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第四十五話 「首刈と日女君を照らす空」

(・▲・)「ジュリリィ(本日二回目の更新です。ちなみに、正解は『ペリット』です)」

 迦具矢ちゃんと手を繋いで山を下りる途中、どっかに吹っ飛ばした『マテリアルディバイダー』を回収する。

 ってか何だこの地面? めっちゃ赤いんだが……青メカドラが赤メカドラになってる!?


「うっへー何コレ? 赤いヘドロ? 何でこんなもんが大量に……」

「ヘドロじゃないよ、蓮上の変な鳥の吐瀉物(ゲロ)だよ?」

「げろげろ?」

「ゲロゲロ」

「げこげこー」

「ゲコー?」


 赤い吐瀉物って何だよ、血反吐かよ?


 俺の変な鳥って言うと、『朱雀羽織』から生えてたでっかい鳥の頭の事か。

 鳥の吐瀉物……『ペリドット』だっけ?


「……まぁいいや、てか歩きにくいし邪魔だなこのペリドット」


 消えてくれねぇかなぁ? 何て軽く思うと、周囲の地面を赤く塗り替えていたヘドロが霞みの様に揺らいで消え去ってしまった。

 わぁすっごい。


「お、消えたな。気を利かせてくれたのかな?」


 少し後ろを振り返って『朱雀羽織』に目を向けるが、特に変わった様子は無い。

 また出て来てくれないかなぁ、あの鳥。絶対良いモフモフだと思うんだけどなぁ。



 そんな風に思いつつ、地面に突き刺さった『マテリアルディバイダー』を引き抜いて回収する。


 その横では、赤いヘドロが無くなり元の群青色取り戻したメカドラゴンに向けて、迦具矢ちゃんが「戻っておいで」と声を掛けていた。

 すると、半ば地面に沈んだままの状態で一切の反応を示さなかったメカドラゴンの目が光を放ち、ゆっくりと浮き上がったかと思うと、全身を折り畳む様にして丸くなり、完全な球状となる。

 更に球状となったメカドラゴンは、光を放ったかと思うとその体積をどんどん縮め、最終的にピンポン玉くらいのサイズになって迦具矢ちゃんの手元に飛んで来た。


「よしよし」


 ピンポン玉サイズの球メカドラを労うように撫でた迦具矢ちゃんは、それを纏っている紅い鎧の胸の中心部に持って行く。

 すると、群青色のその球はまるで最初からそうであったかのように鎧と完全に融合していた。


「? 蓮上、これ」

「ん? どうした?」


 そこで何かに気付いた迦具矢ちゃんは、俺に見せるように掌を上に向けて繋いでいない左手の方を前に真っ直ぐ伸ばす。

 と、次の瞬間伸ばした左手の掌の上に、どこかに消えていたはずの『神龍の角槍(デウスホーンランス)』が出現していた。

 この現れ方、『収納』スキルか。


「どっかに行ったと思ってたら、そんなところにあったのか」

「うん、『|龍の頸の珠《インペリシャブル・スフィア・リヴァイアサン》』が回収していたみたい」

「名前長いな。『イスリ』とかで良くないか?」


 あんまりにもけったいな名前なので俺がそう提案すると、名前の響きが気に入ったのか迦具矢ちゃんは直ぐに採用した。

 あるいは、迦具矢ちゃんも長くて呼びにくいと思っていたのかもしれない。


「イスリ、イスリ……うん、気に入った! これからはイスリって呼ぶ!」

「おう、そうか」


 本当に良く笑う子だなぁ、と思う。

 見ているこっちまで幸せな気分になれる素敵な笑顔だ。


 落とし物も回収して、その場に用の無くなった俺と迦具矢ちゃんは、お互いに他愛もない話をしながらゆったりと歩いて下山した。

 まぁ、本当にずっと歩きっぱなしだと、流石にイズメたちを待たせすぎるから途中で空を飛んだけど。


 そう言えば、いつの間にか呪文を唱えずとも『朱雀羽織』の形態変化が使えるようになっていたな。

 もしかしたらこれも、あの赤い鳥が気を利かせてくれているのかもしれない。

 後で何か、あの鳥用にお菓子でも用意しようかな?

 何となく、豆類が好きそうなイメージがあるから、炒り豆とか良いんじゃないだろうか。




 ◇




 楽しい! 嬉しい!! 幸せだ!!!



 そんな思いが心の中どころか、全身を駆け巡るように感じ、迦具矢はふわふわとした気分で山を下っていた。


 繋いだ手には、彼の左手がしっかりと握られている。

 右を見れば直ぐ近くに彼の顔があり、自分が嬉しくて笑うと、彼も釣られて笑顔になる。

 それが堪らなく嬉しくて楽しくて、隣に感じる彼の温もりが何よりも愛おしくて、迦具矢は目に映る世界の全てが輝いているように感じていた。


 こんなに穏やかで幸福な時間を過ごせるとは思わなかった。

 迦具矢は今この時がずっとずっと、永遠に続けばいいのにと心の底から思っていた。


 歩きながら、迦具矢と蓮上は色々の話をした。

 迦具矢の知らない色々な事を知っていて、それを教えてくれる蓮上はとてもすごい人だと迦具矢は思い、何だか自分まで誇らしい気分になるのを感じた。


「蓮上、家ってなに?」

「住処、って言うとちょっと味気ないかな? 俺の場合は、『自分が帰りたい場所』、もしくは『自分が帰らなきゃいけない場所』だと思っているよ」

「帰りたい場所……だったら、私の家は蓮上の隣!」

「はっはっは! 一緒に住むんだから、これからは俺の家が迦具矢ちゃんの家でもあるんだよ」


 そう言いながら、蓮上は迦具矢の頭を撫でて来る。

 迦具矢は、蓮上に頭を撫でられるのがとても好きだった。


 蓮上は迦具矢がする質問に答える度に、何かと迦具矢の頭を撫でる。

 それを学習した迦具矢は、蓮上に次々と質問を続けた。


「蓮上、山の外ってどんなとこ?」

「とっても広い場所だよ、一言では表せないくらい沢山のもので溢れている」

「蓮上はどこから来たの?」

「『七咲町』って言う街からだよ。どんな場所かは、行ってのお楽しみかな? 色々案内するよ」

「蓮上、この美味しいのはなに?」

「ペロペロキャンディーって言うお菓子だよ。単にキャンディーとか飴とかでも良いかな? 他にも美味しいお菓子は色々あるけど、食べる?」

「食べる!」




 青空の下、異なる赤を纏った二人が和やかに歩く。


 今でこそ幸せに満ちている幼き女神だが、山の外は幸せな事ばかりでは無い。


 寧ろ、外の世界には彼女を傷つけるものが多いのかもしれない。


 少なくとも彼女の隣を歩く男は、世界の過酷さもそこに住み人々の持つ醜い側面も知っている。


 それを承知の上で、男は彼女を守り抜く覚悟を決めたが、それでもなお彼女は世の不条理に晒されるのかもしれない。



 それでも、



「蓮上も食べる? おいしいよ!」

「ああ、一つ貰うよ」



 透き通るような青空は、共に歩む二人の未来を照らしていた。

現在四時半。もう無理、寝ます。連続更新は計画的に、ハッキリわかんだね。

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