第四十二話 「首刈と蓬莱之女神(十)」
(・▲・)「ジュリリィーーっ!!(結構辛いけど、今日も八時に二話目の更新やったるどーーっ!!)」
はぇ、寝てた? ってかもう夜が明けてるじゃねぇか!
イズメの声で一気に目が覚めたけど、ついさっきまで自分が何してたか全然覚えてない。
夜明けって事は数時間は経ってるよな?
確か最後に記憶に残っているのは、迦具矢日女に胸をぶち抜かれた事だけなんだが……
今一状況が理解出来ていないが、とりあえず生きてて良かった。
完全に死んだと思ったからな。
まぁ、死ぬつもりは毛頭なかったけど。
内心胸を撫で下ろしていると、イズメの声が脳内に響いて来た。
『念話』スキルだな。
こんな状況でも、イズメの声を聴くと心が安らぐ。
『起きた? なら早めに帰って来てね。マミナが朝ご飯いっぱい作ってくれてるから』
『ああ、任せろ。今戦闘中だけど、さっさと片付けて帰るからさ』
『うん、頑張ってね!』
『応!』
イズメからの『念話』が切れる。
さあ、イズメから元気を貰ったしいっちょやるかぁ!
と、意気込んでいると、続けて波柴さんからも『念話』が繋がった。
いや、元々繋がって居たっぽいのか?
『赤松君! 聞こえますか!?』
『うぇ!? 聞こえてますけど……どうしたんですか? そんなに勢い込んで』
『ああ、良かった。もう一時間以上呼びかけていましたが、その間の赤松君は意識を失っていたみたいで反応が無かったので、気が気じゃなかったのですよ……』
『まぁじでぇ?』
ヤバイ、波柴さんに変な反応返しちゃったわ。
え、一時間以上? 本当に!?
いや、けど迦具矢日女に胸をぶち抜かれた時から、夜が明けだしている今の時間を考えると、普通にニ、三時間は経ってるのか……ヴぇぇ?
『意識が無い間も赤松君は戦い続けていたようですが、アレは一体……?』
『意識が無い間も? ……ああ、それなら『五色教典』が原因ですね、納得です』
『と言うと?』
『『五色教典』には俺が意識を失っている間に敵に襲われた場合、俺の体を操作して応戦する機能がついているんですよ。本来は寝込みを襲われた時とかの対策ですね』
俺の場合だと、学生の間は挑むつもりは無いが、複数の階層を持つ大規模ダンジョンを攻略する場合、泊りがけになる事は多々ある。
そんな時、最も気を付けなくちゃいけない事の一つが睡眠時の安全の確保だ。
『五色教典』の自動迎撃機能は、本来そういった場合に発揮されるのだが、今回は戦闘中に気を失ってしまった俺を守るために、その機能を発揮したようだ。
いやぁ、この機能をちゃんと組み込んでおいて良かった!
『そう言う事ですか……ですが、とてもそれだけとは思えませんね。何より、その背中の鳥の頭の説明がつきません』
『背中の鳥?』
波柴さんに言われて振り返る。
と、物凄い近くに虚ろな『赫』い眼孔を持つ鳥の頭が存在した。
わ、目が合った! ……って言うか、
「え、なにこれモフい……」
『ピヨッ!?』
あ、ヒュンッてなって引っ込んだ。
うーん、ちょっと残念。
『あ、なんか居ましたけど、引っ込んじゃいましたね』
『大丈夫なんですか? 私にはあの鳥が赤松君の体を乗っ取っているようにも感じられましたが……』
『大丈夫じゃないですかね? そんなに恐ろしい存在には感じられませんでしたし。寧ろとても親しみが湧くというか……何だろうなぁ? こう、毎晩抱き枕にしているかのような安心感がある、みたいな?』
『抱き枕……? もしかして赤松君のペットだったり?』
『いやぁ、ペットはイズメたちだけの筈なんですけどねぇ?』
不思議な感覚だ。
初めて見るはずなのに、どうも親しみが湧いて仕方が無い。
というか、モフりたくて仕方が無い。
あの鳥の抱き心地は最高だという確信が、何故か俺の中にあった。
どういう事なんだろうな?
いや、それを考えるのは後回しだ。それよりも!
『それより波柴さん! 迦具矢日女に対抗する何かしらは作れましたか!?』
俺がそう訊ねると、波柴さんは思い出したかのように少し慌てて答えた。
『と、そうでしたね。無事完成しましたよ、迦具矢日女への対抗装備が! 今すぐ転送しますから、そのまま使って下さい。魔力を込めれば起動できます!』
『了解です!』
俺がそう力強く答えると、目の前に完成した対抗装備が現れる。
それは、刃の無い大剣の様にも見えた。
外見は純白、刀身には黄金色の金属で蔦の模様が装飾されており、柄は三日月を思わせる形をしている。
か、カッコイイ……!!
右手で柄を掴むと、刀身の本来刃上がるべき部分からサメの歯の様な小さい黄金の刃が連なって出現し、更に魔力を込めるとそれが時計回りの高速回転を始めた……って、またチェーンソーじゃないか!?
これメインのデザイン決めたの波柴さんだろ! 『グランシェイカー』と言い、ほんとチェーンソー好きだなあの人!!
『どうです、素晴らしいデザインでしょう? 名付けて『超神話級万物解体機構 マテリアルディバイダー』です!』
『です! じゃないですよ、またチェーンソーじゃないですか。好きなんですか、チェーンソー?』
『好きか嫌いかで言えば大好物です。ロマンを感じるでしょう?』
『まぁ判りますけど』
『バール型とチェーンソー型でどちらにするか最後まで悩んだんですがねぇ? 色々なギミックを詰め込むに当たって、シンプルな構造のバール型より、こちらの方が相応しいと考えてのデザインですよ』
『はいはい、それじゃあ一旦集中する為に『念話』切りますよ?』
『ええ、赤松君。どうか御武運を!』
波柴さんとの『念話』を切り、右手に『マテリアルディバイダー』を、左手に『青龍宝刀』を持って改めて迦具矢日女に対峙する。
そう言えば、メカドラゴンに喰い千切られたはずの右手が繋がっているな。『神龍の角槍』はどこに行ったのだろうか?
まぁ良い。行方不明の槍なんかよりも先に、俺には確かめなければならない事がある。
あの時、俺の胸を貫いた迦具矢日女は確かに泣いていた。
何故、という疑問がある。
その疑問を抱えたまま迦具矢日女を倒す事等出来ない、という思いがあった。
故に、確かめねばならない。
迦具矢日女が流した涙の意味を。
その為には……
(邪魔だな、あのバイザー)
『目は口程に物を言う』
そんな言葉があるが、実際顔の見えない迦具矢日女気持ちは良く判らない。
それを知る為にも、邪魔なあのバイザーは叩き割らせて貰うとしよう。
いい加減その顔、拝ませて貰おうか?
「――さて、待たせたな」
『――』
イズメや波柴さんとの『念話』にかかった時間は十秒にも満たないが、それだけの間があれば迦具矢日女はいくらでも攻撃が出来たはずだ。
それをしなかったのは、警戒しての事か……それとも、もっと別の理由があっての事か……
「まぁ、どっちでもいいか。いい加減終わりにしよう」
『――』
俺が『マテリアルディバイダー』の切っ先を向けると、迦具矢日女も手にした機械剣の切っ先を俺へと向ける。
というか何あれ? 黄金の機械剣が真ん中から割れて、その間から純白の炎が沸き立っている?
滅茶苦茶格好良いな、おい!
相対する俺が持つ剣が白い刀身に黄金の刃や装飾を持って居るのも対比みたいで実に良い。
思えば、迦具矢日女と俺って配色に共通点が多いな。黒髪で赤い装備を纏っている所とかさ。
偶然にも今はお互いに機械剣を持って対峙している訳だし。
そんな事を考えながら、お互いに言葉も無く対峙する。
刻一刻と迦具矢日女の持つ機械剣から立ち昇る白の炎は輝きを増し、それに対抗するように魔力を注ぎ込んだ『マテリアルディバイダー』は黄金の刃の回転速度を上昇させ、金色の火花を散らす。
やがてお互いの得物の勢いが最高潮に達した瞬間、俺と迦具矢日女は音を置き去りにしてぶつかり合った!
次回、決着!




