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第六十五話 「爆破焼失」

(・▲・)「ジュリリリィ!!!(祝・ドラグニティストラクR、発売決定! 祝・ドラグニティストラクR、発売決定!! 祝・ドラグニティストラクR、発売決定!!!)」(学生時代ドラグニティ使いだった作者大歓喜)

 哲也らとオールドマンの戦いは、概ね哲也たちが優勢であった。


 菊菜の退魔の笛の音色による弱体化、哲也の浄化銀弾を使った正確な射撃による妨害、そして圭介が放つ破邪の攻撃。

 対するオールドマンが鈍足の手合いであったこともあり、三人は澱みの無い連携で徐々にオールドマンを削って行った。


 このまま行けば弱らせたオールドマンを封印する事も可能だろう。

 三人が確信したその時、戦いは思いもよらぬ形で決着がついた。




 ―――Pyuwyeeeeeeeeeッッッ!!!




「なっ!?」

「えっ!?」

「はぁっ!?」


 通常の隼には出せないであろう、大気を引き裂く様な甲高い鳴き声と共に炎の体を持つ隼が壁を突き破って現れ、進路上に居たオールドマンへと衝突した。

 結果、オールドマンは悲鳴一つ上げる間も無く焼き尽くされ、炎の隼はそもそもオールドマンなど居なかったの様に減速も無くそのまま進行方向の壁を突き破って何処かへと消えた。

 後に残ったのは、溶岩の様な赤橙に染まって焼き溶かされた壁の穴二つだけである。


 余りにも呆気ない幕引きと予想だにしなかった光景に三人はしばし呆然としていたが、やがて聞こえて来た大切な仲間である少女の声によって意識を現実に引き戻された。



「皆さん! 無事ですか~っ!?」

「「「永長ちゃんっ!?」」」


 行方知れずとなっていた仲間、永長とようやく再会出来たのである。

 だが、再会を喜ぶ暇もなく永長は探索者の人間離れした筋力にものを言わせて三人を纏めて抱え上げ、そのまま走り出してしまった。


「ちょ、永長ちゃん!? いきなりどうしたの!?」

「ごめんなさい菊菜ちゃん、説明している時間も惜しいんです! 早くイズメちゃんの下に行かないと!!」


 永長の行動に驚く三人だったが、血相を変えて早口に捲し立てる永長の表情を見て、今が緊急事態である事を悟る。

 永長と共に現れたセリオスが背負う正体不明の青年についても聞きたかったが、ぐっと堪えて哲也がイズメが戦っていた場所への道を指し示した。


「でしたら、その角を左に曲がって下さい。案内します!」

「ありがとうございます哲也さん! 菊菜ちゃんと圭介君も振り落とされないようしっかり掴まって――っ!?」


 と、その途中で通路内に残留する『紅蓮の殲滅隼』が残した火花が『ジジジジジ―――ッ!!』と、激しいスパーク音の様な物を上げ、強く発光し始める。

 その意味を理解している永長はその場でステップを刻んで進路を変え、セリオスへ近づいた。


「皆さん落下に備えて! イズメちゃんの一斉起爆が来ます!!」



 永長がそう叫んだ次の瞬間、聞こえていたスパーク音が消えると共に視界全てが火花と同じオレンジ色に染まりそして―――永長たちの立っていた床が消え、全員が自由落下を開始した。




 ◇




 球状に削られた空間の中で、十一の尾を持つ女性が目を閉じて静かに佇んでいる。

 千早を羽織った巫女装束に身を包むその女性の正体は、奥義スキルによって姿を変じたイズメだった。


 球状空間の中には時折壁を貫いて炎の隼が姿を現し、そのまま壁を貫いて去って行く。

 その度に球状空間の中心に存在するあるものを焼き尽くして。

 空間の中心に存在するものとは原形の判らない肉塊であり、それが拳大より大きくならない内に隼は姿を現している様である。


 肉塊の正体はイズメが先ほどまで対峙していたアベルであり、不死身と言って良い再生力を発揮するアベルをイズメは『紅蓮の殲滅隼』を使って完全に封殺していた。

 だが、苦戦していた相手であるアベルを完封している現状に対し、イズメには一切の感慨は無い。

 今現在イズメの胸中にあるのは怒りの感情だけであり、『紅蓮の殲滅隼』を飛び回らせているのはその感情を八つ当たりとして周囲にぶちまける為の下準備に過ぎないのだ。

 イズメの感じている思いを一言で表すのならこうである。



「―――貴方なんかが、大鎌(それ)を使わないで」



 そう、イズメが激怒した原因とはアベルが大鎌を―――蓮上の象徴と言うべき武器を使おうとしたことであった。


 イズメにとって、蓮上がどれほど大切な存在であるかなどもはや語り尽くせないほどだ。

 根本的には獣である自分と違い、狩人としての誇りと規範、礼節を順守する蓮上の生き方は、イズメにとって自分の事の様に誇らしい在り様でもある。

 そんな蓮上が最も愛用する得物である大鎌を蓮上とは正反対の、殺戮に悦楽を見出す狂戦士であるアベルが振るう。

 その姿をイズメは耐えられなかった。



 まるで自らの大切な存在、蓮上を穢されるかのようなその光景にイズメは激怒したのだ。



 故にこそ、イズメは自重を捨てて全てを破壊し尽くす事を選択した。

 この施設の調査に来ている永長たちへの遠慮を止め、ごくシンプルに取るべき行動を選び直したのだ。



 第一に優先するべきなのは、永長たちの安全の確保。

 第二に優先するべきなのは、途中で出会った上半身しか存在しない猫の様な敵対的ではないオブジェクトたちの保護。

 そしてそれ以外は……全てを破壊する。



 その極端な目的を実行する下準備として、イズメは『紅蓮の殲滅隼』を使用した。

 破壊力、殺傷能力だけで言えば、『紅蓮の殲滅隼』以上に強力な魔法をイズメは使うことが出来る。

 だが、攻撃範囲内に攻撃対象と保護対象が混在しているような状態の場合、最も優れているのがこの『紅蓮の殲滅隼』であった。


 炎の隼は、ただ全体攻撃の下準備として施設内に火花を撒き散らしている訳では無い。

 施設内を壁を貫いて隈なく巡る事で、永長らを始めとした保護対象の確認をする為に飛び回っているのだ。

 最上階から最下層まで、施設内の隅から隅までを巡って永長たちの現在位置や、敵対的では無い、またはイズメがまだ出会っていなかったオブジェクトたち全ての位置を『紅蓮の殲滅隼』の目を通して確認したイズメは、彼ら彼女らを保護する為の魔法を準備した。



「『落下制御フォーリング・コントロール』、『光量制御ブライトネス・コントロール』、『鋼鉄の衣(スティール・クローク)』―――」



 発動した魔法は順に、『落下速度を緩めて安全に着地させる魔法』、『光量を弱めて目を守る魔法』、『被ダメージを大幅に軽減させる魔法』の三つである。

 これらの魔法は本来、近くに居るか視認した相手にしか掛けられないのだが、奥義スキル『転身・赤毛十一尾伝説』による強化によって、魔法などを通してでも一度認識した相手なら使用可能となっていた。


 保護の為の魔法を掛けた事によって最後の準備を終えたイズメの下に、天井を突き破って『紅蓮の殲滅隼』が帰還する。

 鷹匠の様に伸ばした左腕に炎の隼を一度止まらせたイズメは、腕を振って隼を飛び立たせると共に『紅蓮の殲滅隼』の派生攻撃である大規模破壊魔法を発動させた。



「全て爆ぜ落ちろ―――――『爆華崩落(ばっかほうらく)紅蓮翅片(ぐれんしへん)』ッ!!!」



 イズメの言葉と同時に、飛び立った隼が大きく翼を広げて円を描くような形を作る。

 それはまるで古代の絵に描かれる神鳥かのような雄々しくも神々しい姿であり、やがて神々しいという印象をより強くさせるかの様に、後光の如き眩い光を放つ。

 その光は何層にも分かれた施設内を床や壁を無視して貫き満たし、その光に喚起され施設中に残留する橙色の火花が活性化する。




 ―――次の瞬間、音は無くしかし激しい発光を伴って全ての火花が一斉起爆し、財団施設内のおよそ九割以上が一瞬で文字通り『焼失(しょうしつ)』した。

『爆華崩落・紅蓮翅片』(ばっかほうらく・ぐれんしへん)



『紅蓮の殲滅隼』の派生攻撃、撒き散らした残留火花を一斉起爆する大規模攻撃。

元の魔法が対象によって温度を変える事が可能な概念よりの魔法である為、爆破による『焼失』対象を選ぶことが出来る。(要するにフレンドリーファイア設定が出来る)


名前に使用されている『翅』と言う字は本来『鳥』では無く『虫』の羽根を意味しているが、これは残留する火花を『鱗粉』に見立てている為。見た目のイメージは操虫棍の爆破粉塵。

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