カミュ、魔王の夜討ちにビビる。
魔族のゲーリックさんの立候補の理由を聞き、元竜の政務担当であったカムストック婦人のビュートルさんは
「素晴らしいです。それにくらべ我が竜族のローランさんの立候補は何ですか。ローランさんは
アイナ村の支配層である竜の支配を強める為に立候補するのでしょう。あなた元政務担当として何をしているのですか! 」
と言った。
カムストックさんは気まずそうに
「ビュートル、私はアイナ村村長選に関与しない様に竜王様に進言したのだ。それをバッチ達、ローランは関与しているか知らぬが・・・が候補としてたてたのだ。」
と言った。
ケルググン殿は
「少なくともゲーリックの立候補については魔族は強制はしておらぬ。魔王様は個々の自由に任せると仰っていた。」
と言った。
その時玄関から
「カミュ殿かククリコンはおらぬのか。」
と言う声が聞こえたのでククリコンが玄関に言った。
ククリコンが訪問者を連れてきた。魔王様だった。魔王城から移動の魔法陣を使いここに来たとのこと。
魔王様は
「皆来ていたか。カミュ殿とケルググンンに用事があってきたのだが私の用事は後でいい。続けてくれ。」
と言った。
カムストックさんは
「魔王よ。今回のアイナ村の村長選の件、ゲーリックの立候補は魔王の指示ではないのだな。」
と言った。
魔王様は
「まだゲーリックは正式に立候補したのではない。まだ立候補の届け出は出していないと聞いている。私はゲーリックの立候補については彼の好きにしたらよいと思っている。立候補するかもしれぬと聞き、ラオンに問いただせたところ、ラオンも他の重臣も強制はしておらぬと言っていた。ラオンはむしろ反対していた。」
と言った。
カムストックさんはこれまでの経緯を魔王様に話したうえで、
「これでは我が竜はアイナ村村民、他にはボーナン住民に反感を買ってしまう。」
と頭を抱えていた。
魔王様は
「カムストックよ、貴様は政務をバッチに引き継ぐ際、政務担当の役割について引き継ぎをきちんとしなかったのではないか。だからこのような状況になっているのであろう。我が軍がケルググンからラオンに宰相を引き継ぐ際、ケルググンは入院中であったが宰相公務についてはケルググンに報告させ、実務上ではケルググンの次であったナーサスのやりかたを見せて学ばせた後引き継いだ。そのあたりが上手くいっていなかったのではないか。」
と言い、
「バッチは確かに有能であり竜が我らの敵であった際その手際に舌を巻いたものであった。しかし、頭が廻りすぎるゆえ短絡的に過ぎるのではないか。そのあたりをカムストック、貴様がきちんと教える前に引き継いだ故このような事になっているのであろう。正直言ってボーナンとアイナ村を比べた場合、領土やその生産性はボーナンの方が大きいだろうが、人材と戦略という点ではこのアイナ村の方が上だ。ボーナンはある程度自治に任せるという意味で自由にしたのであろうが、アイナ村は取り込みたい、その思惑が強すぎこのようになったのであろう。」
と言った。
カムストックさんは
「癪ではあるが魔王の言う通りだ。明日は蕎麦屋は閉店だ。イナバーン王都に行き現状の状況を話して竜の立候補は取りやめさせる。」
と言った。みな、それがいいだろうと言った。
ケルググン殿は
「カムストックよ、バッチや竜王が反対したら、それこそアイナ村を戦争無しで魔族に取られるぞとでも言ってやれ。私が宰相であり、いや、ラオンもだが、もし魔族と竜族が対立していた時であれば、この件をきっかけに戦争抜きでアイナ領を魔族領にしたであろう。」
と言った。
カムストックさんは
「わかった。」
と言った。