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 小さい頃から、身体を動かすことが好きだった。

 勉強は苦手だし、女の子らしくお淑やかにするのも窮屈だったから。

 身体を動かしている間は、余計なことを考えなくて良い。

 聖女になってからも、それは変わらなかった。

 日々のお務めよりも、騎士の人たちと稽古したり、庭を走り回るほうが楽しい。


 そんなある日、騎士の人から冒険者というお仕事があるという話を聞いた。

 冒険者は言葉通り、森とか洞窟とか、色々な場所を冒険する人のこと。

 ギルドという所に所属して、冒険ついでに依頼をこなし、報酬をもらって生活しているらしい。

 ボクはその話を聞いた時、なんてピッタリな仕事があるんだ、と思った。


◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇


 清々しい朝が来た。

 窓から差し込む日差しに刺激されて、瞼がパッチリと開く。

 目をこすり、身体を起こして背伸びをする。

 時計を確認すると、午前六時半を指していた。


「ぅ~ もう朝か~」


 身体も頭も半分は眠っているような感じがする。

 寝起きはいつもこんな感じで、ベッドから降りるまで時間がかかる。

 そしてカチカチと時計の針が進み、しばらくすると――


「サーシャ! もう朝だから起きなさい」


 と、扉の向こう側からアイラお姉ちゃんの声が聞こえてくる。

 これも普段通り。


「はーい!」

 

 アイラお姉ちゃんの声がボクにとっての目覚まし代わりだ。

 身体と頭が目覚めたボクは、ベッドから起きて服を着替える。

 そのまま支度を済ませて、一階まで降りる。

 食堂へ行くと、二人のお姉ちゃんが待っていた。


「おっはよー!」

「……遅い」

「もう、いいかげん一人で起きられるようになりなさい」

「えへへへっ、ごめんなさい」


 よく言われているけど、直らないと自覚している。

 だって一人で起きられるようになったら、もうアイラお姉ちゃんが起こしに来てくれないから。

 三人で食卓を囲む。

 料理はアイラお姉ちゃんがしてくれている。

 ボクとカリナお姉ちゃんは、あんまり料理が得意じゃない。

 だからボクは、代わりに洗濯物を干したり、掃除したりを手伝っている。


「アイラお姉ちゃんは今日も聖堂にいくの?」

「ええ、帰りはいつもの時間になるわ」

「わかった! カリナお姉ちゃんもお仕事だよね?」

「そうよ」


 王国を出て三か月くらい。

 この借家での暮らしも慣れてきている。

 ボクたちはそれぞれに仕事を見つけて、それなりに忙しい日々を送っていた。


 アイラお姉ちゃんは王城近くの聖堂で、聖女として街の人たちと関わっている。

 何でも王子様と縁があったみたいで、その時に聖女だったこともバレてしまったらしい。

 その後に色々あって、結局は前と同じようなことをしている。

 だけど、見ていて前より楽しそうだから、これで良かったのだと思う。


 カリナお姉ちゃんは街の図書館で司書をしている。

 初めてここへ来た日も、司書になりたいと言っていた。

 元々本が好きだったカリナお姉ちゃんには、ピッタリの仕事だと思う。

 他にも色々とあるみたいだけど、詳しいことは教えてくれない。

 ただ、カリナお姉ちゃんも楽しそう。


 そしてボク、三女のサーシャはというと……


「サーシャは今日もギルドへ行くのよね?」

「もちろん! ボクは冒険者だからね!」


 ずっとなりたかった職業についている。

 冒険者――依頼を受けて魔物を狩ったり、未知の場所を探検する職業。

 身体を動かしてお金を稼ぐ仕事の中で、一番自由な職業だと思う。


「いつも言ってるけど気を付けてね?」

「大丈夫だよ! アイラお姉ちゃん」

「サーシャちゃんの大丈夫は……あんまり信用できない」

「えぇ~ ひどいよカリナお姉ちゃん、ボクなら本当に大丈夫だよ? なんたって頼れる仲間がいるからね」


 そう言って、僕は自分の胸をドンと叩く。

 二人は心配そうな顔をしたまま、同じタイミングでため息をついた。

 アイラお姉ちゃんが言う。


「その人にあんまり迷惑かけちゃダメよ?」

「甘えすぎも良くない」

「もぉー、じゃあどうすればいいのさぁ」


 二人のお姉ちゃんは心配性だ。

 ボクのことを心配してくれるのは嬉しいけど、少しは信用してほしいとも思う。

 それにボクだって一人で冒険するわけじゃないから。

 さっきも言った通り、頼れる仲間がいてくれる。

 ちょっと変わった人だけど、頼りになってボクは大好きだ。

 そのうち二人にも会わせてあげたいと思っている。


「ごちそうさま! じゃあ行ってくるね!」

「本当に気を付けるのよ!」

「行ってらっしゃい」


 玄関にある剣を拾い、腰に装備してから出発する。

 二人に見送られ、ボクは冒険者ギルドに向って走る。

 

「おはよう! サーシャちゃん」

「おっはよー!」

「サーシャは今日も元気だな~」

「えっへへ~ おじさんも元気出して行こう!」


 この街の人たちは、とても暖かくてやさしい。

 よそ者だったボクたちを快く出迎えてくれて、手を振ってあいさつもしてくれる。

 綺麗な街に住んでいると、皆の心も綺麗になるのかな。

 そんなことを考えながら、海の近くにある大きな建物にたどり着いた。

 看板には大きな文字で『冒険者ギルドクレンベル支部』と書かれている。


ブクマ、評価はモチベーション維持につながります。

少しでも面白い、面白くなりそうと思ったら、現時点でも良いので評価を頂けると嬉しいです。


☆☆☆☆☆⇒★★★★★


よろしくお願いします。

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