閑話 「夢の国の館にて」
どうも、およそ一か月半ぶりの騎士シャムネコです。お待たせしてすみませんでした。
一体何があったのかと言うと自宅のエアコンが壊れて部屋の中がサウナ状態になり、暑さのせいで執筆意欲が絶無状態になっていました。(常に窓開けて無いと室内温度が夜でも36℃以上になるとかマジで世界が狂ってる)
エアコン自体は八月下旬にようやく直って使えるようになったのですが、書いてない期間が空き過ぎて何かいて良いのか判らなくなり、本日ようやく閑話ですが続きを投稿することが出来た次第です。
此処から少しづつ調子を取り戻していこと思うので、今後ともよろしくお願いします。
―――この世の何処とも知れぬ場所に、その『神殿』は存在していた。
神殿、とは言うがその建造物を一目で神殿であると見抜くのは困難であろう。
その建物は外観も内装も、古めかしく豪奢ではあったが神殿と言うよりも大きな洋館、あるいは城館と言うべきものであったからだ。
それでもこの建物は間違いなく『神殿』であった。
何故なら、この館の主こそは偉大なる神の一柱だからである。
◇
ワインレッドの絨毯が敷かれた長い廊下一人の男が歩いている。
燃え盛る炎を思わせる、オレンジに近い色合いの明るい赤髪。
筋肉質で大柄な体にスーツを纏う姿はどこかのSPか何かの様に見えるが、所々着崩ししている事と彼自身の持つ野性味と言うか粗野な雰囲気がSPと言うよりギャングかマフィアのような印象を与えていた。
男が黙々と歩いていると、やがて廊下の突き当りにある大きな両開きの扉の前へと辿り着く。
重厚な木製のその扉を男がノックすると、中から「入れ」と言う老人の声が聞こえて来た。
それを確認した男は扉を開けて中へ入りながら、部屋の主へと声を掛けた。
「よう爺さん、来てやったぜ」
「うむ、よく来た。先ずはそこへ座れ」
そう言って男を迎えたのは、執務机に座る豊かな髭が特徴的な一人の老人であった。
老人に促された男は部屋の中にある大きなソファーへどかりと座る。
行儀の悪いその態度を気にした様子も無く、老人は立ち上がると男が座るソファーとはテーブルを挟んで反対側にある別のソファーへと腰を下ろした。
「前々から思ってたけどよう爺さん、あんたの立場なら普通謁見の間で玉座に座って出迎えるもんなんじゃないか?」
「何を今更。正式な客人を出迎えるならともかく、お前さんを出迎えるのにそんな七面倒臭いことを一々やっておれるか」
「面倒ってあんたなぁ……『大帝』なんて呼ばれてる奴の言い草か? あんた俺たち『旧神』のリーダーだろ」
「知らん、文句があるなら最初から『クタニド』の奴が首魁となれば良かったのだ。あのタコめ、年功序列なんぞを理由に儂に押し付けおってからに……」
「あ~……あの御仁そう言うの気にするからなぁ」
しばしの間談笑……と言うか老人の愚痴を聞いていると、やがて話題は本題へと移った。
「――それで爺さん、今回俺を呼んだ要件は何なんだ?」
「うむ」
男の質問に老人は居住まいを正すと、神妙な顔で答えた。
「……近々、『旧神の印』によって封じられている邪神の一柱が復活するとの『予言』があったのだ。お前が対処に当たる事も含めてな」
「っ! 『予言』……だと?」
老人の言葉に男は立ち上がって驚愕を露わにする。
神々にとって『予言』と言うのはそれほど重要な意味を持って居るのだ。
「おいおい勘弁してくれよ、とんでもねぇ厄ネタじゃねぇか……」
「うむ、だが覆す事は叶わん。一度定められた運命を変えることが出来るのは、それこそ人間の中でも極一部の者だけだからな」
一度『予言』された事象は、神々であってさえもそう易々と覆す事は出来ない。
それを可能としているのは、神々からすれば何の力も持っていないに等しい筈の脆弱な存在である人間だけであった。
神々が強大な『権能』と言う力を持っているのに対し、人間は時に運命すら覆す『可能性』と言う光を持っている。
だからこそ彼ら『旧神』と呼ばれる神々は人間を慈しみ、その光を絶やさぬように守っているのだ。
……まぁ、中には旧神に守られるまでも無くあらゆる世の不条理をそれ以上の理不尽でぶち壊すような者も居るのだが。
「はぁ……わーったよ。『予言』されちまった以上、行くっきゃないからな。場所はどこだ?」
「うむ、ここじゃ」
そう言って老人が手を振ると、男と老人の間の空中にホログラムのような世界地図が現れその中の一か所に赤い光点が表示される。
「場所は太平洋のど真ん中か。って事は相手の候補がいくつか思い浮かぶが……どいつだ?」
「『火山の主』、であるそうだ」
「あいつかよ」
男の顔が内心の面倒臭さを現して歪むが、老人は気にする事も無く立ち上がって改めて男に命を下した。
「では改めて『深淵の大帝 ノーデンス』の名の下に命ずる。『星の戦士 ジョジョヴランゴ』よ。数日後に復活する『旧支配者』が一柱『火山の主 ガタノソア』を討伐し再封印せよ!」
「了解!」
老人『ノーデンス』の命に対し握った拳を胸に当てる独自の敬礼で応えた男『ジョジョヴランゴ』はそのまま退出して行った。
それを見届けたノーデンスは再びソファーに腰を下ろすと、他に誰も居ないはずの部屋の中で誰かに向けて声を掛けた。
「……これで良かったのですね、『蘭子』殿?」
『ええ、十分よ』
ノーデンスの他に誰も居なかったはずの部屋の中に女性の声が響き、続いて何も無いはずの空間が揺らめいてそこから一人の少女が姿を現す。
現れたのは長い銀髪に紫紺の瞳を持つゴスロリ衣装の小さな少女――『天田 蘭子』であった。
「ご苦労様。悪かったわね、手間を掛けさせて」
「いいえ、手間と言うほどの事でもありませんよ」
ノーデンスを軽く労った蘭子はそのまま先程までジョジョヴランゴが座っていたソファーに腰を下ろす。
するとすかさずノーデンスはどこからか取り出したティーセットと茶菓子を蘭子の前に並べ、自らの手でお茶を入れ出した。
「あら、気が利くわね。従者に任せず率先して自らやるのはポイント高いわよ?」
「ありがとうございます。まぁ、趣味であると言うのも大きいんですがな」
蘭子の言葉にノーデンスがそう返す。
この場で嘘をつく意味も無いので、意外な事のお茶が趣味であるようだ。
意外な事実に「へぇ」と感心した蘭子はノーデンスが淹れたお茶を口にして頬を緩ませ、更に茶菓子を頬張り笑みを浮かべた。
どうやら好みの味だったらしい。
こちらも誉めてやろうかと思った蘭子だったが、ノーデンスが話の続きをしたそうな雰囲気を出しているのを察して本題に入った。
「――改めて礼を言うわ。あいつを向かわせてくれたおかげで、順調に事が進むわ」
「いえ、予言された以上断る意味もありませんから……それで、蘭子殿は何故ジョジョヴランゴを指名したのですかな? ガタノソア相手なら他に相性の良い者が居るはずですが」
『旧神』の一柱である『星の戦士たち』は、単一の存在ではなく複数名が存在しており旧神勢力の精鋭部隊と言う側面も持っている。
彼らは全員が高い戦闘能力を持っているがその能力の性質は個々によって異なり、通常任務では能力的に相性の良い者が派遣される事となっている。
だが、今回相手となるガタノソアに対しジョジョヴランゴは決して相性が良いとは言えなかった。
それでも負ける事はまず無いが、何故相性の悪い者を態々指名して向かわせたのかをノーデンスは疑問に思っていた。
「まぁ、もっともな疑問ね。相性だけで見たら彼より『ココティア』辺りが良いかしら?」
「はい、儂もそう思います」
「けれどね、彼じゃなきゃダメなのよ。彼だからこそ意味があるの!」
そう強く語る蘭子を前にして……ノーデンスはそれ以上詮索するのを止めた。
どの道自分にもこの場に居ないジョジョヴランゴにも目の前の彼女、確立と運命の支配者たる最古の大女神の予言を覆す事等出来ないのだ。
悪い結果にはならない、そう信じて待つしか無いのである。
ただ―――
「……一つ聞いても宜しいでしょうか?」
「何かしら? 一つと言わずに、貴方には全てを知る権利があるのだけれど」
「いいえ、一つで十分です……此度の予言、その先にどのような結果があるのかを知りたいのです」
「―――そう、なら教えてあげるわ」
そう言って、蘭子は妖しくも実に美しい笑みを浮かべる。
そこにある感情は喜びか、執着か、喝采か、狂気か……ノーデンスには判別が付かなかった。
が、
「――『勇者』が生まれるのよ。この『蒼き星』で初めてとなる、星に選ばれた本物の『勇者』が、ね」
ノーデンスに判ったのは、蘭子が実に嬉しそうという事だけであった。
◇
「――ところであんた、まぁ『亞虎』の事引き摺ってんの?」
「ぬぐっ……言わんでくだされ……」
「好きな子にちょっかいかけまくって嫌われるとか、男って馬鹿よねぇ~」
「ぬぐぅ……」
『蘭子さん』
乱数を司る最強最悪の大邪神な女神様。作中の神々の中ではぶっちぎりで最強格かつ最古参。
『ノーデンス』
クトゥルー系の神々の中でも、旧神勢力のリーダー。クトゥルフ神話だとニャル様と仲の悪い設定だけど、当作では好きな子に悪戯する小学生男子のアレって事になってる。
『ジョジョヴランゴ』
星の戦士の一人、フィジカル特化型。髪型がフラダリっぽい感じ、髪型を馬鹿にするとブチギレる。名前の元ネタは「ジョジョブラキ」。




