3. Chronicle
岡田ちとせ様
お久しぶりです。もう何年、お会いしていないでしょうか。あなたの声が恋しい限りです。絵梨は今、美幸に育てられ元気に高校生活を送っています。いまだあなたという母親がいることを打ち明けてはいませんが、いずれ教えようと思います。
さて、もう16年も前のことになりますね、私達の関係が在ったのは。今更言い出すなど卑怯かもしれません。しかしどうしても伝えたく、こうして10年ぶりにお手紙を書いた次第です。2年前にお送りした絵梨の入学式の写真は、届いていますでしょうか? このたび、私は美幸との離婚を決意しました。絵梨は私が引き取ろうと思います。ここで今一度お願いさせていただけないでしょうか。私と絵梨と一緒に、家族になる気はございませんでしょうか。私はあなたが恋しくてたまりません。
このような恋文を綴るのはいつ以来でしょうか……。あなたにはずいぶんと情熱を注いだものです。しかし中途半端に家族をとった卑怯な男をお許しください。私はまだあなたのことを美幸以上に愛しているのです。あなたと絵梨は、私の家族なのです。あなたを愛しています。どうか、また私を愛してくださらないでしょうか。
絵梨はとても優しく気立てのよい娘に育ちました。私はもう女として美幸を愛してはいませんが、彼女は絵梨のよい乳母だったと思います。私を酷な男だとお思いでしょうか? 私があなたから絵梨をいただいたときのあなたのお気持を考えると、今でも胸が張り裂けそうになります。あなたを独りにさせてしまったことを、16年間ずっと悔やんでおりました。どれだけお寂しい思いをなさったことでしょう。もう一度、あなたに絵梨の肩を抱いてほしいのです。
30日の午後、あのときの公園でお待ちしています。どうか、どうかいらしていただけますように。私はあなたを愛しているのです。もう一度あなたの愛しい名前を呼びたい。どうか、許してはくれませんか。私の妻として、絵梨の真の母として、私たちの家族となってはいただけないでしょうか。
千葉亮




