正解していった。
知ったのは後日だが、結果はもちろんというかなんというか……俺らのグループが一位という結果でゲームは終了した。
これはしばらくして分かったことだが、紙を見つけることが出来たのは俺らを含めほんの一部のグループだけだったらしい……