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痴女(ちじょ)

作者: Eisei3
掲載日:2026/01/19

 

 俺は、黒六白の黒豚だ。

 

 黒い体に、手足の先と鼻先、それにくるっと上に丸まった尻尾(しっぽ)の先が、白い毛で覆われている。

 だから、黒六白(くろろっぱく)バークシャー(Berkshire)と呼ばれる、とても美味い豚だ。


 最近、『 THE 黒豚らーめん 』という旨いカップ麺が新発売になったようだ。だが、とも喰いになるから、俺は食わないが。

  

 

 俺の趣味はスロット。自称、スロッター黒豚だ。

 小さな盆地の外れにある、大きな養豚場近くの低貸しパチ屋が、いつもの俺のネグラだったのだが。

 

 地方の単線ローカル鉄道の、茶色い色をした鈍行列車の電車内。

 早朝の車内は、とりどりの制服を着た通学の学生たちで混み合っていた。


 ( ()タン、()トン ゴトン … ()タン、()トン … )

 俺は列車の窓際にある緑色のシートに座り、がたごとと揺られていた。

 

 その日俺は、この小さな盆地の真中の県庁所在地に新しくできた、大きなパチンコチェーン店の新装開店にスロを打ちに行くところだった。開店時間は、午後一時。

 パチ屋までは、盆地の外れにある俺の住む養豚場から、この単線の田舎の鉄道で約一時間。まだ、十分に早い時間だった。向こうに着いたら、美味いコーヒーチェーンで一服付けて、ブラックコーヒーでも楽しむとするか。

  


 公立や私立の高校、そして中・小学校が集中するエリアを過ぎ、車内にわさわさとたむろしていた、電車通学の学生たちもみな降りて、急に車内はがらんとする。


 電車は、住宅地沿線を走る。様々な色合いの家々の屋根が、車窓を流れ通り過ぎていく。

 やがて、電車を待つ人もまばらな無人駅に、電車は止まる。


 ( プシューッ、ツ ) 扉が開く。

 車掌がホームに出て、車両の前後を指さし確認している。



 むちっとした体形の、渋めのピッチりとした服に身を包んだ、普通のどこかの奥さん風の女性が乗り込んでくる。

 その女性は車内をぐるっと見回すと、わざわざ、長いシートの真中に座る、俺のすぐ右横に腰かけてきた。

 周りの座席は随分と、まだ空いているというのに。俺の横に、ぴたりと。


 「うんっ? … 」


 年の頃妙齢な、むちむちとした身体の、浅黒い|デュロック《  Duroc pig  》の熟女は、そのでかいケツを、ぐいぐいと横に座る俺に押し付けてくる。はち切れそうなその(からだ)をも、俺の脇腹に向けてぐいぐいと。

 ( ぐいぐい、ぐいぐいぐい、ぐいぐい ぐい … )


 (ぐいぐいぐい、ぐいぐい ぐい… )

 俺は無意識に、シートの上の腰を反対の方へとずらす。


 ( ぐいぐいぐい、ぐい… ) 

 俺はまた、腰を横へとずらす。



 「ん。… ⁉」

 ( ぐい … )




 「()()⁉ これか! …」

 

 「()()か⁈、この〇〇線に出るという 、噂の()()というのは?」俺は、心の中で、そう呟いた。

 そして、その ” 怪異 ” に遭遇してしまった恐怖に、少し顔を引きつらせる。

 

 ( ぐいぐい、ぐいぐいぐい、ぐいぐい ぐい )

 なおも女は、俺の腰に、横からでかいケツを押し付け続ける。


 ( ぐい ぐい、ぐい … )


 俺は、座るシートの左側へと、尻をカニ歩きにずらしながら逃げる。

 だが、隣に座る女のむちむちしたケツは、俺を追いかけてくる。

 ( ぐい … )


 俺は顔を上げ、横に座る、ケツを俺に押し付け続けている女の顔を見やる。

 女はうつむきながらも、恍惚とした表情を見せている。どこかほんのりと赤く、そして上気した顔色を、横顔のその浅黒い肌ににじませ恥ずかしそうに体を丸めながらも、まだ自分のむちっとした体を俺に押し付ける。( くいっ … )


 まばらに座るほかの乗客たちは、俺とその女の間での静かな無言の攻防に、誰も気が付いてはいないようだったが。


 「やはり、できる豚はもてるぜ!」(違うか …)

 

 

 「… … …」

 だが、俺は妙に冷静な頭の片隅で、どこか少し感動してもいた。

 「熟女の痴女かぁ … しかも、見事なでかい(ケツ)だゎ … 」


 心が汚れきっている()ならば、でかいケツフェチの俺としては、その時、その女に声を掛けていたかもしれない。

 「お嬢(デュロック)さん。これからパチ屋に、一緒にスロ打ちに行きませんか? …」 … と。



 だが、まだ今よりか少し心が澄んでいたその頃の俺は、その色黒の痴女の纏う ” オーラ ” に圧倒され、『やめてください!』の一言も、発せられないままでいたのだが。正直、迫りくる女のでかいケツから、自分の尻を逃がすのに精一杯で … 。



 そして、やがてその女は満足したと見え、俺に見切りを付けたのだろうか、電車が駅に停まると、俺の顔に冷たい一瞥を投げつけただけで無言で立ち上がり、開いたドアを出ていった。そのでかいケツを、ぶいぶいと左右に振りながら。


 俺は黙って、去っていく女の尻を無言で見つめ、ただ見送っていた。





 (おわり …)

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