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聖女三姉妹 ~本物は一人、偽物二人は出て行け? じゃあ三人で出て行きますね~  作者: 日之影ソラ
三女サーシャ

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21/50

 アイスドラゴンのブレスは、触れた物すべてを凍らす。

 生物であれ無機物であれ、凍らされてしまえば終わりだ。

 加えて、今回のドラゴンは大きい。

 ジュードさんが話していた通り、普通の倍はあるみたいだ。

 翼を広げれば、辺り一面が陰に覆われてしまうほどの巨大さに、誰もが身をすくめる中……


「でっかいな~」

「ちょっとおじさん! 呑気に見てる場合じゃないよ」


 おじさんはマイペースだ。

 目の前にドラゴンがいても、大量の魔物が迫ってきても。

 普段と何ら変わらない。

 そしてもう一人、普段通りであろう人もいる。


「怯むなー! 王国騎士の誇りにかけて、悪しき竜を地に落とすぞ!」


 騎士団長のジュードさん。

 彼が先陣を切ってドラゴンへ突っ込んでいく。

 その姿に鼓舞されたように、尻込んでいた騎士団員たちが奮い立った。


 ジュードさんは剣を抜き、空を蹴ってドラゴンへ斬りかかる。

 ドラゴンはブレスと翼の羽ばたきで寄らせない。

 剣で戦う騎士にとって、翼あるドラゴンは戦い辛い相手だろう。


「足場を!」


 そこを補うために、騎士団には魔法使いの部隊がいる。

 ジュードさんが指示を出し、魔法で空中に足場が生成される。

 足場へ華麗に飛び乗り、ドラゴンの翼を斬りつける。

 さらに連撃、ドラゴンはたまらず距離を取ろうとするが、それをジュードさんは許さない。


「すごい……」

「言った通りだろ? 戦ってるときは別人だ」

「うん」

 

 この間の優しい表情とは一変。

 笑顔で戦いながら剣を振るう姿は、まるで狂戦士のようだと思った。

 ドラゴン戦は優勢に運んでいる。


「ホントに助けはいらなそうだな。さて、んじゃオレも」


 おじさんは重い腰を起こすように、腰から剣を抜く。

 気だるげに歩む後姿を、格好良いと思うのはボクだけだろうか?

 

「ちょっとは働くか」


 迫りくる魔物の群れの中を、散歩するかのように堂々と進む。

 彼が進んだその道は、魔物の死体で埋め尽くされる。

 誰も彼の剣筋を見ることは出来ない。

 その域に至っていなければ、美しき剣に気づくこともままならない。


 彼は振り返り、ボクに言う。


「遅れんなよ。サーシャ」

「うん!」


 ボクも負けていられない。

 おじさんの仲間として、恥じない活躍をしよう。


「主よ――か弱き我らに白き雷を遣わしたまえ。我らを阻む障害を、打ち破らんがため!」


 白い雷が落ちる。

 聖女の力の一つ、魔を撃ち滅ぼす裁きの光。

 ボクの聖女としての力は、癒すよりもこっちのほうが向いている。

 剣術だけではまだまだ未熟。

 だけど、持っているものを全部合わせれば、ボクだって戦えるんだ。


「いい感じだな」

「えっへへ」


 おじさんに褒められたい。

 もっと頑張らなきゃと気合を入れる。


 ドラゴン戦も順調の様子。

 ジュードさんを中心に、翼を斬り裂き飛行能力を低下させている。

 じきにドラゴンも地に落ちるだろう。

 押し寄せていた魔物の大群も、冒険者たちが主体となって殲滅している。

 作戦は順調そのものだった。


◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇


 違和感――


 最初にそれを感じたのは、オレとジュードだ。

 ドラゴンは本来、生まれ育った環境によって強さや大きさを変える。

 山頂に巣があるのなら、これまでの発見例と同じだ。

 環境は大きく変化していない。

 それなのに、なぜ今回のドラゴンだけは大きい?

 

 ドラゴンの翼に穴が開く。

 飛行能力を失ったドラゴンは地に落ちる。


「畳みかけろ!」


 ジュードの声が響く。

 あの状態に持ち込めば、ドラゴンとの戦闘は終わったも同然だ。


 違和感――


 やはり不自然だ。

 あの巨大さの割に、強さはさほど変化していない。

 予想していたよりもあっさりしすぎている。

 いや、それどころか魔力が弱くなっていないか?

 戦う以前から、魔力の総量が低下し続けている。

 まるで、何かに魔力を吸われ続けているように……


「これで――」


 ジュードが止めを刺そうとした。

 切っ先が胸を貫く。

 否、貫こうとして、弾かれた。


「なっ……」

「まさか」


 違和感の正体が、ドラゴンの胸から姿を現す。

 漆黒の鎧を纏ったようなその姿は、かつての王国に牙を向いた人ならざる者。

 失った左腕がうずく。

 間違いない。

 あれは――


「悪魔だ!」


 オレが叫んだ時には、すでに何人かの騎士が殺されていた。

 速い、強い、恐ろしい。

 全て覚えている。

 身体の細胞が、産毛に至るまで吠えている。


「タチカゼ!」

「ああ!」


 この悪魔を倒せと。


「おじさん!」

「サーシャ! お前は逃げろ!」


 悪魔が相手では、オレも守りながら戦えない。

 せめて戦いに巻き込まれない所まで逃げてくれ。


 悪魔が吠える。

 たったそれだけで大地が震え、空気がきしむ。

 騎士たちは恐怖し、その場で立ち尽くしている。


「下がれ! 死にたくなければ離れろ!」


 ジュードが叫ぶ。

 おそらくこの場で、悪魔と戦えるのはオレとジュードだけだ。

 ジュードの剣が悪魔に迫る。

 悪魔は剣を躱し、攻撃に転じている。


「させるかよ」


 悪魔の拳をオレの剣が弾く。

 そのまま大ぶりの一撃をかまし、悪魔は吹き飛ばされる。

 ただ、この程度では倒せない。


「くそっ! あの時と同じかよ」

「いいや、あの時の悪魔よりは弱い。二人ならやれる」


 その直後、悪魔は頭上に紫色のエネルギーの塊を生成した。

 魔法の一種だろう。

 それも数が多い。


「全方位攻撃か!」

「まずい――」


 他の奴らも巻き添えになる。


「主よ――我らが同胞を守りたまえ」


 サーシャが祈りを捧げると、光のヴェールが全体を包み込む。

 悪魔だけが弾かれ、人々を守っている。


「サーシャ!」

「こっちは任せて!」


 全く頼もしい限りだ。

 これで悪魔との戦闘に集中できる。

 そう思った時には、悪魔の両目が彼女を捉えていた。

ブクマ、評価はモチベーション維持につながります。

少しでも面白い、面白くなりそうと思ったら、現時点でも良いので評価を頂けると嬉しいです。


☆☆☆☆☆⇒★★★★★


よろしくお願いします。

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