第4話「偽魔女の始まり【偽魔女視点】」
魔法の力で、水を提供することができる。
魔法の力で、火を提供することができる。
魔法の力で、光を提供することができる。
ただ、それだけ。
ただ、それだけの才能を両親は褒め称えてくれた。
「リリアンカなら、絶対に優秀な魔女になれるわ」
「さすがは私たちの子だ」
私が生まれ育った村には魔女がいなかった。
だから、魔法の力で火・水・光を提供することができる私は貴重な存在だった。
両親だけでなく、村中の人たちが私を褒め称えてくれた。
幼い頃に開花させた魔法の才能は私に華やかな人生を与えてくれて、私は人よりも恵まれた人生を手にしたいと思うようになった。
「早めに魔法学園に通わせた方がいいわね」
魔法の力は、親から子へと継承されるものではない。
両親が魔法を使えなくても、子どもが魔法を使えることもある。
子どもが魔法を使えずに、両親だけが魔法を使えることもある。
「この子のために学費を!」
私の家系は、私だけが魔法を使うことができた。
誰も魔法を使うことができないのに、私だけが魔法を使うことができた。
世間の常識では、何も不思議なことではない。
でも、家族の中で私だけという歪さは、幼き私の自己肯定感を高めるには十分だった。
「わたし、まじょになる!」
村から初めて魔女が誕生すると喜んだ両親は、必死にお金を貯めて私を魔法学園に通わせてくれた。
でも、幼い頃から抱き続けた自信なんてものは、入学早々に打ち砕かれた。
「なんでできないの! あなたと組むと、いつも魔法が失敗するの!」
私は、魔法使いの中では劣等生だという現実を初めて知った。
「模擬戦、リリアンカと当たっちゃった」
「えー、初戦、免除かー。羨ましい」
自分は魔女になるために生まれてきたと信じて疑わなかったけれど、魔法学園では才能溢れる人たちを前に屈した。
得意だと思っていた魔法は、みんなが使える。
魔法学園の中では、自分はたいしたことのない人間だと気づかされる。
「退いて! あなた、人を殺すつもりなの!?」
「そんなつもりは……」
魔法の力で、水を提供することができる。
魔法の力で、火を提供することができる。
魔法の力で、光を提供することができる。
ただ、それだけ。
ただ、それだけの才能では魔女になることはできない。
(世の中には、優秀な人たちが大勢いる……)
魔法学園での躓きを未練がましく引きずってしまい、その立ち直り方を知らず負け続ける人生を送ってきた。
「私は……魔女に……」
退学届を書く。
でも、提出できない。
私は、自分の心の平穏を取り戻したい。
でも、心の平穏の取り戻そうとすると、故郷の両親の顔が思い浮かぶ。
「これから、どうしたら……」
私は常に最下位に位置づけられて、魔女試験は当たり前のように不合格。
村で唯一の魔女になって、みんなに褒めてもらうことしか考えていなかった。
(帰れない、帰れない、帰れない、帰れない……!)
帰りたいのに、故郷に帰ることは許されない。
あれだけ期待を込めて魔法学園に送り出してくれたのに、娘が魔女になれなかったと知ったら両親は絶望に陥ってしまう。
(どうしたらいいの……?)
これからの自分が、どういう生き方をしたいのか答えを出せないまま魔法学園を卒業してしまった。
魔女になることもできなければ、魔女になること以外の夢を見つけることもできなかった。
あんなに苦労して魔法学園に入学させてくれた両親に、胸を張ることができない私は故郷に帰ることもできず路頭に迷うことになった。
(食べたい物を食べるお金もない……)
その日の食べ物を確保するだけでも大変な日々が続いていた。
食事業が盛んなアステントの街では、漂う美味しそうな料理の香りに心が打ち砕かれそうになる。
街を漂う香りの誘惑に勝てなかった私は、アステント付近の森へと逃げ込む。
やっとの想いで見つけた独りになれる場所に、私を助けるヒントが潜んでいた。
(水汲み?)
魔法が存在する世界で、わざわざ自分たちの手で水を汲む必要なんてない。
それなのに、アステントの街の人たちは生活用水を組むために森の中の泉へと足を運んでいた。
(この街、ライフラインが確保できていない……)
魔女不足とはいっても、私のようにライフラインを確保する程度の魔法を使うことのできる人間なんて山のようにいるのが現実。
それなのに、自分たちの手で水を汲むなんて魔法使いそのものが珍しい以外の何物でもない。
(あの子……)
魔法を使うことができれば、容易に火・水・光を確保することができる。
けれど、アステントの街には魔法を使うことのできる人材がいないらしい。




