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「ふふふっ」

「何だよ、ジュード」

「いやいや、実に仲が良いなと思ってね」

「はぁ? どこを見て言ってんだ?」


 悲しそうにしているボクを慰めるように、おじさんが頭を撫でている。

 その様子を見ながら、ジュードさんが続けて言う。


「この光景を見て、そう思わない者はいないと思うがね」

「うっ……」


 やっと気づいたおじさんは、慌てて手をボクの頭から離した。

 ボクとしてはもう少し撫でられていたかったから残念。


「はっははははは」

「からかいに来たのかよ」

「まさか。実はお前に伝えておきたい情報があってね」


 ジュードさんは急に真剣な顔をした。

 ボクもおじさんも、表情の変化に気付いて姿勢を改める。


「何かあったのか?」

「ああ。この街の北の山脈で、ドラゴンが確認された」

「ドラ――!」


 驚いたボクは、思わず大きな声が出そうになって、おじさんに口をふさがれた。


「本当か?」

「確かな情報だ。最初に発見されたのは山道だったが、おそらく山頂に巣がある」

「種類は? あそこは雪も降ってるし、アイスドラゴンか」


 ジュードさんはこくりと頷いて続ける。


「すでに山道を使った者たちに被害が出ている。今は一時的に山道を封鎖している状態だが……」

「あそこは意外と使うだろ。山脈を超えた先に物資を移動するには、あの道が最短ルートだからな」

「うむ。このまま放置もできない。我々騎士団でも討伐の準備を進めている」

「まぁドラゴンなら何度か戦ってるだろ。別に初めてってわけでもないし、油断しなきゃ問題ねぇよ」


 そんな風にあっさり言えてしまうのか。

 と、思いながらおじさんを見て、ジュードさんに視線を戻す。


「いいや、今回はそう簡単ではなさそうなのだ」

「ん?」

「ドラゴンのサイズが、今までに確認された倍はある」

「倍だと? それがホントならきついな」

「ああ。加えてドラゴンに棲家を追われた魔物たちが山を下りてきている。戦闘になれば、ドラゴン以外の魔物とも戦うことになりそうだ」


 ドラゴンと魔物の大群。

 想像しただけでも大変な戦いだとわかる。

 ボクはごくりと息をのむ。

 おじさんは冷静に話を聞きながら、ふむふむと頷いて言う。


「なるほどな。そんでオレにも協力してほしいってことか?」

「お前個人にというわけではないよ。近々ギルドから、ドラゴン討伐の依頼が出される。お前もそれに参加してほしい」

「ギルドからか。それをわざわざ言いに来たのか?」

「そうだが? お前は言わないと、面倒臭がって参加しないと思ったのでな」


 それは確かにありそう。

 とボクは心の中で思った。


「それは確かにありそう」

「おい」

「あっ、声に出ちゃってた?」

「思いっきり出てたな」

「はっはは、さすがタチカゼのことをわかっているね」


 ジュードさんが楽しそうに笑う。

 こんな話をした後なのに、余裕を感じられる。


「もちろんですよ! なんたって未来の奥さんですからね!」

「ぅ……そうなのか? タチカゼ」

「いや、こいつが言ってるだけだから。そんな犯罪者を見るような目で見るな」

「こうやっていっつも照れ隠しするんですよ~」

「照れてんじゃねぇ」


 ジュードさんは呆れたように笑う。

 その後は少しだけ最近の話をして、時間が来たと言ってジュードさんは先に帰っていった。

 残ったボクらもそろそろ家に戻る時間だ。


「優しそうな人だったね、ジュードさん」

「まぁ見た目通りだよ。普段はな」

「実は怖い人なの?」

「いんや。ただ戦ってるときはオレより豪快だ」

「ふぅ~ん、おじさんとどっちが強いの?」

「そりゃー今はあっちだろ。オレは見ての通り引退した元騎士だからな。現役の騎士団長様に勝てるわけねぇよ」

「そっか。でもでも! ボクはおじさんのほうが格好良いと思ってるよ?」

「そうかよ。じゃあそろそろ帰るか」


 そう言っておじさんが立ち上がる。


「待って!」

「ん?」

「ドラゴン討伐依頼……おじさんは受けるんだよね?」

「まぁな。わざわざ頼まれちまったし、無視できねぇだろ」

「……ボクもいいかな?」


 おじさんは意外そうな顔を見せる。

 ボクの質問が、普段の様子と合っていなかったからだろう。

 普段は一々確認なんてしないからね。

 でも、今回の相手はドラゴンらしいから、ボクがいて邪魔にならないかって思う。


「怖いのか?」

「ううん」

「じゃあ良いんじゃないか。どうせ止めても付いてくるだろ」

「うん! さっすがおじさん、ボクのことちゃんとわかってるね」

「アホか。そんなもんお前を知ってる奴なら誰でもわかる」


 そう言って、おじさんは先にギルドを出て行った。

 

 だったらボクの気持ちが本気だってこと……早く気付いてほしいまぁ。

 

 相変わらず鈍感なおじさんだ。

 そんなおじさんの昔のことが少し知れたし、一先ずは満足しておこう。


「ドラゴン……か。一応お姉ちゃんたちにも話しておこうかな?」


 言ったら絶対に反対されそうだけど。

 ドラゴンなんて大事だし、すぐにバレちゃいそうだから。

 ちゃんと話して納得してもらおう。

 大丈夫。

 だってボクには、とっても強いおじさんが一緒にいるんだから。


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少しでも面白い、面白くなりそうと思ったら、現時点でも良いので評価を頂けると嬉しいです。


☆☆☆☆☆⇒★★★★★


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