聖剣を握りし者の後悔
皆さんはやり直したいことってありますか?私は学生時代を一からやり直してみたいです。
「覚悟しろ。」
彼に向って剣が突き出される。回避できない。
「私が王になって数十年。この国は良いとも悪いとも言えないものになってしまった。
私が迎える最後もこのような醜い争いの中だとはな。」
彼はとある小国の王だった。だが望んで王に就いたのではない。
彼は資格を手にしてしまっただけなのだ。故に常にその胸の中では後悔を抱いていた。
そんなある日、彼は今まさに刺し貫かれようとしていた。反逆の徒として。
今にも命尽きるその時にソレは現れた。
「やぁ。君はかの有名なアーサー王だね。さて、アーサー。
君はもし人生をやり直すことができるとしたらどうしたい?
やり直したいかい?それともこのまま死を待つかい?」
そう、彼こそは伝説によればこの戦いの最後に死亡したとも、傷を癒すためにアヴァロンへ向かったとも言われる人物である。アーサー王最後の戦い、カムランの戦いのさなかにソレは現れたのである。
「その前に貴様は誰だ。」
アーサーは問うた。
「僕はグリム。死ぬ直前になっても後悔を抱えているような人間にやり直しの権利をあげている親切な
死神さ。」
「やり直し…か。何をやり直したいかと言われればこの人生そのものであるな。聖剣を
引きぬかず、私が王にならないようにやり直したい。」
「いいねぇ。アーサー、君はその気のようだから説明をしよう。
やり直しができるといってもすぐにやり直しができるわけではないんだ。
願いをかなえてくれるのは僕みたいな死神ではなくちゃんとした神様なんだけどね。
彼らも人一人の人生をやり直しさせるわけだからそう簡単にはできないわけ。
そこで考えた選出方法が戦いだ。トーナメント形式の。
神様的には、戦いに勝ち残るということはそれだけやり直したい後悔が強いということなんだろう
っていうことでね。その戦いで生き残り最後の一人になることができればその生き残ったヒトの
願いを叶えてあげようっていうことなんだ。」
「やり直しをするためにも戦いか…。まぁいいだろう。私も参加する。」
「ようし。君を会場のある異世界に飛ばすからね。詳しい説明はそこで聞くといい。」
(まぁ、参加しそうなニンゲンをえらんで声をかけているんだけどね。)
アーサーは願ってもない機会だと思っていた。ずっと後悔していた。自分は良い王であれたのか?
そうでないから反逆など起こされたのだと。この人生、やり直すことができるなら自分は聖剣を
抜かない。そう考えていた。都合のいいことにそのチャンスが目の前にやってきた。
掴まずにいられるものか。そう想いながらアーサーは光に包まれていく。
「さーて。次のニンゲンに声をかけるか。」
こうしてカムランの戦いでのアーサーの生死は不明になったのである。
真実はアーサーのみ知るところだ。