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守るために戦い、少々の後悔を抱いた者

彼は満足して散ったとは思うのですが、でもどの戦いも心から望んだものではなかったと思うのです。

(こんなこたァ望んじゃいなかったんだがなァ。)

「ここが俺の死に場所か…。悪かねェが、倒れて死ぬのはゴメンだね!」

 そう言うと男はおもむろに動き出し、あたりに散らばっている己の臓物を

 洗い清め腹に収めると、石の柱に自らの体を縛り付けその短い生涯の最期を迎えようとしていた。

 今にも彼の命が尽きようとしているその時、ソレは現れた。


「やぁ、君はアイルランドの英雄、光の御子と呼ばれしクー・フーリンだね。

 君はもし人生をやり直すことができるとしたらどうする?

 そのまま死を待つ?それともやり直す?」


 彼はコノートの女王メイヴとの戦いでその短い生涯を終えたクー・フーリンその人である。

 石柱にその身を縛り付けその生涯に幕を閉じようとしていたその時にソレは現れた。


「やり直したいことねェ…。あるにはある。俺は俺の人生の中で自ら望んで戦ったことがねェ。

 やり直せるなら戦うことのねぇような人生を送ってみてェな。」


「君は僕がだれかとか聞かないんだね。」


「まぁ今にも死にそうだってのに聞いても仕方がないからな。」


「それじゃあ説明をさせてもらうよ。

 やり直しをするにはとある戦いに勝ち抜いて最後の一人にならなきゃいけないんだ。

 やり直したいほどだから皆必死に戦うよねってこと。

 最後の一人になることができれば願いを叶えてあげるってこと。」


「いいねェ。俺が自ら望んで戦える日がこんなすぐにも来るとは。

 やり直しにも興味があるがその戦いにも興味がある。

 話に乗るぜ。」


「ようし。君をその場所へと飛ばすよ。」


 クー・フーリンはその生涯の短さは覚悟していたつもりであったが、その生涯のほとんどを望まぬ戦いで過ごした。

 それでもクー・フーリンは戦った。人々を窮地から救うため、あるいは友や自分たちの名誉を守るために

 戦いに挑んだのだ。戦いが嫌いなわけではない。あまりにも手を出してくる者が多すぎたのだ。それらから守るために

 戦いをしていたら予言されていた通り英雄にはなったが長く生きることができなかった。そんな人生をやり直すこと

 のできるチャンスがやってきたのだ。乗らない手はない。そう想いながらクー・フーリンは光に包まれていく。


「今回はあっさりと話がすんじゃったなぁ。」

 こうしてその短い生涯を終えようとしていたクー・フーリンは第2の人生を得るため、

 人生で初めて己の望む戦いに挑もうとしている。

 果たしてその選択は幸か不幸、どちらへつながるのだろうか。

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