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 声をかけてくれた三人は、昔からの幼馴染だという。

 リーダーの剣士リュウ、盾役のドドロン、魔法使いのルードス。

 そこに回復役の僧侶が加わっていたのだけど、数日前に体調を崩してから、冒険者を辞めてしまったのだという。

 事情を把握すると、祈りの力で傷を癒すことに出来るボクは、欠員を補うにはうってつけだった。


「ほいっと!」

「凄いな、サーシャちゃん。剣術も得意なんだね」

「えへへ~ 小さい頃から鍛えられてますから!」

「なるほど、頼りになるよ」


 初めての魔物との戦闘は、恐怖するものだと聞いていた。

 戦い方を教えてくれた騎士さんたちも、初めては身が竦んで上手く動けなかったらしい。

 だけどボクの場合はそんなことなく、訓練通りに身体が動いてくれた。

 聞いていたよりも怖くない。

 お兄さんたちが気をつかって弱い魔物を選んでくれたから、相手の動きもよく見える。

 実はちょっぴり不安だったけど、これなら大丈夫そうで安心した。


「怪我をしたら言ってくださいね! ボクが治しますから!」

「頼もしいですね」

「うん。冒険者になったばかりとは思えないな」


 頼られるのも気分が良い。

 やっぱりボクには、冒険者が向いていたのだと思った。


◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇


「たっだいまー!」

「お帰りなさい」

「ちゃんと帰って来たね」

「もちろんだよ!」


 初めての依頼を終えた日は、寝るまで気持ちが高ぶっていた。

 身体を動かす楽しさと、これまでの訓練の成果が発揮される喜び。

 何より報酬を受け取ると、自分の頑張りが形になったと実感できる。


「あのねあのね! みんな良い人ばっかりだったよ!」

「そう。なら良かったわ」

「サーシャちゃんは素直過ぎるから……騙されないようにね」

「確かにそうね。変な人について行っちゃダメよ?」

「わかってるよぉ」


 受付のお姉さんと同じことをアイラお姉ちゃんに言われた。

 変な人……と言われて思い浮かんだのは、一人でホールの隅に佇む隻腕のおじさんだった。

 お兄さんたちは、あの人のことを変わり者だって言っていた。

 見た目は確かにそんな感じがして……でも、本当にそうなのかな。


「よーし! 考えるのは面倒くさいし、明日直接聞いてみようかな!」


 それがボクらしい。

 たぶん大丈夫だとも思うから、自分の直感を信じよう。


◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇


 翌日。

 集合時間よりも早く、ボクは冒険者ギルドに足を運んだ。


「いるかな~」


 建物に入って目を向ける。

 すると、あの人は昨日と同じ場所で座ってる彼を見つけた。


「いた!」


 やっぱり怖い人には見えない。

 ボクは彼に近づき、思い切って声をかけてみる。


「ねぇおじさん、何をしているの?」

「……」


 返事がない。

 聞こえていると思うけど、明らかに無視されている。


「おーい! おじさん聞こえている?」

「……オレはおじさんじゃない」

「あっ、やっぱり聞こえてたんだ。無視するなんて酷いなぁ~」


 ボクはおじさんの前に座る。


「ねぇねぇ! ボクはサーシャって言うんだ! おじさんの名前は?」

「……」

「また無視してる……あっ、もしかしておじさんだから耳が遠いとか?」

「そこまで老化してないわ! あっ……」


 ボクは予想通りに返してくれて、ニコニコ笑いながらおじさんを見つめる。

 そんな僕を見て、おじさんは大きなため息をつく。


「はぁ……何なんだよお前」

「ボクはサーシャだよ」

「そうじゃなくて、何でオレに話しかけてるんだ? 昨日パーティーはどうした?」

「まだ集合時間じゃないんだ。おじさんと話したくて、ちょっと早く来たんだよ」

「オレと? お前……変な奴だな」

「お兄さんたちは、おじさんが変な人だって言ってたよ」


 ボクがそう言うと、おじさんはピクリと反応する。


「だったら尚更話しかけてくるな」

「何で?」

「何でって、変な奴と話してると余計な心配かけるぞ」

「大丈夫だよ。だっておじさんは変な人でも、悪い人でもないでしょ?」


 話しかけてみてわかった。

 やっぱりボクが思った通りだ。


「お前……あんまり素直過ぎると、いずれ痛い目を見るぞ」

「大丈夫! ボクはこう見えて強いんだ」

「そうかい」

「おじさんも冒険者だよね? 依頼は受けないの?」

「受けてるぞ。適当にな」

「へぇ~ ねぇねぇ、冒険者って楽しい?」

「普通だ。オレは別に、報酬さえもらえれば何でもいいからな」


 話の途中で、おじさんの視線が動く。

 出入り口の付近に目を向けると、お兄さんたちがいた。

 気付けば約束の時間に近づいている。


「もう行かなきゃ」


 席をたち、お兄さんたちのほうへ向かう。

 すると、後ろからおじさんが言う。


「気を付けろよ」

「うん! おじさんも、戻ったら名前教えてね!」


 ああ、やっぱりおじさんは良い人だ。

 見た目はちょっぴり怖いけど、言葉とか声に優しさが感じられる。

 それにどうしてだろう。

 おじさんと話している時は、変に緊張もしない。

 何だかお姉ちゃんたちと話しているような感じがする。

 戻ったらまた話してみたいな。

ブクマ、評価はモチベーション維持につながります。

少しでも面白い、面白くなりそうと思ったら、現時点でも良いので評価を頂けると嬉しいです。


☆☆☆☆☆⇒★★★★★


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