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お出かけ


数学のテストはそこまで難しくはなかった。まあまだ高校生活が始まって間もないからだろう。基礎的な問題以外に捻った問題などはなかった。


そんな数学のテストより、沙紀に会う日付が狭まってきている事の方が問題だった。だからといって何かオシャレをしようとか、会ったら何を話そうとか考えている訳ではない。ただ少し実感が湧かないのだ。

まだ中学校を離れて1ヶ月くらいしか経ってないとはいえど、久しぶりに会う人、ましてや異性と2人きりだなんて不安しかなかった。


「おーい!!!テストどーだったよー!」


今はもう昼食の時間だった。廊下にでて沙紀と会う日の考え事をしていると、遠くから和也がやってきた。なぜこいつはいつも自分が考え事をしている時に突然現れてくるのだろうか。


「まあまあだったよ。簡単ではあったな。」

「俺も思ったわそれ!おかげで100点だったんだよ!」

「もう返ってきてたのか。和也は相変わらずだな」


和也は普段はおちゃらけで明るく、犬のような性格だが、それに反して頭の良さはとても上な方だった。なぜこの高校を選んだのかはわからない。和也ほどの頭の良さなら他にも候補はあっただろう。


「でさー!国語の先生がよ!」

「すごいユーモアな人だな...」

「だろー?面白いんだよ。それがとても」


何気ない会話で和也と昼食の時間を過ごす。変な不安は捨てて今はご飯を食べる事に集中する事にした。


あれから2日が経ち、今日は日曜日。休日なんてあっという間に過ぎて沙紀との約束の日になっていた。やはり実感なんて湧かなかったが、当日になってしまった物は仕方ない。中学校の時のように普段通りでいけばいいのだ。


身支度を終えてから時計を確認するともう13時30分になっていた。急いで玄関に向かい外へ向かう。お母さんに「いってきまーす」と告げてから駅前の広場へ向かう事にした。一応お母さんには今日は、友達と出かけるという事にしていた。女の子と2人でなんて言ったら後々めんどくさくなりそうだし。あながち間違いではないだろう。


駅前の広場に着いたのはいいものの、少し待ち合わせ時間より早めに着いてしまった。と言っても10分前くらいなので大丈夫だろう。携帯を開いてのんびりとテトリスをやりながら待つことにした。


「遥斗くん?」


急に名前を呼ばれたことに少し驚き、前を見るとそこには沙紀がいた。1ヶ月ぶりではあるが、面影はそこまで変わっていなかった。


「久しぶり。」

「久しぶり!元気だった?」

「元気だよ、沙紀も元気そうで安心した。」


久しぶりに会うので軽く挨拶を交わし、本題に入る事にした。


「そういえば今日はどこに行くの?」

「本屋に行きたいんだけど、大丈夫かな?」

「全然大丈夫だよ。本屋に行こうか」


本屋?と少し疑問には思ったがそのまま沙紀に着いていく事にした。本屋なんて1人でも行ける場所ではあるが、気にしないでおこう。

2人で本屋まで歩き進めるがお互い何も話そうとはしない。沈黙に耐えれない訳ではないが、和也の時とは違って少しだけムズムズしていた。


「あ、そういえばさ。さっき携帯で何してたの?」


沈黙を先に破ったのは沙紀だった。


「ああ、テトリスだよ。最近ハマっててさ。」

「そうなんだ!私テトリス難しくて上手くできた事ないんだよね...」

「まあ、意外にテトリスって頭使うから」

「やっぱそうだよねー、あ、本屋着いた!」


そう言われて前を向くと目の前には大きな本屋さんがあった。中に入っていくと沢山の本達が目に入る。


「私がみたいのは...ここだ!」


沙紀はここの本屋によく足を運んでいるのか、慣れているように自分の目的地へと向かっていく。そんな彼女に置いていかれないように早歩きで自分も後を着いていく。

そこにあったのはイラストの画集や、写真集だった。


「写真集?」

「そう!私、画集とか写真集みるのが好きなの!」

「へえ。確かに綺麗だね」


沙紀は様々な画集を手に取って自分のお気に入りを探しているようだった。興味本位で自分も目の前にあった写真集を手に取り、パラパラとページをめくってみる。写真集には満天の星空が映し出されていた。その美しさに魅了される程だった。


「星空、好きなの?」


いつの間にか隣でみていた沙紀に声を掛けられる。


「うん、どこかに吸い込まれていきそうで儚くて好きなんだ。」

「いいね。私はやっぱり青空が好きかなー。」


そう隣で沙紀は笑っていた。少しだけ彼女の笑顔が可愛らしくみえた。


「よし、決めた!これにする!」


1つの画集を手に取りレジへと沙紀は持っていった。自分も先程持っていた写真集に心が惹かれ、気づいたら一緒にレジ前で待っていた。


「いいお買い物できた〜!」

「それは良かった。」

「うん!ありがとう着いてきてくれて!」

「全然。自分も好きなの買えたし」


彼女はニコニコしていた。


「あ、そうだちょっとカフェ行かない?」

「いいよ」


本屋からでたとき、空はまだ青く、雲ひとつもない綺麗な快晴だった。カフェなんてしばらく行ってなかったが、小腹も空いていたのでちょうど良かった。


「私パンケーキにしようかな〜。」

「じゃあ自分はガトーショコラで。」


それぞれ食べる物を決め、注文を済ませる。待ってる間、お互いの学校での授業内容とか難しい科目について話し合っていたらすぐに料理が届いた。お互い食べるのに夢中だった。


カフェで過ごしていると時間もいい具合になり、そろそろ帰ることにした。


「遥斗くん、今日はありがとう!」

「こちらこそありがとう。」

「また誘ってもいいかな?」

「もちろん。」


今日は割と楽しい方だったので、誘われる事は苦ではなかった。それに断る理由もないし。ただそれだけだ。


「じゃあ私ここだから、またね!」

「またね。明日からまた学校頑張ろう」


お互い手を振ってお別れをする。


「あ、今日の遥斗くん、かっこよかったよ。じゃあね!」


小さく微笑みながら後ろも振り返らずに沙紀は走っていった。自分はというと、いきなりの言葉に思考が停止してしまっていた。真っ赤に染まる空が自分の今の表情を隠してくれているようだった。


明日からまた変わりない日常がやってくる。

3話目更新!

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