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第五十五話 「探索と違和感」

(・▲・)「ジュリリィ……!?(もう直ぐブックマークが666になるって楽しみにしてたのに気づいたら超えてた!? 記念にガチャ回したりツイッターで何かつぶやいたりとかしたかったのに……ブックマークが増えたこと自体は喜ばしいけど、何とも言えない悔しさを味あわされた気分です、ハイ)」

 永長とセリオスの二名が崩落に巻き込まれてから十数分。

 巨大な爬虫類型の怪物によって破壊されたホールや通路は完全に修復されており、崩落によってできた穴をそのまま辿って二人の後を追うことは不可能となっていた。


 腐敗した人型の怪物に襲われ圭介を助けるために姿を現した狐耳の少女イズメ。

 彼女と自己紹介をした哲也、菊菜、圭介の三人は、イズメを含めた四人で下層へと落ちて行った永長とセリオスの二人を救出に向かうのだった。




 ◇




 ズリズリズリズリ―――



「――三人とも、疲れたり何処か調子が悪かったりした直ぐに言ってね。私が直ぐに魔法で治すから!」

「え、ええ。その時はお願いします、イズメちゃん」


 永長に代わり最後尾を歩くイズメが、朗らかな笑顔でいつでも頼って欲しいと主張する。

 先頭を歩く哲也は、若干引きつった笑顔でそう答えた。

 イズメへと振り返ったその視線は、イズメ自身ではなくその少し後方へと向いていた。



 ゴリゴリゴリゴリ―――



「菊菜ちゃんと圭介君はまだ痛い所とか無い? みんなが万全の状態で進める様に、私がしっかりサポートするからね!」

「う、うん。ありがとうイズメちゃん。私は大丈夫だよ……」

「俺も直して貰ったからな、普段よりも調子が良いくらいだけど……」

「うーん、まぁちょっとでも違和感とかあったら本当に直ぐに言ってね? 探索者ならまだしも、普通の人の目に見えない以上まで分かる訳じゃないから」


 続けて、先ほど回復魔法で治したばかりの菊菜と圭介にも声を掛けるイズメ。

 イズメは自分が回復魔法を使えようと、自分が本職の医者ほどの知識や経験がある訳では無いと正しく把握している為、万が一に備える意味でも少しでも自覚症状があれば教えて欲しいという意味で念を押しているのだ。

 また、「探索者ならまだしも」と言ったのは、探索者の場合は目に見えない怪我や病気であろうと、ステータスに『内出血』や『風邪』と言った具合にバッドステータスとして表示されるため、自覚症状が無くとも異常があれば直ぐに判るからである。


 そう言った事情は探索者では無い菊菜や圭介には判らなかったが、二人はそれについて特に突っ込む事は無かった。

 何故なら、イズメの言葉以上に注意を惹くものがあったからだ。



 ガリガリガリガリ―――



 なにか堅い物を引き摺る音が通路中に響く。

 先程から哲也ら三人の注意を惹くイズメが引き摺る物体。

 それについて、遂に耐えかねた哲也がイズメに質問した。


「……あのぉ、イズメちゃん?」

「うん? なぁに、哲也さん?」

それ(・・)、本当に持って行くんですか?」

「もちろん! 理由はどうあれ、いきなり攻撃して来たんだもん。ちゃあんと警察なりなんなりに突き出さないとね!」


 そう言ってイズメは自身が引き摺るもの、手に持ったロープの繋がる先にある物体に目を向ける。

 それは棺の様な大きさの氷の塊であり、その中には先ほど圭介を襲った人型の怪物が氷漬けにされていた。

 イズメは、自身が殴り倒した怪物を魔法で氷漬けにしてここまで引き摺って来たのだ。


「あ、いえ、出来れば警察ではなく我々に引き渡して欲しいのですが……」

「判ってるって! みんなこれ(妖魔)の専門家だもんね、任せるよ!」


 基本的に、妖魔の存在は公には隠されているものなので、イズメの警察に突き出すという発言に困った顔を浮かべる哲也。

 それに対し、イズメは特に難色を示す事も無く哲也ら平国機関に引き渡すと宣言した。


 哲也の語気が弱かったのは、もしイズメが引き渡しを拒否した場合、自分たちではそれを覆すのは難しいと考えたからだ。

 人型の怪物をイズメが撃退した際に、自分たちが全く有効打を与える事の出来なかった相手を、いとも容易く無力化してしまった手際や実力を見ての判断だった。

 だが幸いな事にイズメには自分の意見を強く押し通そうという考えは無い為、特に問題も無く機関への引き渡しが決定した。

 秘密組織とは言え、平国機関が国家機関である事を理解しているからの判断だ。


 ……まぁ、専門家に丸投げしているだけなのだが、専門知識の無い自分よりも正しい判断や対応をしてくれるだろうと思っての事だった。




 それはさておき、四人は通路を進みながら見つけた扉を開いては軽く中を物色しては先へ進むと言うのを繰り返していた。

 理由は単純で、先へ進む当てがないからである。


 理想を言えば最短最速で永長らの下へ行くのが最善だったが、崩落した箇所が塞がれてしまった以上、どこにあるのかも判らない下層部へと続く階段なりエレベーターなりを見付けなければならない。

 しかし、肝心のその階段の位置すら判らない為、四人はこうして施設内を歩き回りながら地図などこの施設に関する記録が無いかを探しているのである。


 気付けば四人での探索を介してから数時間、途中軽い食事を挟んだりもしつつ進んだ結果、四人は三階層ほど地下へと進んでいた。 

 だが、施設内を探索して行く内に、四人はその表情に等しく困惑の感情を浮かべていた。

 その感情は先へ進み新たな部屋を探索するごとに、どんどん強まって行った。



「……一体、どういう事なんでしょうか?」


 時間は午後五時を過ぎ、外では日が暮れ始めている。

 仮称『第四階層』の一室を全員で調べている中、遂に耐えかねたかのように哲也がそう口にした。

 その言葉をきっかけに全員が哲也へと振り返り、一行は自然と集まってそれぞれの所感を語りながら、状況を整理する為に軽く意見交換を始めた。


「いやぁ、流石におかしいよねぇ」

「うん、不自然過ぎると思う」

「もう何十部屋も見て来たけど、いくら何でもおかしすぎるぜ」

「みんな同じ意見みたいだね、僕も同感だよ」


 探索を続ける中で感じた違和感、それを全員が確信をもって共有していた。

 それを確認した哲也は、代表してその違和感の原因を口にした。



「――襲ってきた怪物たち、『オブジェクト』に関する情報は見つかりました。この施設が『財団』と言う組織によって運営されているオブジェクトらの収容施設である事も、発見した資料に書かれていたので判りました。ですが……本当にこの施設には大勢の職員が居て、実際に活動していたのでしょうか? 明らかに、人の居た痕跡(・・・・・・)が無さ過ぎる(・・・・・・)



 そう、全員に違和感を与えていたのは、見つかった資料やそこに書かれている情報に対して、実際にそれらの資料や情報を纏めたであろう人間の居た痕跡が全くなかったことだった。


 襲って来た怪物型の妖魔たち、それらが財団と言う組織によって収容されたオブジェクトと呼ばれる超常の存在であるという事は、発見した資料に書かれた情報によって判明した。

 だが、それらを扱っていたはずの財団の職員たちが居た痕跡、たとえば室内に置かれたデスクの上や引き出しの中に私物の類が一切無かったり、ゴミ箱の中身が汚れ一つ、塵一つ無いほどに綺麗だったり、給湯室の類にコーヒーや紅茶、菓子の類が一切無かったり等々……一言で言うなら人々の居た痕跡、『生活感』と呼ぶべきものが皆無だったのだ。

 職員が完全撤収するに当たって、痕跡となる物を全て消した後だからという考えも浮かんだが、明らかに重要書類であるはずのオブジェクトたちに関する資料がそのまま残されている事がそれを否定していた。

 その資料にしてもコピー用紙にプリントアウトされたものである為、書かれている文字から筆跡などを割り出せない仕方ないが、それにしてもどれも人の手に取られたことが無いかのように、汚れもヨレも全くないのが違和感を通り越して不気味さを感じさせた。


 加えて、人の姿をしていてもその実態は動物の狐であるイズメは、哲也ら人間たちが気付かなかったある点に気付いていた。


「この資料、それに今まで通って来た通路とか部屋とかもだけど、人の匂いが全然しない。それにこの資料、そもそも紙の匂いもインクの匂いもしないよ」

「紙とインクの匂いがしない、ですか?」

「うん、そうだよ。この資料、手触りなんかもフツーのコピー用紙と変わらないけど、そもそも紙ですらないのかも……?」


 そう言ってイズメは、手に持った資料の一部をビリビリと少し破る。

 イズメが破った箇所をじっと見つめていると、破られた資料は逆再生の様にくっ付き始め、数秒後には完全に元通りとなっていた。

 それは、施設に入ったばかりの時に哲也が見せた施設の壁が再生する光景と酷似していた。


「再生する……みんな、ちょっとじっとしてて!」

「イズメちゃん、何を!?」


 再生する資料を見たイズメは、三人にそう言いながら『収納』スキルから桜の花びらを象った鍔を持つ日本刀を取り出した。

 いきなりの行動に哲也ら三人が驚き固まっていると、イズメは少しだけ鞘から刀を引き出し、そのまま鞘にパチンと納めてしまう。

 すると―――



 ザザザザザザザザザザザンッッッ!!!



 次の瞬間、遅れて部屋中に幾つもの銀光が閃き、四人が座った椅子を除いて部屋中の物がズタズタに切り裂かれてしまった。

 抜刀から部屋中を切り裂き、納刀するまでの間があまりにも早過ぎた為、このような現象が起こったのだ。

 そんな漫画やアニメのような光景に三人は目を丸くしたが、数秒もすれば別の事に気付いて驚愕した。


「全部、再生し始めてる! 壁が元に戻った時と一緒だよ!!」

「なんだこれ、バラバラにされた机や棚なんかも再生しながら元の場所に戻り始めてる……」

「これは……施設だけでなく、その中の備品も特殊な力の影響下にあるという事でしょうか?」

「というより、全部が全部建物と同じ素材で出来てるんじゃないかな? 机とかを斬った時に金属の匂いなんか全然しなかったし、見た目と感触だけで中身は別物っぽいよ」



 イズメが語ったその事実に、一行はますます不気味な物を感じる。

 人が居ない、怪物が襲って来る、常識からはあまりにも乖離した情報が次々と見つかる。

 ただでさえ訳の判らない状況であったが今はそれ以上に、床も、壁も、天井も、机から椅子から棚から手に持っている資料まで。

 つい先ほどまで脅威も何も無いただそこにあるだけの無機質な存在であったそれらが、今は無害な物体に擬態する恐ろしい怪物か何かに見え始めていた。






 ~中国国内大規模ダンジョン『太陰星宮(たいいんせいきゅう)』~




 日本がゴールデンウィーク期間に入ったその日、中国内に幾つも存在する大規模ダンジョンの一つ、『太陰星宮』では不可思議な事が起こっていた。


 ダンジョン内に存在する者全て、探索者もモンスターも等しく全員がある時点を境に、糸の切れた人形の様に唐突に倒れ込み意識を失った。

 いや、正確に言えば、『同じ時間ダンジョン内に居た存在全てが、全く同時に昏睡状態に陥った』のだ。

 それらは三十分と経たない内にこれまた全く同時に目を覚まし、モンスターたちは何事も無かったかのように再び活動を始め、探索者たちは首を傾げながらも探索者活動に戻った。


 この事は後に、ダンジョンで起きた不思議な事件としてニュースに取り上げられたが、この事件によって死者はおろか怪我人の一人すら出ていなかった為、公的機関も本腰を入れて原因究明に乗り出す事は無く、やがて時の流れと共に次第に人々の記憶から忘れ去られて行った。


 ……ただ、



「ふわぁ~……ねみゅぃ……」



 この事件に関して誰にも知られていない、あるいは誰の気にも留められていない情報が一つある。

 それは、目を覚ました探索者らに混じってダンジョンから退出した、ダンジョンへの入場記録の無い少女が一人存在した事だ。

 もっとも、その少女の存在を認識していた者自体が、ただの一人もいなかったのだが。



「う~ん……あっちかなぁ……」



 若緑の長い髪を風になびかせながらそう呟いた少女の眠たげな視線は、正確に東の方向……日本へと向けられていた。

次回は永長ちゃんとセリオスの視点となります。

施設内の探索はクトゥルフTRPGの探索パートとかをイメージしていますが、あんまりそれっぽくないかなぁとも思う今日この頃。(ガッツリ書くとまた話の進みが遅くなるでな、すまんの)



え、最後に出て来た女の子は誰だって?

迦具矢ちゃんの姉妹(的な子)ですよ♪

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