人面獣 Ⅰ
巨獣の咆哮が構造材を揺るがした。
体高4m級。小山のような巨躯。
はち切れんばかりの筋肉と蜥蜴じみた鱗に覆われた四脚。
脂ぎった頭髪から覗く爛々たる邪眼。
――人面獣!!
警告を発する暇も無く湧いて出た敵性勢力へと、一切の躊躇無しに《前衛》の二人が割って入る。
”糞ッ、逃げ場ナシかよ?!”
レキシントン大迷宮 第九階層ともなれば、地上の常識は一切通用しない。
袋小路を塞ぐように出現したのが《魔獣》に分類される厄介な存在だとしても、泣き言を口にしながら殲滅されるか? 逆に俺達のチームが倒し切るか? 取れる選択肢は実質二択だった。
《人面獣》から10mと距離を置かず、前衛が並んで片膝をついて汎用機関銃による盛大な掃射を開始する。
BRA! RA! RA! RA! RA! RA! RA! RA! RA! RA! RA! RA! RA! RA! RA!
不協和音としか言いようのない轟音が反響。石畳へとバラまかれるのは、二丁合わせて発射レート1600発/分もの空薬莢と接続金具。
航空機用フレキシブルフィードシューターを経て背部の弾薬パックから機関銃へと供給される7.62mmNATO弾が《人面獣》を次々と穿つ。
漠然とした不安を胸に振り返れば、《後衛》の二名は無反動砲を肩に担いで、最小交戦距離を確保するための後退を開始していた。
”流石に中堅チームともなれば、誰も状況を楽観視しちゃいないか……”
名ばかり《指揮者》としての満足感から鼻を鳴らした俺は、グレネードポーチに手を差し入れたまま投擲体勢に入る。
「伏せろ!」
映像資料
汎用機関銃《M240G》
https://www.youtube.com/watch?v=xa8z839ncJE