マウンテンゴリラか、もしくは
人間と動物の境界線は意外と曖昧なのかもしれない。
私はマウンテンゴリラではない。しかしあまりにもマウンテンゴリラと呼ばれ続けている。
動物園に来場されるお客様も、共に働く同僚も、果ては園長まで、私のことをマウンテンゴリラと呼ぶ。
自分のことを人間だと思っているのは、もう自分だけなのかもしれない。そうなってくると、自認が人間のマウンテンゴリラになるのか。違う違う、自認がマウンテンゴリラ…じゃなくて、人間だ。そうだ、私は人間…で合ってるのか?
正直私はマウンテンゴリラというあだ名を嫌ってるわけではない。マウンテンゴリラと呼んでくる人は全員笑顔で、私に優しく接してくれる。嫌な気はしない。
それに、自分でも鏡を見る度にマウンテンゴリラが映ってるように見える。寝ぼけて1度通報しかけたくらいだ。鏡の中でスマートフォンをもって慌てているマウンテンゴリラを見たら、なんだか落ち着いてきたのを思い出した。いや私は人間だ。
そろそろ本物のマウンテンゴリラの檻に着く。着いたら掃除なのだが、最近のマウンテンゴリラは小綺麗なのか、あまり掃除に手間取らない。ミニマリストの気分なのだろうか、自分のアパートの部屋の方が汚く思える。
しかもこいつ、段々と毛が薄くなったり、服を着たがるようになった。まるで人間みたいだ。
やっぱり汚れていない。大したやつだよお前は。
今日は太陽が出て暖かいな。少しサボって寝てしまうか。
見てみて!マウンテンゴリラが寝てるよ!
起こさないように飼育員さんが掃除をしてるね。
あれ?マウンテンゴリラ…じゃなかった、佐藤くんはどこかね?シフトの件で相談したかったのだが。
あぁいたいた!佐藤くん!
…ウホッ?




