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第三十六話 「首刈と蓬莱之女神(四)」

(・▲・)「ジュリィイイ!? ジュリリィ……(イヴとエルピィが逝ったぁ!? 私のドラゴンリンクがぁ!? ……ぐすん、レダメはエラッタして帰って来るけど、メインデッキが手足も翼も牙ももがれた気分だ。最近作者の中で波が来ているアダマシアとジェネレイドは特に影響なかったのがせめてもの救いか……)」

 防ぐ、避ける、斬られる、弾く、撃たれる、いなす、殴られる、蹴飛ばす、蹴られる、投げる、投げられる―――

 いや、もうホントボロボロだな。



 『蓬莱鉱山』の中心部に辿り着くまでに幾度も攻防を繰り広げて分かった事だが、奥義スキルなどの解析ほどのスピードでは無いが、迦具矢日女は俺の戦い方を学習しているらしい。

 現に、少し前まで剣で斬りかかるか、ビット兵器で射撃するかの二択だったのが、この短期間で攻撃のレパートリーに俺が使用した殴る、蹴る、投げるなどの行動が追加されていた。

 おかげでこっちはボコボコにされまくりましたとも。全部回復済みだけど。


 しっかしホント何だよこいつ、戦いの中で成長するとかどこの主人公だよ?

 これじゃぁ俺が悪者みたいじゃないか!?


 ……いきなり環境破壊兵器な聖剣砲をブッパする様な連中の仲間なら、悪役扱いされても仕方ないですね、はい。


 って、納得している場合じゃない。

 今は生き残るために戦わないと!




 ――けどなぁ、どうにもイマイチ()る気が起きないっつーか、心のエンジンが掛からない感じなんだよなぁ。

 まぁ、俺の場合は心のエンジン掛かるというか、心がどんどん凪いで行って最終的に最短で首を刎ねに行く感じだが。

 いくら人間に同然の姿とは言え、モンスターには違いないのに何故だ?




 迦具矢日女は、正直歴代最強と言って良いほどの強敵だ。

 体の傷こそ『寵愛されし者(アマデウス)』の自己回復や回復魔法などで全快しているが、今の迦具矢日女相手だと、現状俺は使い減りしないサンドバッグでしかない。


 いや、寧ろこのままでは遠くない内に回復量をダメージが上回ってそのまま順当に負けるだろう。

 はっきり言って、このまま戦い続けても朝日が昇る前に俺が死ぬ可能性が高い。


 だが、そんな状況だというのに、それでも俺は迦具矢日女を殺そうとは思えなかった。


 殺すだけなら方法はある。

 普段草刈ぐらいにしか使わない、俺にも原理の良く判らない剣技『禍蓮(カレン)』を使えば、防御も何も関係なく、迦具矢日女を塵に変えることが出来るだろう。


 けど、それを実行に移そうとは露ほども考えられなかった。

 波柴さんたちがいつ戻って来るのかも判らない、自分自身の死が刻一刻と近付いている状況だというのにだ。


 正直に言おう。俺は迦具矢日女を殺したくなかった。

 俺の中の何処かしらの部分が、彼女を殺してはいけないと警告していた。


 予感があったのだ。

 彼女を殺せば、俺はきっと酷く後悔する事になると。


 イズメ、マミナ、コノハ、メリー……彼女たちの元に、笑って帰ることが出来なくなると。

 それだけは絶対に、死んでも御免だった。

 だからこそ、俺はこうして不利なかつ不毛かつ勝算の無い戦いを続けているのだ。



(これで死んだら、皆怒るだろうなぁ。ま、死ぬつもり何て毛頭無いけど)



 迦具矢日女を殺したくないという気持ちが俺の体を鈍らせるなら、必ず皆の元へ帰るという気持ちが俺の体を突き動かしていた。

 負けられない理由があるのだから、何処までも足掻いてみせるとも!




 ◇




 可笑しな事に、こんな状況だからこそ普段は気にも留めない様なことにも、思いがけず気付かされたりしている。

 人生とは不可思議なものだなぁ。



(ありがとう、『神龍の角槍(デウスホーンランス)』くん。ぶっちゃけ要らねぇとか、正直使わないとか思っててごめんね! 君が居てくれて今物凄く助かってるよ!!)



 ズタボロにされながらも『蓬莱鉱山』の中心部、聖剣砲の直撃ですり鉢状に削られた場所で、俺は迦具矢日女を相手に空中戦を行いながらなんとか耐えている。

 そして俺の右手には破損してしまった『紅鋼』の代わりに、普段は『収納』スキルに仕舞いっぱなしの『神龍の角槍』が握られていた。


 この『神龍の角槍』、何が凄いってパッシブの能力で『防御能力貫通効果』を備えているのだ!

 普段なら相手がどれほど硬くても『紅鋼』で十分首を刎ねられたからすっかり忘れていたが、『紅鋼』の代わりに長柄の武器が欲しくて取り出した結果、その能力の有用性を確認させられた形だ。


 今の迦具矢日女は、俺からコピーした奥義スキルの効果も相まって、歴代最高クラスの防御性能を持っている。

 恐らく匹敵するのは、迦具矢日女以前の歴代最強の敵であった『骸剋龍夜刀神がいこくりゅうやとのかみ天破激震の頂インパルス・オブ・ザ・ワン』くらいだろう。


 その時の思い出も相まった今だから言えるが、もっと前からこの槍が欲しかった!

 今まで評価低くてホントにごめんね!!


 俺の振るった『神龍の角槍』は、『寵愛されし者(アマデウス)』の防御障壁、『天破激震の頂』の衝撃波の壁、そして身に纏う機械鎧。

 それら複数の要素による絶大な防御性能を持つ迦具矢日女を相手に、全ての防御能力を無視してダメージを与えている。

 しかも嬉しい誤算として、何と『神龍の角槍』を通して発動した魔法は迦具矢日女の『魔力攻撃無効』も貫通する事が判明した。


 そのおかげで、俺が有効的な攻撃手段を持つと知った迦具矢日女の動きが幾分慎重なものとなり、攻撃の頻度が若干下がった事で俺も少しだけ余裕を取り戻せていた。

 このまま『神龍の角槍』で牽制しつつ、時間を稼げば波柴さんたちが間に合ってくれるかな?


「ま、そう簡単には行かないよなっ!」

『――』


 迦具矢日女のビット兵器からの射撃を『朱雀羽織』の射撃で相殺しつつ、斬りかかって来た機械剣を左手の『青龍宝刀』でいなし、右手の『神龍の角槍』を機械剣を持つ迦具矢日女の腕に目掛けて振るう。

 それを迦具矢日女は飛行ユニットからの細かな連続噴射で距離を取って回避し、ビット兵器からの連続射撃を続けながら、再び俺を攻撃するタイミングを見計らっている。



 傍から見ると、状況はある程度拮抗しているように見えるが、実のところ余裕は少しずつ悪くなっていた。

 有効打が右手の『神龍の角槍』である以上、左手の『青龍宝刀』は相手の攻撃を防ぐ盾として使っているのだが……攻撃を受け止め続ける左手が、段々と痺れて来ていたのだ。


 迦具矢日女が俺の奥義スキルをコピーして、最も強化されたは間違いなく筋力値だ。

 俺以上のパワーで繰り出される攻撃を左手一本で受け止め続けている訳だから、ダメージが蓄積するのは当たり前の話であった。

 『寵愛されし者』の回復能力で多少マシだが、それでもじりじりと回復しきれないダメージが蓄積している。


 何とか防御の手数を増やさないとな。

 久しぶりに使うか。



「『爪甲展開』!!」



 その言葉に反応し、俺が両手両足に装備する『白虎爪甲(びゃっこそうこう)』の姿が変化する。

 それぞれに付属する爪の様な装飾が分離し、手と足の少し先の辺りで一定の距離を保ったまま浮遊を開始した。


 これこそが『白虎爪甲』の持つ能力、『爪甲展開』である。

 まぁ要は常時浮遊展開していて、肉体の延長として自由に操作できる鉤爪と言う訳だ。

 『朱雀羽織』の形態変化のバリエーションに比べたら大分地味だが、格闘戦のリーチを延長出来るという時点で有能だ。


「そらよっ!」

『――』


 今まで『青龍宝刀』で防いで来た迦具矢日女の機械剣による攻撃を、今度は展開した足の爪甲で蹴り弾く。

 爪甲は分離していても俺の筋力を反映されているが、分離している為に機械剣を受け止めても俺の手足に負担がかかる事が無い。

 そうでなくても左手と両足を防御に回せるため、左手一本に掛かっていた負担が大きく分散される。



 良し、まだ戦える。まだまだ耐えられる。

 このまま朝までだろうと付き合って貰うぞ、迦具矢日女!

 というかこのまま夜明けまで戦っても活路が見いだせないと俺の心が折れかねん。

 早くなんか作って皆!!

さて、そろそろ本格的に主人公を追い込むか……(歪んだ笑み)

主人公なら、もっともっと苦労して貰わんとなぁ!(注意、作者は主人公が嫌いな訳ではありません。ただ作者の心象風景がロスリックだったり、葦名だったりしてるだけです)



五種神宝(イクサノカンダカラ)・|火鼠の皮衣《アンチマジック・アブソーブヒート・アーマー》』


五つの武装で構成された『五種神宝』の一つ、身に纏っている紅蓮のパワードスーツ。

魔力攻撃への完全耐性と炎熱攻撃を吸収する能力を持っている。

吸収されたエネルギーは、最後の『五種神宝』である『龍の頸の珠』へと蓄積される。




久木(ひさぎ) 重蔵(じゅうぞう)


『久木建設』という小さな建設会社の社長。

大建築家グレート・アーキテクト』というジョブに就いており、運営している会社が『波柴コーポレーション』と提携している為、波柴親子ととても親しい。

既婚者ではあるが、妻はダンジョン出現以前に病死している。

『夏弦』が自身に好意を持っている事には気づいているが、歳の差や前妻の事などにより受け入れて良い物か思い悩んでいる。

また、『夏弦』との相性は非常に良い為、自覚出来るぐらいには惹かれている。さっさとくっつけ。

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