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カミュ、目をさます。

逃げに逃げ、ようやく目を覚ましました。

 カミュが宿泊した宿は、アイナ村唯一の宿である「羊の休息」亭であった。


 宿の主人カシアス、女将サマーン、受付兼看板娘のアンナの3人で運営している宿屋で、このアイナの村はイナバーン国最北の村で竜の領域との境目であり、夏は涼しく観光客が多い。また、国境であったので、村最北地に軍の砦があり、砦に勤務している兵が何部屋かを借りて宿泊することが多かった。竜は基本的には領域外とは不可侵であったので、アイナ村には兵は必要とは思えなかったが、領土の境目にあるという事で兵を配置し、あまり必要な兵ではないという事で、村民か隣の村民が兵として配備されることが多かった。


 カミュは目を覚ました後、受付に行きアンナに、

「おはよう。おなか減ったから何か食べれないかな。」

「お客さんようやく目を覚ましましたか。お父さ~ん、おかあさ~ん。お客さん目を覚ましたよ~。」


 宿の主人カシアス、女将サマーンがこちらに来て

「お客さん。ようやく起きたね、二日間すっと寝ていたから心配したよ。」

「何度か起こそうかと思ったんだけど、ピクリとも動かないから起こさなかったのさ。」

「迷惑をお掛けしたようですみません。お腹が減りました。何か食べるものないですか。」

「簡単なものであれば今から作るけど。」


 カミュはサマーンにお願いして少し遅い朝食を作ってもらった。

キノコとイノシシ肉の炒め物とパンで、とってもおいしかった。


 カミュは2日分の宿代と、とりあえずあと2日分の宿代をカシアスに渡しながら、

「今日はこの後、この村を見て回ろうかと思うんだけど。」


「最北の貧乏な村だ。今は秋で涼しい時期だし、何にも見るところはないよ。お客さんはなんの為に今の時期にこの村に来たんだい?」


「実は王都暮らしが嫌になって、この村に移住しようと思ってきたのさ。」


「王都からかい。こんな村に住んでどうするつもりだい。」

カシアスはカミュを怪しげな目で見ている。


「実は私は魔術師で、魔法の研究をしたいと思っているんだけど、王都ではしがらみが多くてね。仕事を全部辞めて、心おきなく魔法の研究をするためにここに来たんだ。」


「魔法使いかい。そいつは歓迎だ。この村には魔法を使える人間がいないからさ。研究をするために来たと言ったが、この村で困っていることが有った場合は魔法で助けてもらえば助かるよ。」


「そういうことは言ってくれれば手伝うよ、ただ魔法使いとは言ってもなんでも魔法で解決できるわけではないから、そこのところは誤解してほしくないけど。」

カミュはカシアスに言った。


「ところでこの村に住むためには、どうすればいいのだろう?」


「この宿に住めばどうだい。この宿には北の砦に務めている奴らも下宿しているぞ。長期滞在ならお安くしておくよ。」


「いや、魔法の本、実験設備などもしたいから、ある程度の土地が必要なんだよね。」


「だったら村の外の荒れ地を開拓して、住む家を自分で作るのが手っ取り場合んじゃないかな。どの程度の土地が必要かわからんが、村内部に家が欲しいなら、確か南側の村の入り口あたりに空き地があったからお金出して買うという手がある。とにかくジェリマウアー村長に相談するのがいいと思うよ。」


「ありがとうカシアスさん。ではこれから村やその周りを散歩しながら村長さんのところに行ってくるよ。村長さんの家を教えてくださいね。」


カミュはカシアスに村長の家の位置を書いたメモを書いてくれるように頼んだ。


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