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第六十話 「それぞれの戦い(その二)」

(・▲・)「ジュリリィ(ジンオウガ、狩る……ジンオウガ、狩る……ジンオウガ、狩る……時々気分転換に激昂ラージャンを狩る……そんな毎日です)」

「ハハハハハッ!!!」

「ああもうっ、面倒!」



 狂笑の木霊する中、それを塗り潰すように数えきれないほどの剣閃と火花が吹き荒れる。

 切り結ぶ白銀と漆黒の刃は何十何百にも分裂したように見え、そしてそれ以上の数の斬痕を周囲へと刻んでいた。


 片や、巫女装束に身を包んだ狐の特徴を持つ少女、イズメ。

 片や、漆黒の刃を振るう狂戦士の如き青年、名を『アベル』と言った。


 手にした桜型の鍔を持つ打刀『恋情稲雀(れんじょういなすずめ)』を神速の剣閃と自身の奥義スキルによって得た蓮上の剛力を持って振るうイズメに対し、アベルは当初速度も膂力も遠く及ばず、控えめに言っても『辛うじて死んでいない』と表現するしかないほどに、一方的に切り刻まれていた。


 しかし、その時点であった圧倒的な力の差は、今やごく僅かな物となっていた。


 その原因はアベルが手に持つ大剣とは別に、自身の周囲に浮かべる六本の剣であり、それらは新たに呼び出した……いや、正確にはアベルが新たに創り出した(・・・・・)物であった。

 その六本の剣こそが、イズメがアベルを『面倒』と言った理由そのものである。


「シャァッ!!」

「っと! 『特殊能力付きの魔剣』をその場で生み出すとか、なんてインチキ!」


 横薙ぎに振るわれた大剣の一撃を弾いて逸らしながら、イズメが吐き捨てる。

 イズメが『面倒』と評したもの、アベルが持つ能力とは『様々な効果を持つ魔剣を瞬時に生成する』と言うものだった。


 速度で劣るなら、速度を上昇させる魔剣を。

 膂力で劣るなら、膂力を上昇させる魔剣を。

 容易く切り裂かれるなら、肉体をより頑強にする魔剣とダメージを回復し続ける魔剣を。


 イズメとの攻防で自身に足りないものを理解する度に、それらを埋め合わせる能力を持った魔剣を生成する事で、アベルはイズメと互角の勝負を演じていた。

 その対応力の高さに対して、イズメは『面倒だ』と感じたのだ。


 アベルの戦い方は、ある意味で真っ当な探索者の戦い方と酷似しているとも言えた。

 相手を能力を、特性を、戦い方を知る事で、それに対抗する為の装備や道具、対策を講じる。

 元からどんな相手にも対応出来るだけの手数の多さを持っている蓮上などは例外だが、凡その探索者であれば当たり前に行っているそれを、アベルは自身の異能によってその場その場で瞬時に実行することが出来た。


 加えて本人の戦闘センスも非常に高く、打ち合う度にイズメの剣筋を理解して、段々とイズメの刃を体に受ける頻度が減っていく。

 その学習能力の高さも含め、対峙しているイズメからすれば、アベルは本当に面倒極まる相手であった。




 ――だが、確かに『面倒』相手ではあるが、イズメにとってアベルは倒せない敵ではなかった。

 何故なら、いくら対応力や学習能力が高くとも、それを押し潰せるだけの手数と力がイズメにはあるからだ。




「『ライトニング・スパロウズ』! 『フリジット・ソーン』! 『グラビティ・プレッシャー』! 『八連鎌鼬』!」

「ッ!?」



 連続して複数の魔法と攻撃スキルが発動され、同時に多方向からアベルへと襲い掛かる。

 雷電の体を持つ数十羽の雀が狭い空間を埋め尽くすように飛び交い、周囲の床全てが氷に覆われたかと思うとそこから氷で出来た茨が伸びて蛇のように蠢き、それらに一瞬気を取られたアベルを押し潰すように超重力の鉄槌が振り下ろされた。

 重圧に拘束され、追い打ちをかける様に氷の茨に巻き付かれた下半身が凍結し始めたアベルへと、雷電の雀の群れが突撃し、その合間を縫うようにイズメの刀から放たれた八つの真空の刃が襲い掛かる。


 重圧と凍結、更に断続的に突っ込んで来る雷電の雀による麻痺(スタン)によりアベルはその場に釘付けにされ、一方的にイズメの攻撃を受け続けている。

 既にイズメはアベルが瀕死の重傷からでも直ぐに回復する事も、生半可なダメージを与えたところで勢いが衰えない事も知っている。

 故に攻撃の手を緩める事も無い。イズメはこのままアベルを磨り潰すように削り続け、何もさせずに消し炭にするつもりなのだ。


 しかし、アベルとてただ一方的にやられ続ける訳では無い。

 何故ならアベルの持つ異常性は魔剣を生み出す能力や頑丈な肉体だけでなく、その衰える事の無い闘争心と殺戮衝動もまた常軌を逸しているのだから。


「ガァアアアアアアッ!!!」

「まだ動けるの!?」


 獣の様な雄叫びと共にアベルは自身の体に巻き付く氷の茨を振り払い、続いてアベルの四方を囲う様に漆黒の壁が出現する。

 その壁の正体はアベルの能力によって作り出された巨大な剣だ。

 巨大過ぎて上下階層を突き抜け、剣腹しか視認出来ない為に壁にしか見えないその剣が、襲い来る雷電の雀たちを完全に防いでいた。


「っ、不味い!」


 だが、攻撃を防がれること以上に、新たな魔剣が生み出された事の方が不味かった。

 何故ならそれは、今までの攻撃に対する対抗手段をアベルが生み出したことに他ならないのだから。


「シィッ!!」

「ぐっ!?」


 足元の床を突き破って現れたアベルが、イズメへと大剣を突き出す。

 その攻撃を間一髪のけぞって回避したイズメは、回避しきれずほんの少し切り飛ばされた前髪の先を視認した事で、アベルの更なる特性を認識した。


(こいつ、神聖特性か神性特攻を持ってる!! しかも障壁を軽々貫いて来た! あの剣は防御能力貫通の効果があるって事?)


 イズメがこの結論に至ったのは、自身の奥義スキルの効果で蓮上の持つ奥義スキル『寵愛されし者(アマデウス)』を発動させているからだ。

 『寵愛されし者』の持つ二種類の防御能力、『防御神性』と『ダメージ軽減障壁』はそれぞれ原理の異なる防御能力であり、これらを破るにはそれぞれ別の方法が必要となる。

 故にこそ、その両方の手段をアベルが保有している事をイズメは看破した。


(通常攻撃でも役立つ防御能力貫通はともかく、神聖特性や神性特攻なんて私が防御神性を持っていると知っていなければまず付与しないはず。今までの攻防で私が防御神性を持っている事は徹底して隠して来た。ならこいつは元々神聖特性や防御神性を持っていた? ダンジョンのモンスターや探索者以外でそんな存在が居るなんて……)


 アベルの特性を看破はしたが、得られた情報に対してイズメは半信半疑だった。

 イズメにとってこの世ならざる摩訶不思議な存在と言うのは、基本的に全てダンジョンと関連している。

 例外として、以前から永長に聞いていた妖魔の存在があるが、それにしても本格的にイズメが妖魔に接触したのは今回が初めてだ。

 本来ダンジョン関連の存在くらいしか持っていない様な特殊能力を、ダンジョンと無関係であろう存在が所持している。

 自身の常識を飛び越えた状況に、さしものイズメも驚きを禁じ得なかった。


 なお、蓮上を始めとした赤松一族の非常識っぷりは考慮されていない。

 蓮上たちは例外過ぎて、咄嗟の比較対象として浮上しないのだ。



 驚き思考が若干乱れたイズメとは違い、自動で動く雷電の雀たちは床から現れたアベルに対し、稲に群がる雀の様に我先にと殺到する。

 だが、それらをアベルは避ける素振りも見せずに全て体で受け止めて見せた。

 新たに生み出された魔剣の能力により、雷電に対する高い耐性を獲得したのだ。

 更に床から伸びた氷の茨や超重力の重圧がアベルを襲うが、これもまた新たに得た耐性で意にも介さない。

 その光景にイズメは舌打ちしたい気分になったが、ぐっと堪えて冷静に思考を巡らせる。


(割と本気で容赦なく攻撃したけど、あれでも削り切れないかぁ。あれ以上の攻撃ってなると余波で周りに及ぼす被害も馬鹿にならないし、どうしたもんかなぁ……)


 切れる手札はまだある、しかしこの施設内には自分以外にも永長の仕事仲間である哲也らが居る。

 彼らがどれだけ離れてくれたかは判らないが、まだそれほど離れられては居ないだろう。

 周囲への被害を抑え、速攻で倒すことが出来ないのなら、哲也らの非難する時間を稼ぐために行動すべきだとイズメは判断した。


「――仕方ない、もうちょい踏ん張りますか」


 呟くイズメに対し、アベルは空いていた左手にもう一本の武器を生み出す。

 その形状は今までの剣と違い、分厚い刃を持つ武骨な斧の形をしていた。


「あ、剣以外も作れるんだ」

「シィヤァッ!!!」


 出来れば飛び道具は勘弁して欲しいなぁと願いつつ、イズメは大剣と斧の二刀流となったアベルと再び切り結んだ。

原作アベルからの強化ポイント。


1、武器を取り出すのではなく、生成する能力となっている。

2、使用する武器に、好きな能力を付与することが出来る。

3、戦っている相手の動きを学習し、更に自身の戦闘技能を高め続ける。



なんかつえぇ事しか書いてないぞ、アベル君。

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