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聖女三姉妹 ~本物は一人、偽物二人は出て行け? じゃあ三人で出て行きますね~  作者: 日之影ソラ
【追放】三姉妹聖女

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9

目指せ異世界恋愛1位!

 国外追放――の四日前。

 ちょうど活動資金と荷物を確認し終わって、部屋に戻った時。

 私は二人と自室で、作戦会議ならぬひそひそ話をしていた。


「二人ともよく聞いて。このままだと私たちは離れ離れになるわ」

「うん」

「離れ離れはやだよ」

「ええ、でもデリント王子の提案にのっても、きっと幸せにはなれないと思うの」


 二人はうんうんと頷いている。

 意味は理解できなくとも、邪な考えだということは察している様子。

 これで話を進めやすい。


「だからね? 私たち三人で国を出ましょう」

「えぇ!?」

「サーシャちゃん……声が大きい」

「ご、ごめんカリナお姉ちゃん」


 パッと両手で口をふさぐサーシャ。

 カリナが私に尋ねてくる。


「どうするの?」

「さっきの荷台を見たでしょう? あんなにたくさんの荷物だもの。一つくらい増えていても不自然には思われないわ」


 私の思いついた考えはこうだ。

 まず、私が聖女として残ることを陛下に伝える。

 ついでに王子の提案もお断りしよう。

 二人は出て行くための準備に入る。

 私は何とかして、他の人にバレないよう荷台へ隠れる。

 落ち着くためにしばらく誰とも会いたくない、とか言えば上手く立ち回れるはず。

 あとは身を潜めて、王城を出たらひたすら逃げる。


「そう……」

「上手く行くかな?」

「上手く行かせるわ。それが一番、三人で幸せになれる方法よ」


 活動資金、荷物共に予想以上にもらえている。

 三人分で計算しても、しばらくは平凡に暮らしていける量だった。

 陛下には悪いけど、私たちは一人を犠牲にする道を選ばない。

 そんな道を選ぶくらいなら、三人で大変な日常へ飛び込むほうがマシだから。


◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇


 そして当日。

 私たちは何とか、目的通り三人で王城を出ることが出来た。

 荷台に袋詰めされている間は大変だったわ。

 馬車が揺れるたびに腰とかいろんな場所をぶつけて、何度か声を上げそうになったけど我慢した。

 ようやく外に出られた時の解放感は、これ以上ない喜びに満ちていたと思う。


 感慨にふけっていると、カリナがちょんちょんと私の肩をつついて言う。


「アイラ、早く移動したほうが」

「そうね。サーシャ、運転お願いするわ」

「うん、任せてよ! 騎士さんたちに習っておいてよかったな~」


 私は荷台から前の座席へ移動して、三人並んで座る。

 真ん中に座っているサーシャの運転で、馬車はガタンゴトンと動き出した。

 サーシャが運転しながらつぶやく。


「今ごろお城はどうなってるかな~」

「大混乱?」

「ふふっ、そうかもしれないわね」


 陛下には迷惑をかけてしまうし、その点は申し訳ないと思う。

 でもこれが一番良かったはずだとも思っている。

 少なくとも一人、悔しがっている人がいるだろうから。


◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇


 屋敷の前に現れたデリント王子。

 陛下の命令で、屋敷への出入りは控えるように言われているが、彼はそれを無視して中へと入った。

 揚々と歩いて向かったのは、アイラがこもっている部屋。


「私の誘いを断るとは予想外だったが……まぁ良い。その分は彼女にしっかり奉仕してもらおうじゃないか」


 なんてことを口にしている。

 彼が事実を知って唇を噛みしめるまで、あと数分。

 

 部屋の前に到着したデリント王子は、おほんと咳ばらいをして話しかける。


「アイラ! 私だ! 父上には止められていたがね、心配になってきてしまったよ」


 中から返事はない。


「落ち込んでいるのだろう? 私が慰めてあげようじゃないか」


 これにも応答はない。

 王子はやれやれと首を振り、扉に手を伸ばす。


「いつまでも引き籠っていては健康に良くない。さぁ私と一緒に――開いている?」


 扉には鍵がかけられておらず、簡単に開いた。

 首を傾げる王子。

 彼が中を見渡すが、そこには誰もいない。


「なぜ誰も……ん? これは……」


 王子は机の上にある手紙に気付く。

 手に取って確認すると、そこには――


 デリント王子へ。

 貴方と婚約なんてまっぴら御免です。

 妹たちも貴方の言いなりにはなりたくないそうです。

 最後に一つ教えておきます。

 いやらしい目を直さないと、一生誰とも結婚なんてできませんよ?


 と、王子への想いのこもったメッセージが記されていた。


「……あの女ぁ……」


 この時の王子の顔は、羞恥と怒りでぐちゃぐちゃになっていた。


◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇


「今頃きっと悔しがってるわ。その時の顔が見れないのは残念だけど、これでスッキリしたわね」


 ようやく素直になれる。

 あんな気持ち悪い人との婚約なんて絶対に嫌。

 こっちから婚約破棄させてもらえて、肩の荷が下りた気分ね。


「アイラお姉ちゃん、このまま真っすぐでいいの?」

「ええ。一先ずはずっと東へ行きましょう」


 行く当てはないけど、その代わり自由にどこへも行ける。

 まずはこの国の領土を抜けて、どこで暮らすのかは後から考えることにしよう。

 馬車の後ろを振り向いても、小さくぼんやりと首都が見える。


「さようなら」


 もう二度と、ここへ戻ることはないだろう。

ブクマ、評価はモチベーション維持につながります。

少しでも面白い、面白くなりそうと思ったら、現時点でも良いので評価を頂けると嬉しいです。


☆☆☆☆☆⇒★★★★★


よろしくお願いします。

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