第五十九話 「それぞれの戦い(その一)」
(・▲・)「ジュリリィ(鳴神上狼が安定して狩れるようになったので、早めの更新です。超心・体力の複合珠と挑戦・体力の複合珠が三つずつほちい)」
永長とセリオスが怪腕の青年『カイン』と邂逅していた頃、イズメたちもまた予期せぬ邂逅を果たしていた。
ただし、こちらは酷く暴力的な遭遇であったが。
◇
「っ! みんな伏せて!!」
そう叫びながら一行の先頭を歩いていたイズメが、飛び付いて後ろの三人押し倒す。
それに一拍遅れて『ギャリンッ』と硬い物が削られる音と共に火花が散り、その音に驚いた哲也らが見上げると、そこにはつい先ほどまで自分たちの胴体があった高さの壁が、横一文字に切り裂かれている光景だった。
もしイズメに助けられていなければ、自分たちは今頃どうなっていたか?
その光景を想像して青ざめる間も無く、再び空間内に『ギャリンッ』と言う音と共に火花が奔る。
だが、今度の音は途中で『キィンッ』という弾かれるような音に上書きされた。
いつの間にか刀を抜いていたイズメが、自分たちを纏めて切り裂こうという一閃を弾いたのだ。
更にイズメは攻撃を弾くに留まらず、流れるように相手へと反撃する。
「『エクスプロード・スワローズ』!」
イズメは右手に刀を持ったまま、空いた左手を前に突き出して魔法を唱えた。
発動させた魔法の名前は『エクスプロード・スワローズ』、その名の通り接触すると大爆発を起こす燕型の炎を生み出し、相手へと突撃させるという攻撃魔法だ。
この『エクスプロード・スワローズ』を始めとする動物を模したタイプの魔法は疑似的な意思を持ち、術者がそうさせずとも標的に向かって自動で向かって行くという特性を持っている。
壁に阻まれ未だに姿の見えない敵に対し、イズメは姿が見えずとも相手を攻撃出来る魔法を選択したのだ。
イズメによって生み出された炎の燕は全部で十羽。
それらはイズメの指示を待たずとも、己のやるべきことを理解して飛んで行く。
姿の見えない敵によって生み出された壁の亀裂、それらは相手の攻撃の壮絶さを物語るのと同時に、攻撃を行った張本人の位置を知らせる導でもあるのだ。
壁に刻まれた亀裂へと滑り込む様に、炎の燕たちは飛び込んで行く。
一拍の後、燕たちがの乗れの使命を果たした証か、連続して壁の向こう側から爆発音が鳴り響き、徐々に修復されつつある壁の亀裂を通じて爆炎の欠片がイズメたちの居る通路へと飛んで来た。
「みんなはここに居て! 私が仕留めて来る!」
「一人で行くつもりですか!? 危険過ぎます!!」
「私なら大丈夫! それよりみんなは離れてて! 多分守ってあげられる余裕は無いから!」
それだけ言うと、イズメはその先に敵がいるであろう目の前の壁を一瞬でバラバラに切り裂いて穴を空け、穴が塞がる前に中へと飛び込んだ。
爆発によって発生した炎と煙、それらの除く壁の穴の中に躊躇いなく飛び込んで行く小さな背中を、哲也たちは悔しそうに見ている事しか出来なかった。
◇
そうして、その場の誰もが失念していた。
その場に居たのが、イズメたち四人と壁の向こうの敵だけでは無い事を。
イズメに氷漬けにされ状態でこの場まで引き摺られて来た怪物が一体居る事を。
それは自身を呆気なく無力化したイズメが離れた事を感知し、ひっそりと行動を開始していた。
哲也、菊菜、圭介が無力さを感じながらイズメを見送る中、イズメによって作り出された氷の塊が、内側から徐々に徐々に溶かされていた。
◇
切り裂いた壁を通り抜け、最初にイズメの視界に飛び込んで来たのは、己の体を両断せんと迫る漆黒の刃だった。
その刃こそが、壁越しに自分たちを切り殺そうとした攻撃の正体だったのだろう。
直撃などすれば、小学生程度の小さなイズメの体を無惨に破壊し尽くすのは想像に難くない。
だが、
「邪魔!」
その一言と共に、イズメは抜き手も見せぬ神速の抜刀でもって漆黒の刃を迎え撃ち、いとも容易く切り落として見せた。
まさかあどけない少女がそのような芸当をしてくるとは思わなかったのか、ほんの少しだけ相手の動揺したような気配が感じられる。
その隙をイズメは見逃さず、一気に距離を詰めて煙に包まれた人影へ向けて攻撃をする。
「『剛震脚』!」
使用したのは奇しくも、『蓬莱鉱山』での迦具矢との戦いの際に『五色教典』が意識の無い蓮上の体を使って使用した格闘攻撃スキル『剛震脚』であった。
イズメも『五色教典』も、攻撃手段としてこのスキルを選択したのには理由がある。
『剛震脚』は蹴り足に振動を付加する事で破壊力を増すという原理の攻撃スキルだ。
その為、蓮上の持つ奥義スキル『天破激震の頂』の持つ衝撃波を操る能力――つまりは極めて高出力の振動を操るスキルと、非常に相性が良いのだ。
イズメでは防衛本能で動いた時の蓮上の様に、|物理法則を無視した挙動《TASムーブ》による超連撃こそ出来ない物の、オーバーキル気味の本家ほどで無くとも十二分に強大な威力を発揮出来る。
繰り出される攻撃の威力から、哲也らを守りながら相手を制圧して無力化するのは困難であると判断したイズメは、速攻で相手を撃滅する為に一切の手加減なく奥義スキルで強化された『剛震脚』の飛び蹴りを放った。
砲弾の様な勢いで突き進むイズメは、迎撃の為に振るわれた漆黒の刃を『天破激震の頂』の衝撃波を使って空中で更に加速する事で回避する。
充満する煙を吹き散らしながら、イズメの蹴り足が敵の胴体へ突き刺さらんと迫り、そして―――
ギンッ!
「ッ!」
敵との間に一瞬で現れた、新たな漆黒の刃を持つ武器によって防がれた。
現れた武器の形状は大剣、それも成人男性の体をすっぽり覆い隠せるような幅広の刀身を持つ特大剣であった。
漆黒の特大剣はイズメの蹴り足の着弾により粉々に砕け散ったが、それと引き換えにイズメを弾き返す事には成功していた。
敵が新たに見せた武器を瞬時に呼び出す能力を見て警戒し、宙返りで体勢を立て直しながら距離を取るイズメ。
油断なく見据える先には、イズメの蹴り足と漆黒の特大剣の接触の際発生した衝撃によって煙が吹き散らされたことにより、姿を現した敵が存在していた。
現れたのは漆黒の大剣を持つ、痩身長躯の青年であった。
年の頃は二十代後半と言った所だろうか?
伸ばしっぱなしと言った印象を受ける長い黒髪と灰色の瞳を持っており、服装は腰布を巻いただけの簡素な物で露出が多い。
また、露出した上半身にはこちらを睨み付ける悪魔の顔の様なタトゥーが刻まれていた。
だが、奇抜な外見以上に目を引くのは青年の目であった。
獰猛、冷酷、残忍。
凡そ好意的に受け取る事など不可能であろう、凶悪な目つきで青年は自分を見据えるイズメを見つめ返していた。
その瞳には、隠す気の無い殺意と暴力への狂的な喜びが浮かんでいた。
そんな青年の姿を見て、イズメは口に合わない物を口にした時の様な渋面を作りながら、舌を出して心底嫌そうに呟いた。
「うへぇ、蓮上とは正反対の絶対面倒臭いタイプじゃん。勘弁して欲しいなぁ」
目の前の相手は蓮上とは正反対の、殺戮に悦楽を感じるタイプの手合いだ。
それを察したイズメは、生理的嫌悪とまでは行かないまでも軽い苦手意識を相手に抱いていた。
そんなイズメの反応を見て、青年が何を思ったのかは判らない。
だが、一つだけはっきりしている事がある。
「ハ、ハハハハハハハハッッッ!!!」
「っ!」
青年はイズメを小さな少女ではなく、殺し殺される対等な敵、あるいは全霊で狩り尽くすべき獲物として認識しているという事だ。
獰猛な笑みを浮かべた青年は、高笑いを上げながら手にした漆黒の大剣でイズメへと切りかかった。
みんな大好きアベル君の登場です。
ちなみにですが原作よりも更に強化してあります。
強化内容がどういった物かはお楽しみに!




