第三十三話 「首刈と蓬莱之女神(一)」
(・▲・)「ジュリリィ……(始めてから大した事も呟かずに放置気味だったツイッターに、初めてフォロワーが付きました。しかもなろうで活動している書籍化作家先生。世の中何が起こるか判らんもんだなぁ……)」
『蓬莱之女神 迦具矢日女命・五種神宝』
未来的な機械の武装に身を包む、口元しか顔が見えずとも絶世であると確信出来る黒髪の美少女の姿をしたモンスターだ。
俺も長くダンジョンに潜って来たが、ロボット型のモンスターと戦った事はあっても、機械装備を身に纏う限りなく人間に近い姿をしたモンスターと戦うのは初めてだ。
余りに人間に近過ぎて、本当にモンスターなのか? という疑問が湧いて来たが、俺自身の『鑑定』スキルにより判明した彼女の名前が、何よりも彼女をモンスターであると証明していた。
しかしそれでも、ここまで人間に近い姿のモンスターを殺してしまって良いのか?
そう俺が逡巡している間にも、迦具矢日女は右手に持った機械剣を振り上げて俺に襲い掛かって来た。
振り下ろされた機械剣を『紅鋼』の刃で受け止める。
大鎌はお世辞にも鍔迫り合いに向く武器とは言えないが、俺が最も愛用する武器こそがこの『紅鋼』だ。
武器形状の不利なんぞ、経験と技量で補え―――
ピシリッ
「What!?」
思わず英語で驚いてしまった。
『迦具矢日女』の機械剣と鍔迫り合っていた『紅鋼』の刃が、嫌な音を立てて罅割れてしまった。
あ、相棒ぉぉぉぉぉっ!?
「離れろっ!!」
『――』
機械剣の柄を狙って右足で思いっきり蹴飛ばして、無理矢理に迦具矢日女と距離を離す。
一旦距離が開いた事でちらりと紅鋼の刃を見ると、刃に入った罅が刃の中ほどまで広がっている。
これ以上振るえば完全に折れてしまうだろう。くそ、しくじった!
泣く泣く俺は『収納』へと紅鋼を仕舞い、代わりに右手に魔導拳銃『クイックリヴォルヴ』を、左手に打刀『青龍宝刀』を装備する。
これでも十分戦えるが、メイン武器が使えないと言うのは若干心もとないな。
しかし解せない。
紅鋼は『屍征獣』からドロップした青龍宝刀や、『神龍の角』からドロップした『神龍の角槍』に比べれば幾分格落ちする装備だが、長年愛用しているだけあって切れ味や頑丈さは折り紙付きである。
オリハルコンだって切断出来る刃が鍔迫り合っただけで砕けるなんて、いくら何でもおかしい……いや、そうか!
「『武装破壊』か」
稀にだが、接触した武装の耐久を大きく削って破壊するという能力を持ったモンスターやマジックアイテムが存在している。
多くの場合は体から酸を生成するモンスターなどだが、接触した武装を破壊する能力を持ったマジックアイテムの話も聞いた事がある。
確か、ソードブレイカー型のマジックアイテムだったか?
迦具矢日女の持つ機械剣にも、そう言った能力があるのだと考えれば、紅鋼が砕けたことにも十分説明がつく。
そう思い至った俺は青龍宝刀に『天破激震の頂』による衝撃波のコーティングを施し、刃が機械剣に直接接触しないよう保護しながら迦具矢日女の持つ機械剣へと『鑑定』スキルを発動させた。
「? 『鑑定』が通らない、か!」
『――』
再び切りかかって来た迦具矢日女の機械剣を左手の青龍宝刀で打ち払いながら、右手のクイックリヴォルヴで追撃に何発かの魔法弾を撃ち放つ。
が、放たれた魔法弾は迦具矢日女の纏う機械鎧に接触した瞬間に霧散して無力化されてしまった。
魔力攻撃の完全無効か? なるほど、それで多脚戦車の聖剣砲を受けても傷一つ無かったと言う訳か。
しかし、機械剣に『鑑定』スキルが通じないとは……『鑑定無効』の能力付きの武装か?
確かに鎧なんかも含めてかなり高位の装備である事が伺えるし、そもそも名前に『蓬莱之女神』とついているのだから、機械であれあの武装は神器の一種なのでは……待て!
神器、神器だと? 確か奴の奥義スキルの名前は『五種神宝』だったはずだ!
五種神宝、五つの宝、ならばの武装はそもそも――!!
「物品の姿をした奥義スキルなんて初めて見た、ぞっと!」
『――』
振るわれた機械剣を青龍宝刀で絡め取る様にして跳ね上げる。
『かぐや姫』と『五つの宝』と言えば、『竹取物語』でかぐや姫が五人の求婚者に結婚の条件として持ってくるようにと言った五つの秘宝。
すなわち『蓬莱の玉枝』、『龍の頸の珠』、『火鼠の皮衣』、『燕の子安貝』、『仏の御石の鉢』の五つのことだ。
もし迦具矢日女の奥義スキル『五種神宝』が、その五つの宝に準えた五種類の装備その物であるのなら、迦具矢日女の持つ機械剣や鎧などがそれに当たると思われる。
あの赤い機械鎧は十中八九、『火鼠の皮衣』に相当するのだろう。
そして黄金の機械剣は『蓬莱の玉枝』に相当すると思われる。
玉枝ならその辺に生えてた奴使えばいいじゃねーか、今は皆吹き飛んだけど。
何でそんなにメカメカしいんだよとか、蓬莱なんだから仙人っぽさを出すか、かぐや姫なんだから平安貴族のお姫様っぽさ出せよとか、言いたい事はあるが言っても仕方ないか。
まぁ良い、現段階で打ち合った感じ、武装破壊能力や魔力攻撃無効は厄介だが、対処出来ない相手じゃない。
あれだけ容姿が人間に近いと首刈がし難くてしょうがないが、まぁ殺すかどうかはとりあえず捕まえて無力化してから考えればいいか。
俺が楽観的にそう考えていると、その考えを嘲笑うかのように先程から無言だった迦具矢日女が言葉を……いや、迦具矢日女の装備するメカメカしいバイザーから機械音声が聞こえて来た。
『――対象ノ一部情報ノ収集・解析ヲ完了。奥義スキル『剛力無双の極み』、『怪力乱神の極意』、『霊気拡張』、『匠の手』、『疾風怒濤』、『寵愛されし者』、『天破激震の頂』ノ適用ヲ開始』
「……おい待て今何つったぁ!?」
『殲滅開始――』
迦具矢日女の放つ圧力が跳ね上がる。
先程まで余裕をもって対処出来ていた黄金の斬撃は、視認が困難なほどの速度で襲い掛かって来た!
『五種神宝・|仏の御石の鉢《アナライズ・オペレーション・アタッチメント》』
五つの武装群で構成された『五種神宝』の一つ、装備しているバイザー。
対象の能力(スキルや魔法、奥義スキルなど)を解析し、装備者である迦具矢日女にその能力をダウンロードする。(要はコピー、もしくはラーニング能力)
また、対象の行動の解析・演算により未来予知に近い正確さで装備者の戦闘補助を行う。(機械的な補助である為、蓮上の生物に攻撃を認識されない特性を無効化している)
対レッドジョー用決戦スキル第一弾。
蓮上の持つ奥義スキルをコピーする事により、元々のボスモンスターとしての高い能力値を持つ迦具矢日女のステータスを、蓮上を圧倒するほどに強化する。
また、攻撃に一切の殺意も害意も乗らない事で、相手が脅威と認識出来ずに攻撃を無防備に受けてしまうという蓮上の特性も、機械的なオペレーションアシストで無効化している。
『空冬 織姫』
ブティック『ベガ』を経営する二十代半ばの女性。
『魔導服飾職人』のジョブに就き、元々コスプレ衣装を自作する事を趣味にしていた為『服飾職人』ジョブの道に進んだ。
仕事としても日々沢山の服飾系アイテムを作成しているが、元々趣味であった為にモチベーションによっては何もしなかったり、新たなインスピレーションを求めてフラフラ出掛ける事もある。
なお、高確率で蓮上が学校に行っている平日の午前中から夕方前にかけて、リアルケモ耳美少女たちであるイズメたちを愛でるために蓮上の家にお邪魔している。
そしてその度にイズメたちの服が増えている。




