18話 説得
タルク「…(サラーを見つけたといえ…利用するだけなのは悪すぎる気がする)」
タルクは過去の自身の経験から薬物中毒者はそれ
以外に頼るものがなかったり、酷いストレスから
来てる時もある…。
タルク「…(どうにかしてやらないとな…)クロエ…」
タルクはクロエに声をかける。
クロエ「んぅ?♡」
クロエは相変わらずキマッた返事をする。
タルク「あー…姉について思うところはあるか?」
クロエ「……別にぃ?♡」
タルク「…(少し考えたな…何かしらはあるみたいだな…)」
タルクはバイソンの手入れをしながらクロエの様子を"念のため"見続けていた。
タルク「…(しかし…サラーはクロエをどう思ってるかだな…母の勝手な判断の可能性もある…)」
タルク「クロエ…そろそろ行くぞ…」
クロエ「はぁーい♡!」
タルクはクロエを連れ車に乗る…。
クロエ「タルクぅ~♡」
クロエはリクライニングを倒し脚を見せてくる。
タルク「どうした?」
タルクは水のペットボトルを傾けながら聞く
クロエ「…クロエって色気あるぅ♡?」
タルク「ぶっ…」
タルクは水を吹きそうになるが堪えた…。
タルク「吸いすぎだ…ヤクを少し抑えろ…ってか…
取り上げた方がいいか?」
クロエ「えぇ~!だめぇ~!クロエこれないと
死んじゃうのぉ!」
タルク「…車では吸うなよ…?」
タルクはエンジンをかけ車を運転させていく。
クロエ「ねぇねぇ~…♡」
タルク「…ん?」
クロエ「クロエ達ってどんな関係♡?」
タルク「…俺とクロエ?」
クロエ「うんっ!」
タルク「…」
クロエ「クロエねぇー…タルクが好きだよ…」
クロエは少し落ち着きを払って言う…。
タルク「好きってお前…それどんな好きなんだよ…」
タルクは横目でクロエを見る。
タルク「寝てる…」
クロエ「…くぅー…」
静かに寝息をたてて眠っている。
タルク「…」
信号待ち中にゆっくりリクライニングを直して
髪を耳にかけてあげる。
タルク「…(可愛い奴…)」
…。
クロエ「…ん…?」
クロエはなんだか車内のような変な空間で目を覚ます…。
クロエ「…ここどこぉ?」
しかし…横にはタルクがいる…。
タルクの隣で心地良い夢の中を漂っている感覚に浸り ながら少し微笑む
クロエ「タルクといると夢みたいだなぁ... もっとこのままいたい...」
クロエは目を半開きにしながらタルクを見つめ、嬉しそうに小さく手を伸ばす。
しかし…手は透けてしまう…。
タルク「えぇ... ? これ…どういうことかなぁ…♡
クロエ、夢の中にいるのかなぁ…?」
クロエはタルクの顔を見つめながら微笑んで言う
クロエ「でもタルクがいるから夢でもいいや~♡」
そう思うと…タルクは消える…。
クロエ「えっ...どこに行っちゃったの...?」
クロエは周りを見回してもタルクの姿は見えず、
不安な気持ちが胸に広がる…。
クロエ「…お願い、返事して... 」
夢の場所が変わり...何か優等生な自分が見える...
タ ルクと会ってなかった世界線の自分だろうか…。
クロエ「え...?これがクロエの別の姿...?」
優等生の自分は、真面目な表情を浮かべ、本を読んでいる。
その姿を見て、何か淋しい気持ちが芽生える
クロエ「んぅ…でも...タルクと一緒にいない
この世界は、ちょっと寂しいなぁ...」
囁き声が聞こえる...
タルクはお前にとって…
邪魔でしかない存在だと...
耳を澄ませて囁き声を聞くと…
心がざわざわしてくる…
何か不安な気持ちが湧き上がり…
優等生の自分を見つめながら手が震える…
クロエ「いやだ...タルクはそんな存在じゃないよ…」
クロエ「クロエにとって大切な人だもん...」
徐々に声が大きくなる囁きに反発し…
涙が溢れそうになる…
クロエ「そんなの、認めたくないよ!」
夢はさらに場面が変わり... タルクが運転してる車…
いや...あの母を人を轢いている場面が...
やめて...! それは絶対に嫌だよ...!
手が震え、足元がふらつく……
あの母が…あの母でさえが地面に倒れているのを
見て、心が締め付けられるような痛みを感じる…
クロエ「こんなの、望んでない...」
…
クロエは少し揺れるような車内で目を覚ます…。
クロエ「…(タルク…消えてない…?)」
うっすら目を開けて横を見る…。
タルクはいつも通り真剣に運転をしていた。
クロエ「タルク…」
タルク「ん…?」
クロエ「クロエ…タルクが大好き…クロエの好きは
好きの方の好き…。」
タルク「…」
タルクはハンドルを握る力が少し緩まった気がした…
勝手に緩まった気がした…。
続