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第七十七話 「一時の目覚め」

ちょこっとジャンル別日間ランキングにまた乗ったからかブックマークが増えてますね、ありがたい事です。

七百件超えたら、記念に連続更新でもしましょうかね?(作者の睡眠時間がコストになりますが)

 ―――時は流れて早朝。

 場所は『蓬莱鉱山』から最も近い波柴コーポレーション系列の総合病院の一室。

 そこで迦具矢は戻って来たイズメたちにこれまでの経緯を説明していた。



「―――それで、蓮上にメーヴの血を飲ませたんだけど、心臓は元に戻らなくて。砕牙(さいが)たちの所に蓮上を連れて行ったらこの病院まで運び込まれて……今は『(はつ)』が色んな薬を試してくれてるけど、一向に良くなる感じがしなくて……ごめん、なさい。ごめんなさい。私、が……私が、ずっと蓮上の傍に居さえすれば……!」

「もう良い。もう良いのだ、迦具矢。良く頑張ったな……」

「イズメ……!」



 話している内に涙を抑えきれなくなった迦具矢を大人の姿となっているイズメが優しく抱きしめる。

 蓮上の病室には、多くの者が集まっていた。



「ああ、蓮上……どうして、こんな……」

「わぅ、蓮上ぅ……」


 留守番をしていた温泉旅館からイズメたちと共に駆け付けたマミナとコノハ。

 マミナは蓮上の右手を祈るように握って涙を流し、コノハはベッドに両手と頭を乗せてクゥンクゥンと鳴いている。

 マミナとコノハにとって最愛の家族である蓮上がいつまでも目を覚まさない事がこの上なく恐ろしく、蓮上に対して何も出来ない自分があまりに無力だった。


「ごめんなさい、ごめんなさいっ。私がもっと早くに助けに入っていたら!」

「そう自分を責めるんじゃないよお嬢ちゃん。何であれ、命懸けで自分を助けようとしてくれた相手を蓮坊が怨む筈無いさね」


 涙ながらに謝罪を口にし、自責の念に駆られるメーヴ。

 そんなメーヴに紫秋(しあき)は蓮上の点滴を変えながら自分を責めるなと宥めた。

 蓮上の体のあちこちには現在いくつものチューブが繋がっており、それらを通じて紫秋の作成した最高位の回復薬や霊薬の類が投与され続けている。

 その中の一つはメーヴの腕へと繋がっており、各種薬品と共にメーヴの血が蓮上へと輸血され続けていた。


「……まさか、あの首刈レッドジョーとこの様な形で顔を合わせる事になるとはな……」

「ペルセフォネの奴が、やったのよね? ……全く、碌なことしないわね。私が居たら殴り飛ばしていたのに……!」


 掛けていたサングラスを外して力無くベッドに横たわる蓮上や蓮上の周囲で悲しみに暮れる少女たちの姿を痛ましげに見つめるセリオス。

 同様に公主も蓮上を見つめた後、血が滲みそうなほど自身の拳を強く握り込んでいた。

 二人はこちらへ来ずに『平国(ことむけ)機関』の下で待機する事も出来たのだが、セリオスはある種憧れの人物とも言える首刈レッドジョーが死にかけていると聞いて居ても経っても居られずに、公主は姉妹であるペルセフォネやエウロパ、メーヴの名前が挙がったことから同行すると言ってきかずにここまでついて来た。


「……っ、すみません! 私、何か先輩を助ける手立ては無いか方々に連絡を取って聞いてみますっ!」


 そう言って、永長は一人病室を後にする。

 初めて見る蓮上の弱り切った姿に当初は動揺を隠せなかったが、今はこの場に居ても自分に出来る事は無いと判断した上で、それでも何か手立ては無いかと自身の持つ人脈をフル活用する為に電話へと向かった。

 その(まなじり)には涙が浮かんでいたが、同時に絶対諦めないという強い意志が宿っていた。


 そんな永長の姿を横目に見送ったイズメはふっと微笑むと、包み込むような温かな微笑みを浮かべて全員を宥めた。



「――みな、そう悲観するでない」


 その声は、不思議と部屋全体に染み入る様に響き渡り、迦具矢やマミナ、コノハやメーヴは俯いていた顔をハッと上げ、紫秋やセリオス、公主もまた自然とイズメに注目させられていた。


「全く、付き合いの浅い者たちならば兎も角、マミナにコノハ、お前たちがそう俯いていては余計に周りの者を不安にさせてしまうであろう」

おねぇちゃん(・・・・・・)、でも……!」

()っ! 舐めるでないわ(・・・・・・・)!!」

「……っ、きゃぅ」


 普段の大人びた雰囲気は欠片も無く、見た目よりもずっと幼い声音でイズメを「おねぇちゃん」と呼んで縋る様に見つめるマミナ。

 だが、それを退ける様にイズメは叱責し、その迫力にコノハは頭の上の両耳をぺたんと倒して身を竦ませた。

 妹二人を叱咤したその上で、他の面々を睨み付ける様に見渡したイズメは高らかに宣言した。



「今一度この場の全員にはっきりと告げる。舐めるでないわ!! この男を誰と思っている!? 我らが主人! 我らが伴侶! 我らが最愛の赤松蓮上であるぞ!! 高々心臓を抉り出された程度で我らを残して先に旅立つほど、蓮上は軟弱な男では無いわっ!!」



 それは、ともすればとても酷な言葉だった。

 魔力を、生命力を限界まで奪われ、その上で心臓を抉られ体の一部を食い千切られて、その上で迦具矢らが手を尽くしたおかげで辛うじて生きているのが今の蓮上だ。

 イズメの言葉は、そんな限界ギリギリのところで薄皮一枚繋がっているような蓮上に、更に体に鞭を売って立ち上がれと言っているようなものだった。


 だが、同時にその場に居る全員が確かに感じていた。

 イズメのその言葉の裏にある蓮上への信頼と、この場の全員の憂いを少しでも晴らそうとする心遣いを。




 ―――そして、その言葉に死んでも応えるのが赤松蓮上と言う男だった。




「―――全く……心臓抉られてるのに死んだら軟弱とか、厳しいどころじゃないなイズメ……」

「「「「「蓮上(蓮坊)!!」」」」」



 かすれた声でそう呟きながら目を覚ました蓮上に、イズメを除いた全員が驚愕の目を向ける。

 今まで様々な手を尽くしても何の反応も無かったのに、イズメの声に応えて目を覚ましたという事実に誰もが目を見開いて驚いていた。

 だが、そんな中でもイズメは当然! と言った表情で蓮上へと話しかけた。


「なに、こうして実際目を覚ましたのだから間違っていなかろう?」

「はいはい、そうだな……全く、その姿だと途端に減らず口が増えて可愛げが無くなるな……」

「むっ、伴侶となる女に向かって可愛げが無いとは聞き捨てならんぞ? 母上に告げ口してやろうか? んん??」

「おいおい、勘弁してくれよ。謝るから……それより、水くれ。後なんか食べ物も」

「うむ、用意しよう」


 頷いたイズメは、ベッドの横に置かれた水差しを手に取り、コップに水を注いで蓮上の口元へと近付ける。


「飲み難ければストローも用意するぞ。それとも、妾の口移しが良いか?」

「いや、このままで良いよ。みんな見てるし」


 そう言って蓮上はイズメの差し出すコップに口を付け、ゆっくりと水を飲んで行く。

 蓮上が飲むのに合わせてイズメがゆっくりとコップを傾けてサポートしたため、(むせ)る事も無く水を飲み干して一息ついた蓮上は、改めて部屋自体や部屋の中に集まった面々を見回した。


「ふぅ……さて、気付いたら随分高級そうな病室に居るし、何があったのかよく覚えていない上に知らないメンツが増えてるが……何があったのか、説明してくれるんだろ?」

「勿論だ。皆が皆お前を心配していたのだから、寧ろ一言一句聞き逃さずに傾聴せよ」



 そう念を押したイズメは、所々迦具矢やメーヴに捕捉されながら蓮上の身に何が起きたのか、自分たちがどのような出会いを果たしたのかなどを語った。

なんか久しぶりに主人公がセリフ喋りましたね。

ちなみに病室内ですが、ざっくり言うと蓮上の右が窓側、左が入り口側になっていて、右隣では椅子に座ったメーヴが蓮上に輸血を、左隣では迦具矢が椅子に座りながら蓮上の手を握って『天破激震の頂』を使って蓮上の血液を循環させています。

紫秋お婆さんはその周りで各機材を使って適宜薬剤投与などを行っています。

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