第6話「偽魔女の希望【偽魔女視点】」
「リリアンカさんがいてくれたら、アステントで1番のお店になれちゃうかもしれませんね」
彼女は、笑った。
可愛らしい笑みを浮かべて、彼女はいつだって私のことを励ましてくれる。
(あなたは、いつだって1番の味方でいてくれる……)
私が、魔女ではないと知ったとき。
あなたは、私のことをどう思うのか。
考えたくもないけど、あなたはもう私に優しさを向けてくれなくなるのかしら。
(嫌……そんなの嫌……)
私は、私を褒め称えてくれるエミリを手放すことができない。
私は、私を認めてくれるエミリから離れることができない。
(嘘を吐き続けないと……私は、魔女だって嘘を吐き続けないと……)
心が痛い。
生まれてからずっと、心が痛い。
「リリアンカさん?」
「ん、ごめんなさい。大丈夫」
「体調が悪かったら、ちゃんと言ってくださいね?」
エミリと一緒にいたら、いつかこの心の痛みが治まるのか。
分からない。
分からないけど……。
(あなたの前だと、自然と笑うことができるの……)
溢れ出しそうな涙を堪えながら、私はエミリを喜ばせる魔法の力を開花させた。
「もっともっとエミリに、認めてもらいたい……」
エミリを騙すことに必死だった。
エミリを偽って、偽って、嘘で固めた毎日。
でも、そんなエミリに褒めてもらいたい。
店の売り上げを伸ばすために、何か策を練らなければいけない。
そんな私の純粋な願いは、料理を美味しいと錯覚させる魔法を開花させた。
(エミリは美味しいって言ってくれたけど……)
客に、魔法が通じなければ意味がない。
(私は、魔女になれなかった人間……)
美味しいと錯覚させる魔法をかけた料理を客のところに持っていく際に、手が震えそうになった。
魔法を開花させることができても、その魔法は本当に有効的に働くのか。
怖かった。
魔法学園で何もできなかった私が、ここで何をできるのかって不安になった。
「ん、エミリちゃん! 今日の料理は絶品ね」
「え……」
「本当! こんなに短期間で腕を上げるなんて、さすがね」
「あ……ありがとうございます!」
エミリが、笑っている。
エミリが、客に向けて笑みを向けている。
(成功した……私の魔法が成功した……!)
強張っていた心臓が動き出して、魔法が成功したことへの高揚感に私は浸った。
落ちこぼれのリリアンカは、過去へと追いやろう。
私はもう、落ちこぼれのリリアンカじゃない。
私を見下してきた人たちは、この街にはいない。
やっと私は、魔法使いとして生きることを許してもらえた。
「リリアンカさん、ありがとうございます」
店の売り上げを伸びることで、エミリから私に手渡してくれるお金の量も増えた。
「今日のお客さん、凄く褒めてくれたんですよ」
魔女になれなかった私でも、魔法を使ってお金を稼ぐことができると知った。
「リリアンカさんが来てくれたおかげでしょうか」
もっと、もっと、私を褒めて?
もっと、もっと、私を認めて?
もっと、もっと、私を必要として?
「リリアンカさんは、本当に素晴らしい魔女様ですね」
魔女になれなかった私でも、承認欲求を満たすことができると知った。
「私に手を差し伸べてくれて、本当にありがとうございます」
私にも、できることがあると知った。
「私は……エミリが喜んでくれたら、それで……」
魔女になれなかった自分でも大金を稼ぐことができると、金に目がくらんだ。
魔女になれなかった自分でも認めてもらえるんだって、希望が生まれた。
エミリの料理に魔法を施すことで、私はエミリと2人きりの時間を守った。
守っていく予定、だった。




