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第四話 「魔導教典書士のお昼休み」

ハーメルンでやっている二次創作の方で宣伝したら、こっちもブックマークが一気に増えてた!

ちょっとだけ人気作家になったような気分で嬉しい。

 話している内にエンジンが掛かったのか、どんどんヒートアップする青ヶ谷女子だったが、途中でチャイムが鳴ったことで話が中断された。

 た、助かった……。


 と、思っていた時期が俺にもありましたが、現実は非情。

 時は流れ、お昼休みとなったところで、再び青ヶ谷女子と緑河女子が俺の机へと集まった。

 二人共、お弁当は何だな。俺もだよ。(だからなんだ)


 幸いと言って良いのか知らんが、黄村も二人が俺の席に集まったのを見て、自分のお昼を持って来てくれた。

 おかげで何とか女子二人の相手を一人でせずに済みそうだ。

 もしこれで俺を見捨てて他のクラスの姫樫弟の元へでも向かっていたら、割と本気で怨んでいたところだ。


 ……と言うか黄村よ、またお前はお昼コンビニのパンか? しょうがねえ、俺の弁当を分けてやるよ!


 ドンッ!


「黄村、それじゃあ足りんだろう? 俺の弁当分けてやるよ」

「おや、良いのでござるか? 首刈殿の料理は美味しいでござるからなぁ。では、ご相伴に与り候」

「わぁ、おっきいお弁当だね。机の半分くらいある……」

「しかもホッカホカっスね! これも探索者のスキルっスか?」

「ああ、収納ってスキルの効果だ」


 収納スキルは、ゲームに出て来るアイテムボックスだのインベントリだのと同じ様な効果を持つスキルで、異空間に物品を収納し、かつその状態を入れた瞬間の状態で保つことが出来る。

 今回の様にお弁当を収納すれば、出来立てほやほやの状態で食べられると言う訳だ。

 ちなみに、このお弁当は朝、朝食を作るのと一緒に俺自身が作った物である。


「赤松くんってこんなに一杯食べるんだね、知らなかったなぁ」

「大食漢って奴っスね」

「……いや、首刈殿の健啖ぶりは、こんな物ではござらんよ?」

「? それってどういうこと?」

「首刈殿、お見せして差し上げるでござる」

「お見せしてって、今出しても冷めるだけなんだけどなぁ」


 ドドンッ!


「え、更に二つ?」


 ドドドドンッ!!


「更に四つ追加されたっス!?」


 青ヶ谷女子と緑河女子が、俺が追加で取り出したお弁当箱を見て驚いている。

 机の上には、元々出していた分も含めて七つのお弁当箱が積み重なっていた。


「これが首刈殿の平均的なお弁当の量でござる! 人間限定なら、間違いなく町一番の大食いでござるな」

「そんな大げさな。俺の両親とかだって、これと同じかそれ以上に食べるぞ?」

「では町一番の大食い一家でござるな!」

「それは否定しない」

「否定しないんだ……」


 青ヶ谷女子が唖然とした様子でそう呟いている。

 実際俺の両親や妹だって、俺と同じかそれ以上に食べているから、大食い一家と言うのは純然たる事実だ。

 ちなみに先ほど黄村が人間に限定していたのは、俺以上に大食らいな俺のペットの事を黄村が知っているからだ。

 うちのコノハの胃袋は、割と冗談では無くブラックホール級である。ああ、今月も食費が(かさ)む……。


「ま、それは置いておいて、青ヶ谷女子と緑河女子も良かったら食べないか? いっぱいあるから、遠慮はいらないぞ?」

「いいの? じゃあお言葉に甘えて……」

「なら自分も遠慮なく!」


 周囲の机を移動させて、四つの机をくっつける形でそれぞれの昼食を広げる。

 意外な事に、青ヶ谷女子のお弁当は所謂キャラ弁で、緑河女子のお弁当は女性らしいヘルシーなメニューのお弁当であった。逆じゃないんだ。

 各々が座った机の上に昼食を広げる中、俺は出していたお弁当の内二つだけ残して、他を収納に仕舞い、一つは自分の机の上に、もう一つはくっつけた四つの机の中心で、皆が自由に取れるように置いた。


「「「「いただきます(っス)」」」」


 何となく四人で一緒に手を合わせて挨拶をしてから食べ始める。

 何だか小学生に戻ったような気分だな。


 早速青ヶ谷女子と緑河女子は、俺のお弁当から好きなおかずを取って口に運んでいた。

 そう言えば、自分の作った料理を家族以外の女子が食べるなんて、家庭科の授業以外無い経験だな。

 ちょっと緊張する。


「ん~、おいし~!」

「美味いっス! ジョーくんは料理上手っスね!」

「口に合ったようで何よりだよ」


 態度には出さず、内心で胸を撫で下ろす。

 料理は日常的にしているから自信はあったが、不味いなんて言われたりしたら流石にへこむからな。


 二人が美味しそうにパクパク食べている横で、黄村もしれっと俺が用意した予備の箸を使っておかずを食べていた。


「うむ、やはり首刈殿の作る唐揚げは最高でござるな! いくらでも食べられそうでござる」

「私はこの卵焼きが好きかなぁ。くどくない甘さで丁度良い」

「自分はこっちの春巻きが気に入ったっス! いやぁ、ジョーくんは将来良いお嫁さんになれそうっス!」

「それを言うならお婿さんではござらんか? 緑河殿」

「これだけ料理上手なら、男女関係無くモテそうってことっス! エーくんもそう思わないっすか?」


 エーくん、と言うのは黄村の渾名のようだな。下の名前英一郎だし。

 話を振られた黄村はと言うと、苦笑しながら首を振っていた。


「いやいや、拙者衆道の()は無いごく真っ当な青少年でありますからして」

「というか、こいつは好きな人居るからな。その人以外目に入らないんだろ。小学生時代からの初恋を追いかけ続けている訳だし」

「ちょっ、首刈殿!?」

「え、なになに? 黄村くんって、小学生の頃から初恋の人を一途に思い続けてるの? 素敵じゃない!」

「おお、純情男子っス! エーくん、見た目はモテそうなのに付き合っている人が居るって噂を全然聞かなかったのは、その可笑しな忍者喋りが原因じゃなかったんっスね!」

「可笑しっ!? ……まぁ、正直否定は出来ないでござるが」


 可笑しな喋り方と言われて否定出来なかった黄村が、がっくりと肩を落とす。

 自覚はあったんだな、初めて知ったよ。


「ねぇねぇ赤松くん、黄村くんが好きな人って聞いちゃっても良いかな?」

「良いぞ」

「即答でござるか!? そこはもうちょっとこう、拙者のプライベート的な物に配慮して頂く訳には……」

「いや、お前が知らないだけで、お前とあの人の事を知っている奴なら全員知っているぞ? この間だって、弟の方がいい加減さっさと告白しろよってぼやいてたし」

「!? マジでござるか!?」

「マジにござる」


 そう返すと、黄村はへなへなと崩れ落ちてしまった。

 俺も弟の方と同様、傍から見てて思うが、高校二年にもなったんだからさっさと告白しろよと思う。

 姉の方、アレ絶対待ってるぞ。


「うはぁ~、知らないのは自分たちだけで、周囲にはバレバレだったパターンっスか。ある意味ラブコメの王道っスね!」

「いや、こいつが好きな相手の方はもうとっくに察しているぞ?」

「え?」

「というか、その上でこいつから告って来るのを待っているみたいだし」

「えええ!?」

「そうなの!? でもそれって素敵だわ! 赤松くん、黄村くんを待って居るその人って誰なの?」


 正面に座る青ヶ谷女子が、やたらキラキラした目で訊ねて来る。

 隣の緑河女子も同様に興味津々な様子だ。

 一方で、黄村の方はと言うと、自分が相手を好きな事が相手にバレていた事とか、その上で自分が告白するのを待って居る事を知って、顔を真っ赤にして処理落ちしたみたいになっていた。


「自分も知りたいっス! 一体誰なんすか!?」

「この街で探索者を始めるなら、直ぐに知れると思うから話すが、黄村が好きな相手はこいつが所属している『姫樫堂和菓子団』って言うクランのリーダー、『姫樫(ひめがし) 綾乃(あやの)』さんだ。弟の『姫樫(ひめがし) (じゅん)』も含めて、三人は幼馴染なんだってさ」

「「へぇ~!!」」


 幼馴染と言う言葉に反応して、二人は更に目を輝かせる。

 ドルオタにしろ何にしろ、女子って恋バナ好きだね。

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