青春群像劇 #2
転校生の橘悠人がクラスにやってきて、三日が過ぎた。
……が。
「おーい橘! 今日一緒に飯行かね?」
「……いや、いい」
昼休み、誘いを受けても一言で断る。
「橘くん、このプリント分かる?」
「……自分でやれば」
質問されても、淡々と突っぱねる。
その結果――
「なんか……近寄りづらいよな」
「イケメンなのに性格がアレじゃ、もったいない」
クラスの空気は、少しずつ悠人を避ける方向に傾いていた。
「なあ陽向」
隣の席の蒼が、パンをかじりながら小声で言う。
「悠人、完全に“ぼっち”コース突っ走ってるぞ」
「そうだな」
俺も視線を向ける。悠人は一人、窓際で静かに本を開いていた。
……いや、正確には本じゃない。
ページの隙間から、またしても楽譜がちらりと覗いている。
「なーんか気になるんだよなぁ」
蒼がニヤニヤと俺の腕を小突いてくる。
「お前、仲良くしてこいよ」
「は? なんで俺が」
「だってお前、クラスで一番“話しかけやすそうな顔”してるからな」
「なんだよその理由……」
呆れつつも、気づけば足は悠人の机へと向かっていた。
「なあ、橘」
声をかけると、悠人はわずかに顔を上げた。
冷たいようで、でもどこか影のある目だ。
「……何か用?」
「いや、別に。昼飯一緒にどうかと思っただけ」
「いらない」
即答。
普通ならここで引くところだが、蒼が後ろからグイグイと俺を押す。
「こいつ、見た目より悪いやつじゃないぞー!」
「そうそう、ちょっと暗いだけでな!」
「おい蒼、それフォローになってないから!」
教室の笑い声に、悠人はほんの一瞬だけ眉を動かした。
笑ったのか、呆れたのか、それは分からなかった。
だがその時、俺は確かに見た。
彼の指先が、机の下でリズムを刻むように小さく動いていたのを。




