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 国王陛下直轄の騎士たちが、私たちの屋敷にやってきた。

 陛下から大切な話があるらしく、すぐに王座の間へ来てほしいとのこと。


「国王陛下が……」

「解決策が見つかったのかも」

「本当? じゃあ早く行こうよ!」

「……そうね。行きましょう」


 外は相変わらず酷い状況が続いている。

 城内も慌ただしい。

 陛下もお疲れだと思うけど、ここは国の長としてしっかり解決してほしい。

 ここまで広まってしまえば、私たちの力では解決できない。

 

 三人そろって屋敷を出る。

 王座の間までは、直轄の騎士たちが護衛してくれる。

 彼らはどの派閥にも属しておらず、国王陛下の命令に忠実だから安心だ。

 そういえば……今さらになって気付く。

 三人そろって王座の間に入るのは、私たちが聖女に選ばれた日以来かもしれない。


 そんなことを考えていると、あっという間に部屋の前までたどり着いていた。

 騎士がノックをして、扉を開ける。

 開かれた先で、陛下が玉座に座っていた。

 隣にはデリント王子の姿もある。

 一瞬ニヤついているように見えたけど、きっと気のせいだろう。


「急な呼び出しだったが、三人ともよく来てくれたな」

「いえ、滅相もございません。それで陛下、大切な話というのは?」


 私が代表して受け答えをする。

 大方の予想はつくが、私はあえて陛下に質問した。

 陛下は質問を聞くと、ピクリと眉を動かし、表現の難しい顔を見せる。


「うむ、そうだな。回りくどい話をしても仕方あるまい。君たちも当然知っていると思うが、街では偽物の聖女の噂で大騒ぎだ」

「はい。私たちのことで大変なご迷惑をおかけしております」

「いいや、君たちに非はない……と私は思っている」


 陛下が意味深な言い回しをしている。

 それから陛下は、街で広まっている噂について詳細を教えてくださった。


 噂の内容は知っての通り、聖女三人のうち二人は偽物だというもの。

 陛下の命で噂の発生源を調べたが、残念ながらわかっていないそうだ。

 元よりこれだけ広まってしまえば、発生源を特定した所で手遅れである。


「加えて深刻なのは、このことが他国に知られているということだ」

「それは一体どういう……」

「私も失念していたよ。いや、小さな噂だと侮っていた。我が国は近隣諸国と友好な関係を築いている。それ故に、多くの旅人や旅行客が首都パルブに訪れていた」


 他国の人に噂が伝わり、それを自国に持ち帰ってしまったのだろう。

 陛下の話によると、友好関係にある近隣諸国から、事実確認を求める声があがっているらしい。

 聖女の存在は、他国にとっても重要なことだったようだ。


「聖女はわが国の象徴に他ならない。それに疑いが向けられるなど、本来はあってはならないこと……だが、すでにことが起きてしまっている。まことに遺憾だが、私も放置するわけにはいかない」


 そう言って、陛下は厳しい視線を私たちに向ける。

 初めて向けられたその視線に、カリナとサーシャが怯えているのがわかった。


「聖女アイラ、カリナ、サーシャ。君たち三人の内一人を本物の聖女とし、他二名を偽物として国外追放とする」

「えっ……」

「そんな……」

「嘘……」


 私たちは耳を疑った。

 衝撃は強すぎて、言葉がすぐに出ない。

 それでも私は長女として、二人の分まで発言する。


「ま、待ってください陛下! 私たちは三人とも聖女です! 偽物なんてただの噂に過ぎません」

「そうだな。私もそう思っているよ」

「で、でしたらなぜ?」

「理由は一つ。そうしなくては、この騒動は収まらないからだ」


 陛下はキッパリとそう言った。

 清々しくまっすぐな声だ。

 私はその威厳に当てられて、しばらく反論できなくなってしまう。

 その間にも陛下は続けて言う。


「君たちは三人とも聖女の資格を持っている。容姿と力がその証明であることは、私もよく知っている。だが、民衆はそれで納得しないだろう。残念ながらすでに、取り返しのつかない所まで来てしまっているのだよ」

「そ、そんな……だからって」

「一人を決められなければ、暴動はさらに激化する。そうなれば強引にでも、君たちのうち二人を処分しなくてはならない」

「処分……?」

「そう、処分だ」


 私も妹たちも、その言葉の意味を察した。

 国外追放というのは、陛下なりの優しさなのだろう。

 そうしなくては、私たちは家族の屍を踏むことになるのだから。


「でも……急にそんな……」

「だろうな。決められないとは思っている。しかし決めてもらわねばならない。刻限を設ける。今日より三日後の日が沈むまで。それまでに結論を出し、再びここへ来なさい」


 三日……

 その間に、誰を見捨てるか決めろという話だった。

 姉妹の中から一人だけ、聖女としてこの国に残ることが出来る。


「国外追放となる二名にも、当面の活動資金は用意しよう。後で屋敷に持って行かせる。確認しておくと良い」

 

 お金をやるから心配するな。

 とでも言っているのだろうか。

 陛下なりの配慮かもしれないけど、やっていることはめちゃくちゃだ。


「ゆっくり考えなさい」

「……失礼します」


 そうして、私たちは王座の間を後にした。

 チラリと王子の顔が見える。

 心が落ち込んでいる私たちは、彼のいやらしい視線にも気づけなかった。

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― 新着の感想 ―
[一言] こんな薄情な国確かにみんなで見捨てるしか無いわな(笑)
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