第三十九話 「首刈と蓬莱之女神(七)」
(・▲・)「ジュリリ? ジュリリィ……(あれ、エルドリッチドラゴンリンク意外と行けそう? 手札のをカードを渓谷で捨てたり、トレーサーでフィールドのカード破壊するのが相性良さげ? きちんと詰めれば行けるかもしれん……というかこれ、初動セイファートにこだわらずに、ヴァレットエルドリッチにしても良いんじゃ……)」
警戒していなかった地面から何かがすり抜けて現れ、俺へと迫る。
気が付いた時にはもう、防御も回避も出来ない距離に近づかれていた。
「何っ!?」
がぁっ!? くそっ! 右腕を持ってかれた!!
いや、それよりも不味い! 一旦態勢を立てなお――っ
「ガハッ!?」
黄金の機械剣が俺の胸を貫いている。
片刃の幅広いその刀身は、明らかに俺の両肺と心臓を貫き、そのまま背中まで抜けて背骨を両断していた。
ああくそ、しくじった。
まさかこんな伏兵が隠されているとは……
呼吸停止
群青のデカいメカドラゴンが、『神龍の角槍』を握ったままの俺の右腕を咥えている。
俺の胸に機械剣を突き立てた迦具矢日女は……何だ? 泣いている、のか……?
心音停止
ああ、もう思考が纏まらない。
意識が薄れる、ここまでなのか……?
血流停止
――いいや、まだだ。
『寵愛されし者』の自己回復はまだ有効だ。『五色教典』で発動した継続回復魔法の効果もまだ続いている。
魔法でも何でも使って、何とか脳の機能停止さえ防げば、生き残れるはずだ。
心臓と肺が潰された程度で、俺は死なん……!
内臓機能停止
ああ、けど……もう魔法を使うのもままならなそうだ。
何とかこの機械剣を引き抜かなくちゃ自己回復もままならないのに、それをするだけの力が残っていない……
意識レベル低下
ああ、駄目だ。朝には帰るって言ったのに。
みんなとメリーで温泉に行くって約束したのに。
ライブだって、採掘だって、まだまだやる事は沢山あるのに……
生命機能、停止
まだだ、俺は……帰らなきゃ……………―――――
意識、喪失
…
……
……動
…起動
再起動
再起動、開始!
『寵愛されし者』による回復を継続。
『天破激震の頂』により、血流の強制再開を開始。
『黒百足』による損傷部分の応急封鎖、完了。
思考能力喪失中、回復は未明。
緊急処置として、『五色教典』による肉体の自動操作を開始。
エラー! 別系統による肉体操作への介入を確認!
精査開始……終了。
所有者の別意識、及び所有者の自己防衛本能の起動を確認。
『紅蓮覚醒』、『蒼穹深淵』、『黄金斜陽』、『漆黒庭園』、『白皙気功』を接続。
補助を開始、『五色教典』の全機能を持って外敵を撃滅せよ!!
◇
あア、死ヌのか?
漸ク、よウやット死ぬノカ?
忌々しイ化け物ガ、我が身ヲ籠に閉ジ込めタアノ怪物が。
何度も何度モ何度も何度も何度モ何度も何度モ何度モ何度も何度も何度モ何度モ何度モ何度も何度も何度も何度も何度モ何度モ何度モ何度モ何度も何度モ何度も何度も何度モ何度も何度も何度モ何度も何度モ何度も何度モ何度モ何度も何度モ何度も何度モ何度も何度も何度モ何度モ何度も何度モ―――
オレを殺シタあノ男が、漸く死んデクれルのカ?
アア、コれデ自由ニ為れル。
はハ、
ハハはハはははハハはハはははははハハハはハハはははハはハハハハはははハッ――――――!!!!!
……面白クモ無い。
何故オ前がこノ程度ヲ相手に死ヌ?
俺ヲ何度も殺シた者が、何故こンナにもアッサりと死ぬ?
不愉快ダ。
不愉快不愉快不愉快不愉快不愉快不愉快不愉快不愉快不愉快不愉快不愉快不愉快不愉快不愉快不愉快不愉快不愉快不愉快不愉快不愉快不愉快不愉快不愉快不愉快不愉快不愉快不愉快不愉快不愉快不愉快不愉快不愉快不愉快不愉快不愉快不愉快不愉快不愉快不愉快不愉快不愉快不愉快―――――不愉快極マリナい!!
ソンナにも、そンナにモ、赤子を殺ス事が嫌ダッたカ!!
帰ル場所がアルくセニ! 守ルベき者が他ニアるくセニ!!
クダラなイ。
くダラなイくだラナいクダらナいクだラナいくダらなイくダラないクだらナイくダらなイクだラなイくダラナいくダらナイクだラなイクダらなイくだラナイくダらなイクだらナいクダラないクだラなイくだラナイくダらなイクだらナいクダラナいクダらなイくダラないクだらなイ―――――ッ!!!!!
………殺ス。
おレが殺す。
アノ赤子を俺ガコロす。
コの男を殺スのハオレだ!
赤子風情ガ出シャバるナ!!
◇
……生きねばならない。
全ての生物がそうであるように、一個の命として全霊を尽くし、生き残らねばならない。
帰る場所がある、果たすべき約束がある、為すべき事がある。
故に、立ち塞がる全てを打ち砕き、生き延びねばならない。
たとえそれが老若男女人外であれ、邪悪であれ無垢であれ正義であれ悪であれ矜持に反す行いであれ禁忌を侵すのであれ苦痛と後悔を伴うのであれ―――――
生きるために、殺さねばならない。
故に、
故に、
ここからは、
ただ、殺めるのみである。
◇
生命の危機を前に、矜持は破棄される。
たとえ悔恨と慚愧の涙に溺れる事となろうとも、
生きなければならない理由がある。
その者の死を目前に、緋色の鳥は怒り狂う。
絶対者である紅の化身を、自らを籠の裡に閉じ込めた傑物。
それを殺す者は緋色の鳥自身以外に認めない為に。
五色の教典はそれらを補う。
最優先は所有者にして製造者である男の生存、
その為だけに、五つの教典は最適解を導き出す。
かくて、『赤松 蓮上』の肉体は再起動した。
本人の意思など関係無い。
各々の方向性は違えど、三つの意思が導き出す答えは一つ。
『生存の為に、外敵を撃滅する』
もはや蓮上の体は、その至上命令を実行する為だけの器となった。
『首刈レッドジョー 複合撃滅形態』
赤く、紅く、何処までも純粋に朱く……
真っ直ぐな殺意を持つ赫い暴虐が、今だ幼き女神に牙を剥いた!!
『複合撃滅形態』
蓮上自身の意識は無く、『生存本能』、『緋色の鳥』、『五色教典』の三つが蓮上を生かす為に協力して敵対者をぶっ殺そうとしている状態。
ぶっちゃけ殺戮性能だけなら蓮上の意識がある時の『通常攻撃が認識不能の即死攻撃』状態の方が強いが、単純な戦闘力なら生きるために一切の容赦と躊躇が無く、更に緋色の鳥も協力している現在の方が強い。
この状態になると首刈のこだわりも矜持も無く、あらゆる手段を持って脅威を排除する事で蓮上を生存させることにのみ特化する。




