第三十四話 「首刈と蓬莱之女神(ニ)」
(・▲・)「ジュリリィ……(昨日の投稿、予約ミスって変な時間の投稿になってたなぁ……読者にとって一番読みやすい時間帯って何時くらいなんだろうか? まぁ普通に個人によって違って来るか……)」
迦具矢日女が更なる力を得た中、蓮上は急ぎ『念話』スキルを使って波柴らと連絡を取っていた。
『波柴さん! 曾我部さん! 原戸さん! 聞こえますか!? 聞こえてたら直ぐにダンジョンから全員で脱出して下さい!!』
「赤松君!? 一体何があったんです!?」
「蓮の字! 脱出たぁどういうことだ!?」
「蓮上!? どうした? そんなにヤバい相手なのか!?」
念話から伝わる蓮上の焦燥を感じ取り、波柴らにも動揺が走る。
だが、返答している余裕の無い蓮上は伝えるべきことを一方的に伝えた。
『返答する間も惜しいのでそのまま聞いて下さい! 襲って来た相手の名は『蓬莱之女神 迦具矢日女命・五種神宝』! パワードスーツの様な機械装備に身を包んだ、ほぼ人間の少女と同じ姿をした奥義個体ボスモンスターです! 詳細不明はですが、『五種神宝』は相手の持つ奥義スキルをコピーして修得する能力を持っています! 既に俺の奥義スキルが複数コピーされました! その中の一つに最近獲得した奥義スキル『寵愛されし者』も含まれていて、効果は全能力値上昇、HP・MPの高速回復、防御障壁の展開、防御神性の獲得です! 発動していない奥義スキルまではコピー出来ないと思われますが、パッシブの奥義スキルは全てアウトです! 他の探索者が来ると、その探索者の奥義スキルまでコピーされて手が付けられなくなる! 他にも纏っている機械鎧には魔力攻撃無効化能力が、持っている機械剣に武装破壊能力があります! 二度の接触で『紅鋼』が半壊したため、現在は『青龍宝刀』に『天破激震の頂』の衝撃波を纏わせて、直接接触しない様に対応しています! それと探索者の能力はコピー出来ても装備品の能力まではコピー出来ないようです! 『五色教典』はコピーされていません! スキルと魔法もコピーされる可能性が高いので、今は『五色教典』に記録したスキルと魔法のみで戦っています! 以上です、後はお願いします!』
念話であるが故に一息にそう伝えた蓮上は、返答も聞かずに念話を終了した。
蓮上が伝えて来たモンスターの情報。
それは歴戦の探索者である波柴らをしても驚嘆すべき内容だったが、緊急性が高いからこそ逆に冷静さを取り戻した彼らは、搭乗している聖剣砲塔戦車をすぐさま発進させ、ダンジョン外を目指しながら手短に意見を交わした。
「奥義スキルのコピーですか、かつてないほど厄介な敵のようですね」
「ああ、蓮の字があんだけ焦ってたとなると相当だぜ。ワシらじゃ分が悪過ぎる」
「魔力攻撃無効化能力、それで『黄昏の架け橋』を食らってもピンピンしてた訳か」
彼らが躊躇い無く撤退を選択したのには訳がある。
彼らは知っているのだ。
『十職人』と呼ばれる十人の中で、戦闘技能において最強なのは『赤松 蓮上』である事を。
その蓮上が撤退を勧告した時点で、自分たちでは足手纏いにしかならない状況であるのだと。
多脚戦車が進む中、蓮上は『朱雀羽織』を高速飛翔形態へと変化させて、山頂部がごっそり無くなった『蓬莱鉱山』の中心部を目指す。
それを追う迦具矢日女の飛行速度は蓮上の飛行速度を凌駕しており、真っ直ぐ飛ぶ蓮上に対し、迦具矢日女は空中で一方的に何度も攻撃を仕掛けていた。
飛行速度で大きく劣り、反撃もろくに出来ないまま攻撃を受け続けているのに、蓮上がそれでもなお地上での迎撃では無く、飛行して山の中心部を目指した理由。
それは紛れもなく、迦具矢日女の注意を引き付けて波柴たちを脱出させるためである。
それを理解した上で歯を食いしばりながら進む波柴たちは、最年少者に庇われる自分たちの不甲斐なさに憤りながらも、自分たちに出来る事を模索していた。
「――整理しましょう。現在赤松君は『五色教典』の能力で何とか持ち堪えていますが、既にパッシブの奥義スキル……主に基本能力値強化系をコピーされていますから、状況は刻一刻と不利になって行くでしょう」
「ああ、自前のスキルも魔法も使えず、『魔導教典』に記録されたものだけで戦っているんだからな」
「しかも魔力攻撃無効に武装破壊、自己回復に防御障壁と防御神性付きだと? 蓮上の『天破激震の頂』は衝撃波を防御に使う事も出来たはずだから、今の蓮上じゃ攻撃力が不足し過ぎて倒せないんじゃないか?」
「それだけではありません。現在判明している相手の能力は『奥義スキルのコピー』、『武装破壊』、『魔力攻撃無効』、『飛行能力』、それに蓮上君が防いでくれた長距離砲撃もありますが、まだまだ判明していない能力があってもおかしくはありません」
「加勢したくてもパッシブの奥義スキルを使って近づけば逆に相手を強化しちまうし、かと言って奥義スキルの強化無しで近付けば瞬殺されちまうだろうな」
「かと言って遠距離からの攻撃で支援しようにも、防御神性と魔力攻撃無効のせいで神聖特性付きの物理攻撃じゃないと通らないっと……無理じゃないか、これ?」
「……」
「……」
「……」
そこまで言って、三人は無言になる。
知り得た情報を言語化して再確認する事は、情報を整理する上で役に立つが、出た結論は『相手が非常識なまでに強大』である事と、『このままでは蓮上に勝ち目が無い』という希望も何も無い物だった。
この場に居る三人にも、ダンジョンの外に居る六人にも、この状況を打開出来る手札を持つ者は居ないのかもしれない。
……だが、
「……ま、何とかしましょう」
「そうだな、何とかするしかないか!」
「おう、旦那方の言う通りだ。何とかしようぜ!」
彼らの口から出て来たのは、具体的に何をどうこうするなどの内容の無い、酷くあやふやな言葉だった。
だが、彼らは根拠の無い希望的な観測で言っているのでは無い。
この場の三人で打開策を思いつかなくても、この場の三人で逆転の切り札を用意出来なくても、仲間たちとならそれらを用意出来ると確信しているのだ。
それは、彼らに『後はお願いします』と伝えた蓮上もまた一緒だった。
元より彼ら十人は、『戦う者』ではなく『作り出す者』たちだ。
足りないのなら補えば良い、必要なら用意すれば良い。
判明した情報を出来るだけ彼らに伝え、即座に脱出するようにと伝えた蓮上も含め、『十職人』が困難を前に到達する結論は常に一つだ。
勝ち目が無い? 打開策が無い? 目の前の困難に対処する為の手段が何も無い?
笑わせるな。
無ければ作れば良い!!!
蓬莱之女神何するものぞ!
我ら十人、如何なる艱難辛苦が降りかかろうと、その全てを踏破する為の手段を生み出す者なれば!
この程度の逆境、打ち砕けぬ道理無し!!
その思い、その矜持は、撤退する波柴たちの中でも、今まさに女神の暴威に耐えている蓮上の中でも、決して揺らぐ事は無かった。
「ダンジョンから脱出し次第、他の皆さんとも情報共有を行いましょう!」
「どうせ全員『収納』の中に素材をしこたま常備しているだろうからな、ありったけ吐き出そうぜ!!」
「んでもってオイラたち九人で作ろう、蓮上が勝つための武器を!!!」
……迦具矢日女は、ダンジョンに侵入した者達の内、最も強いと判断した相手、蓮上の撃滅を優先して行動した。
だが、その選択は間違いであった。
何故なら、女神が見逃した者達こそは、女神を滅ぼす毒矢を生み出せる者達であったからだ。
無敵の女神に対する、最高の職人たちの反撃が始まろうとしていた。
蓮上「時間稼ぐから何とかする方法用意して!」
波柴・曾我部・原戸「OK!」
日本人特有の「無ければ作れば良い」精神で無理ゲー女神に対抗しようとする職人集団の鏡。
逆転の可能性を探そうとするのではなく、逆転の手段を作ろうとする辺りが彼ららしいですね。
1%の可能性に賭けるのではなく、100%の手段を仲間が用意してくれると信じて戦っているのが、今の蓮上です。
……まぁ、蓮上が迦具矢ちゃんを殺す気なら、もっと早く終わってるんですけどね。
もっと苦しめ、レッドジョー(主人公に対する作者の言葉じゃない)
『五種神宝・蓬莱の玉枝』
五つの武装群で構成された『五種神宝』の一つ、装備している機械剣。
接触した物質(武器だけが対象ではない)の耐久値を削ることによって、凡そあらゆる物品を破壊することが出来る。
また、『レーヴァテイン』とは北欧神話の『巨人王スルト』の武器の名前であり、レーヴァテインの形状は剣だったり、槍だったり、杖だったり、棍棒だったり、矢だったり、枝だったりと決まった形を持たない為、その名を冠するこの武器は、形状変化の能力も持っている。
加えて、刀身には玉枝の玉の部分に当たるビット兵器が収納されており、それらを分離・展開して射撃戦を行う事も可能。
つまり『閃刀』であり『マルチロールシステム』でもある。
『夏弦 清美』
『夏弦木工店』を経営する二十代半ばの女性。『錬成木工職人』のジョブに就いている。
空冬、境の二人とは高校、大学を共にした友人同士で、在学中は演劇部に所属していた。
ジョブの特性柄、久木と共に仕事をする事も多く、年上で礼儀正しく頼もしい久木に淡い恋心を抱いている。
が、本人を目の前にすると緊張を誤魔化す為に仕事の話ばかりするので、全く進展していない事を空冬や境によく揶揄われている。
ここにもヘタレがまた一人。




