袋の中身 愛
久しぶり。
会ったのは…三年前の同窓会以来かな?
まあ、
あの時みたいにワインでも飲みながら話そうじゃないか。
遠慮せずに、
ね。
美味しいだろ?こだわってるんだ。
え、
僕の隣の席にいたミエコちゃん行方不明なの?
会いたいの?
何でそんなこと聞くかって?
だって君達親友だったろ。
まあ、
そう辛気臭い顔するなって。
またきっと会えるよ。
そうだ、
気分転換に僕の一番大切な物を教えてあげよう。
ちょと待ってて、
今すぐ持って来る。
僕の、
一番大切な物はこの袋だ。
大きなゴミ袋サイズの袋。
シッカリとした生地の、
牛皮でできた袋。
茶色のしっとりとした手触り。
この袋には、
僕の人生の結晶が入る予定なんだ。
まだ入れて無いんだよ。
この袋はいくつかあって。
それぞれに違う結晶が詰まってる。
結晶がどんな物かなんて聞くなよ。
僕の人生の塊だ。
そう易々と見せられる物じゃない。
でも、
一つ教えてあげよう。
それは、
僕の愛してる物だ。
複数ある袋の中身全てを、
ね。
その袋の中身の作り方?
いいよ、
教えてあげる。
まず、
愛する対象を決める。
愛する対象にその事を話す。
愛する対象を壊す。
愛する対象を直す。
愛する対象を袋に詰める。
簡単さ、
とってもね。
他の袋も見てみたい?
いいよ、
ついてきて来て。
どう?いっぱいあるでしょ?
みんな僕の愛してる物が詰まってる。
幾つぐらいあるのかって?
さあ?僕にももう分からなくなっちゃった。
五十個ぐらいあるんじゃないのかな。
どうしたのさ?そんな青ざめた顔して。
えっ、
これ?このペンダント?
これがどうかしたの?
えっ、
君が作ったの?
嬉しいなぁ。
なんで嬉しいかって?
そんなの君の事を愛してるからに決まってるじゃないか。
何見てるの?
袋?袋から何が出てるって?
あ
ちゃんと閉めてなかったんだね。
ごめんごめん。
中身のこの部分は、
よく。
袋からはみ出しちゃうんだ。
そう、
僕の愛する対象の、
髪の毛。
素敵だろう。
僕の好きな栗色のやっと肩につく長さの髪。
髪型はおかっぱ。
そう君の髪みたいな髪。
ちなみにその中身は色白で、
美人で、
中肉中背の、
ニ十代後半の女性。
名前はね、
ミエコっていうんだよ。
そう、
学生時代僕の隣の席に座ってた子。
さっきのペンダントは、
ミエコちゃんを愛していた時に見つけたんだ。
君達お互いの事大切に思ってたんだね。
ペンダントの十字架に、
『愛する友へ』って書いてあったよ。
君達って親友同士、とっても似てて。
よく間違えられたよね。
姉妹か?って聞かれてた事もあった。
僕はね、
学生のころから君達二人が大好きだったんだ。
とっても愛していたよ。
だからさ、
ね。
君も袋の中身になってよ。
安心しなよ。
怖い事は何もない。
痛い事もね。
逆に幸せかもよ?
だって僕がずーと愛してあげるから。
会いたがってた、
ミエコちゃんとも会えて、
これからもずーっと一緒。
痛い事が無いように、
ワインにもこだわっておいたから。
具体的にいうと、
ワインに入っていた薬にね。
心配しないで、
ちょっとお腹を開いたりするけど大丈夫。
僕医大卒業してるから、
ちゃんと綺麗に元に戻るよ。
傷も残らない。
あ、
でも。
ここにいるみんな平等に愛してるから、
それだけは勘弁してほしい。
ここのいる、
君達に似ている子みんな。
みんな
僕が、
ずーっとずーっと
アイシテアゲル 。




