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平和

「俺は結局、何者にもなれなかったな」


 Aが魔族の王、魔王を討伐し、パレードが開かれている中、俺はそうつぶやいた。Aと俺は同じ道場で修行した仲だ。Aと俺はライバル同士になりたかったから、同じパーティには所属せず、別々の道を進んだ。


 ただ、決定的に違ったものが一つある。それは、仲間がいるかどうかだ。Aの周りにはBやC、Dといったパーティメンバーがいるが、俺はソロだった。コミュニケーションスキルやルックスに問題があったわけではない、と思っている。ただただ、人を信じることができなかっただけだ。


 あいつは自分より弱い人がいつか自分を助けてくれると本気で信じて、一緒に行動した。その結果、あいつは様々な人の力を借りて、これまで成し遂げたことのないような偉業を成し遂げた。一方俺は、こう

やってパレードを傍から見ているだけなのだ。


 悔しい。悔しい。悔しい。俺とAにそこまで大きな能力の差があったわけではないはずだ。今も差はそこまでないと思える。ただ、人と人の力でここまでのことができるのだろうか。


 いや、この発想がダメなのだろう。結果を重視すべきだ。やはり、人の力を信じてこれからは生きていこう。


 魔王が討伐されたとしても、その配下たちが暴れて行動を起こし、それに報奨金が出るだろうが、これも長くは続かないだろう。俺の仕事もそろそろ廃業かな。いや、これからは人と人が争うことになるのだろうか。まだわからないけど、その時はその時だ。


 そう考えながらパレードを抜けてこの町から去ろうとしたら、女性が一人、町の外にいた。まだ安全が確定した場所ではないから心配だ。これまでは無視していたけど、変わるチャンスだ。声をかけてみよう。


「すみません。こんなところで何をやっているんですか?」


「私は魔法使いのGで、依頼された書類を隣町に届けるところです」


「なるほど。なら一緒に行動しませんか?」


「本当ですか?心強いです!!」


 こうして、初めて一緒にパーティを組んでみることにした。


 そうしてしばらく進んでみると、なかなか楽しいものだ。こうして生きていれば、俺が魔王を討伐できたのではないか。


 こんな考えをしていたら、女性と思われる魔族が現れた。見た目は人間に近いが、話している言葉や肌の色などが異形そのものだ。


 しかし、俺たちは難なく一瞬で倒した。ただ、あの敵は攻撃する様子が全くなかった。


 この辺りは、なぜかそういうやつが多い。理由はわからないけど、魔王城に近づくにつれて狂暴になってくる。


 隣町に着く直前、子供を見かけた。こんなところにいるのが不思議に思って声をかけようとしたら、逆にむこうから話しかけてきた。


「僕のお母さん見てない?」


「いや、見てないな」


「そっか。こっちに行ったはずなんだけどなぁ」


「俺たちが来た道を戻って一緒に探さないか?Gは先に入っていてもいいよ」


「いいえ。一緒に探すわ」とGが答えると、少年が満面の笑みで感謝を伝えながら、一緒に来た道を戻った。


 道を戻り、Gと一緒に魔王の配下を殺した場所に来た瞬間、少年がいきなり聞いたことのない言葉—正確には、魔王たちが使う言葉—を叫んで、例の魔族に駆け寄る。


「ねぇ、もしかして、この子も魔族なんじゃない?」


「そ、そんなはずはない。肌の色だって俺たちと同じだし、俺たちの言葉を使ってたじゃないか」


「でも、この子は今、魔族の言葉を使っているわ」


「何かの間違いだろ」


 俺はもうこの時にはわかっていた。俺たちが殺した魔族はこの子の母親で、俺たちは魔族だと教えられて、ただの人間を殺していたということに。


 現実が一気に押し寄せてきて、吐き気が耐えられない。何度かえずいてしまう

 でも俺は、人を信じると決めたのだ。この子に正直に話して、許しを乞おう。


 しかし、発声することができない。言葉がまるで見つからない。それでも、俺はこの子に対して責任がある。それに、人を信じてみるって決めたんだ。俺はこの子を信じてちゃんと話してみよう。でも、そんなことは初めての俺には荷が重すぎた。


「残念だったな、小僧。この女は俺たち魔族が殺した」


 俺はいかにも悪役のような顔をして、高らかに声を出した。さらにGに目配せをして意図を伝えた。


 するとGが少年を連れて魔法で逃げた。これでよかったんだ。これで。





 俺はこのことをAに、いや、魔王に相談しようと思う。




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