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閑話 「首刈先生の狩猟講座」

(・▲・)「ジュリリィ(毎日更新停止してるのに、何故かブックマークがちょっとずつ増えている事に首を傾げつつ更新です。番外編の閑話は時系列を気にせず書けるから楽しいなぁ)」

 ――それは、青ヶ谷女子と緑河女子の二人が探索者を始めてからしばらくたったある日の事であった。




「使う武器が決まらない?」

「うん、そうなんだよ」

「なーんかどれもピンと来ないんっスよね~」

「あー……それは難しい問題でござるなぁ」




 放課後、もはやおなじみとなった管理局支部のカフェテリアに集まった俺と黄村は、青ヶ谷女子と緑河女子から相談を受けていた。

 相談の内容は、『メインで使用する武器が決まらない』と言うものだった。


 確かに大事な事だが、俺たちに聞かれてもなぁ……。



「つってもなぁ、大鎌何て癖のある武器使ってる俺が言うのもなんだけど、俺に言わせりゃ武器なんて状況や相手に応じて向き、不向きがあるんだから、複数種類使いこなせるようになっておいた方が良いとしか言えないぞ? おすすめは剣槍弓ナイフ、それプラス徒手格闘かな?」

「確かにそうなんだけど、複数選ぶとお金がね……」

「うぅ、安くは無いと思ってたっスけど、防具込みで一式買うとなると全然足りないっスよ~」

「あぁ~ね」


 購入費用の問題があったか、失念してた。

 俺の場合はどうしてたっけ? ……当初からゴブリンから奪った錆びた剣とかでも問題無く首刈で来てたな。


 俺だとあんまり参考にならんな、黄村に振ろう。


「黄村からは何か無いのか?」

「そうでござるなぁ……そもそもソロ活動が基本の首刈殿は一人で何でも出来る万能型でござるが、お二人の様にパーティーを組まれる場合は、それぞれで役割分担をして何かに特化するのもありだと思うでござる。実際拙者も普段はクランメンバーとパーティーを組んでいる故特化しているでござるし……」

「嘘つけ、お前も大概一人で何でも出来る万能型だろうが」

「ちーがーうーでーごーざーるー、拙者は忍者に特化している故、単独任務も出来るだけでごーざーるー」

「語気を伸ばすな鬱陶しい」

「あはは、二人とも仲良いね」

「ジョーくんもエーくんも、漫才は良いから何かしらアイデアを出して欲しいっス」

「「何も思いつかない(でござる)」」

「ずこーっ!?」


 ベターッとテーブルの上に突っ伏す緑河女子。

 その様子を、ここ最近顔なじみとなりつつあるウェイターさんが苦笑気味に眺めているのが見えた。

 すみませんね、どーも。


「ほら、緑河女子起きろ。行儀悪いぞ」

「ぶぇー、起こして欲しいっス~」

「ぶぇーってなんだ、ぶぇーって」


 しょうがないなぁと思いつつ、体面に座っている緑河女子を『収納』スキルから呼び出した『黒百足』で釣り上げて無理矢理起こす。

 人形劇かな?


「わわっ、人形劇みたいっス!」

「感想が被った」

「あれだね、鎖が無かったらキョトルミューティレーションされてるみたいだよね」

「おお、確かに。キャトられてるっぽいでござるなぁ」


 みんなマイペースだなぁ、俺もだけど。

 一応クラスメイトと放課後お茶しながらだべっているし、これも高校生らしい放課後の過ごし方なのか?

 何かがずれている気がしないでもない青春の一ページである。




 そんなこんなでだべりながら話し合った結果、とりあえずお手本として色々な武器を使って戦っている場面を二人に見せて、何かピンとくるものが無いか探してみようという事になった。


「お手本にするなら、やはり首刈殿の戦い方が良いと思うのでござるよ。ことモンスターを綺麗に倒す事において、首刈殿の右に出る者は居ないでござるからなぁ」

「つっても、俺が戦っている所って他の人から見えないんじゃなかったっけ?」

「そこはほら、備えあれば憂い無しと言う奴でござるよ」


 そう言って黄村は、この間取得したばかりの『収納』スキルから何かを取り出してテーブルの上に置いた。


「じゃーん! でござる。こんな事もあろうかと奮発して買った波柴コーポレーション製の最新型3Dマジックビデオカメラ『HSBX(ハシバックス)』でござるよ! これで撮影した映像を見返せば、拙者らでも首刈殿の動きを余さず見ることが出来るのでござる!!」

「波柴さんとこのカメラか……」


 テーブルに置かれたカメラ、普通のカメラと違いどこにもレンズの付いていない小さな黒い箱型のそれを見る。

 波柴コーポレーション製なら品質は信頼出来るが、良く買えたな。かなり高かっただろうに。


 『三次元マジックビデオカメラ』とは、波柴コーポレーションが得意とする魔法と科学、両方の技術を組み合わせて作られたマジックアイテムだ。

 名前に3Dと付く様に、このカメラは本体を中心に三百六十度全方位の映像を記録し、立体映像(ホログラム)として映写する事の出来る物だ。

 モンスターを狩る時の俺の動きは、肉眼で直接見ない限りは普通に見ることが出来るらしいので、これなら参考になる映像を撮影出来るだろう。


 波柴コーポレーションの名前は青ヶ谷女子と緑河女子も知っていたらしく、そこの最新型という事で二人は興味深げにカメラを眺めていた。


「おー! 波柴の最新型っスか!? CMで見た事あるっス!!」

「これ、かなり高かったんじゃない? 『収納』の呪文書(スペルスクロール)も買ったばかりなのに、こんな短期間で高い買い物をして大丈夫だったの?」

「問題無いでござる! 何せ半分は親父殿が費用を出しましたからな!」

「……それ、持って来ちゃって大丈夫なんっスか?」


 黄村の父親はカメラ趣味を持っている人で、家には馬鹿高い値段のカメラが沢山あるらしい。

 特にここ数年は波柴コーポレーションを始めとする魔導工学の技術を持つメーカーが作ったマジックカメラをとても気に入っており、そのカメラを持ってダンジョンに潜り、現実では考えられない様なファンタジー風景を撮影して回ったり、様々なモンスターを撮影するのがブームとなっているそうだ。

 その際は、毎回黄村も付き合わされていて、土日明けにその事を愚痴って来る事もある。


 黄村、お前気付いてないかもしれないけど、話を聞く限りお前自身も撮影を結構楽しんでいるぞ?

 子供の頃から玩具代わりにカメラを与えられていたらしいし、黄村の親父さん明らかに息子にも自分の趣味を覚えさせようとしていただろ。実際成功しているみたいだし。


 ……まぁ良いか、親の趣味に理解があるってのはそんなに悪い事じゃないだろうし、カメラ趣味があろうとなかろうと、こいつが根本的に忍者オタクである事に変わりないし。


「とにかく、俺がそれを持ってモンスターを狩ってくればいいのか?」

「話が速くて助かるでござる。設定の方はこちらでしておくので、首刈殿はカメラを持って適当に武器を変えながらモンスターを狩ってきていただければバッチリでござるよ」


 そう言って、黄村は嬉々としてカメラを弄り始めた。


 カメラ趣味の忍者か、諜報活動の一環と考えれば、カメラはある意味忍者向きの道具かも知れないな。

 何て事が思い浮かんだところで、黄村はカメラの設定を終えて俺に渡して来た。早いな。


「もう既に録画は始まっているでござるから、このまま行って帰ってくれば大丈夫でござるよ」

「了解、じゃぁちょっと行って来るよ」

「頑張って来てね、赤松君」

「頼むっスよぉ、ジョーくん!」

「任せとけって」



 手をひらひらと振って店を出る。


 さぁて、撮影されてるならある程度見栄えも気にした方が良いか。

 なら、久しぶりに披露しようじゃないか! 我が『首刈真拳百八の型』を!!



 ……まぁ、今適当に名前つけただけで、要するに全部首刈なんだけど。






 ◇






 大体三十分後、持っている武器全種での首刈を終えた俺は、カフェテリアへと戻って来た。


「おーい、戻ったぞー」

「おお、戻られましたか首刈殿」

「あ、お帰り赤松君」

「お帰りっス、ジョーくん」


 三人に出迎えられた俺は、持っていたカメラをテーブルに置いて黄村に返却した。

 もちろん、どこかしら壊したり汚したりなどはしていない。


「ほら、返すよ。ところで、これどこで再生するつもりなんだ? 店の中で視聴は出来んだろ?」

「それなら大丈夫だよ」

「ジョーくんが居ない間に、エーくんが支部の訓練室の一つを借りに行ってくれたっスからね」

「万事抜かり無し、でござる!」


 段取りが良くて助かるな。

 なら、早速見に行くか。


 そんなわけで、俺たちは会計を済ませてから黄村が借りた訓練室へと向かった。






「……よし、この辺りでござるね。では早速再生するでござるよ、ポチっと」


 訓練室の中心にパイプ椅子を置き、その上に乗せたカメラを黄村が操作する。

 すると部屋全体が一瞬で真っ暗となり、続いて青空と草原とその中心に立つ俺の姿が浮かび上がった。


 立体映像で自分自身の姿を見るって言うのは変な気分だな。

 後、立体映像とは思えないほど映像美は流石波柴コーポレーション製って感じだな。

 それほど広くは無い訓練室が、いきなり外に出たかのように広く感じる。


「お、始まるな……」


 カメラの性能に感心していると、立体映像の俺が動き出した。

 ここからの三十分間は、モンスターと遭遇する度に違う武器に取り換えての首刈の繰り返しだ。

 青ヶ谷女子と緑河女子が気に入る武器が見つかると良いのだが。




 ~視聴中~


 ・

 ・

 ・

 ・

 ・


 ~視聴終了~




「……で、どうだった?」


 記録された映像を見終わったところで二人に訊ねてみる。

 すると二人は、酷く微妙そうな顔をしていた。


「「いや、なに(っスか)あれ……?」」

「何って全部首刈だが……一応二人に合わせて高速戦闘しなかったけど、やっぱ初心者には難しかったか」

「難しいとかそう言う次元では無かったと思うのでござるが……全く参考にならんでござるよ」


 馬鹿な。

 探索者を始めたばかりの二人にも判り易い様に、一般人と同じスピードで動いてたのにどの辺が不味かったって言うんだ!?



「えっと、まず鎌とか剣とかでの戦いだけど、どうして空中で逆様になったまま首を刎ねてたの?」

「『天地逆転空中首刈』だな。上下逆の方が滞空時間が長いから、俺の奥義スキルの『空中両断殺法(キリングエアレイド)』が使い易いんだよ」


「ゴブリンの腕を掴んで投げ飛ばしながら首を刎ねてたのはなんっスか?」

「『一本背負い首刈』だな。こう、相手の腕を片腕で掴んで、投げ技の要領で背負う体勢になったらその場で跳んで、そのままもう片方の手に持った鎌で首を刈るんだよ。まぁ、こっちは返り血が背中にかかるから女子にはお勧め出来無いけど」


「大鎌に鎖を繋いで振り回してたのは何でござるか?」

「『超信地旋回首刈』だな。ゴブリンみたいな人型で同じような体格の集団に囲まれた時とかに使う。ちなみに超信地旋回して無いじゃんって思うだろうけど気にするな。単なる『回転首刈』とかより超信地旋回の方が格好良いんだよ。語感が」


「宙返りしながらキックで首を刎ねてたアレは?」

「『サマーソルト首刈キック』だな。あれはまぁ徒手格闘の一環って事で。地面に足をつけている相手を無理やり浮かび上がらせて空中で首刈する為に考えた技だよ」


「糸みたいに細くした鎖で空中に縛り上げてからそのまま首を刎ねてたのは何っスか?」

「『ストリングプレイスパイダーベイビー必殺仕置首刈』だな。糸とか鎖とかで釣り上げる分には『空中両断殺法』が適用されるから。糸使いの探索者って少ないけど一定数居るんだぞ? 一線で活躍している人たちはみんなトラップの名人だから、機会があれば話を聞いてみると良い。参考になるぞ?」


「森の中で狼の集団相手に乱反射しまくった魔法弾で首刈を決めてたのは何でござるか?」

「『全方位百連鎖首刈跳弾陣』だな。森の中みたいな障害物の多い場所や、洞窟みたいな閉所で集団に囲まれた時とかに使う。まぁアレは流石にオマケだから、銃が使えると便利! くらいの感覚で良いよ」



 他にも色々見せたんだが、特にみんなの印象に残っているのがそれらだったみたいだ。

 俺のお勧めは『エクストリームメテオインターセプションスリング首刈』とかだけど、流石にアレは『黒百足』の性能ありきの蛇足だからな。


 さて、それで二人は使いたい武器は決まったか?


「「参考にならないので、せめて人間に可能な動きを見せて下さい(っス)」」

「俺が人間じゃないみたいな言い方止めれ!」

「首刈殿の場合、人間というより『紅蓮の死神(Lv999)』とか、『(ことごと)(ほろ)ぼす首刈レッドジョー』とかでござるかなぁ……」


 俺の二つ名をモンスター名みたいに使うな!!

主人公の『相手が蓮上に注意を払うことが出来ないから目の前で攻撃されても気付けない』って特性、何か判り易い例えが無いかなぁって考えた所、思い浮かんだのがドラえもんの『石ころぼうし』でした。

よくよく考えると、ドラえもんのひみつ道具ってそこらのチート能力者よりずっとヤバイ効果のものが結構ありますよね。

時間停止を無制限に使える『ちょっと待っタイマー』とか、相手を最初から存在しなかったことに出来る『どくさいスイッチ』とか。


そう考えると、下手にインフレ起こしてる異能力バトルモノの世界より、ドラえもん世界のニ十二世紀の方がずっとヤバイですよね。

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