第二十八話 「首刈と野生のチート探索者」
(・▲・)「ジュリリィ(チート探索者とかもこの作品の世界には居るから出したけど、正直亞虎と蘭子の邪神コンビに比べたらインパクト薄いよなぁ。というかそもそも人類最強格のバグ存在であるローTASお父さんとか居るし)」
波柴さんの用意してくれた車(リムジンだった!)に揺られること数分、『蓬莱鉱山』の出現場所に着くと、そこには既に大勢の人々が集まっていた。
って言うか、明らかに探索者じゃない人間も混じっているな。
なんかでっかいカメラとか持ってるけど……え、もしかしてテレビ局?
「……」
「ん? どうした蓮の字?」
無言で『朱雀羽織』のフードを深く被り直すと、曾我部さんが訝しんで来た。
いや、だって。
「いやなんか、人いっぱいいますし……カメラとかも回ってるし……」
「はっはっは! 天下の『首刈レッドジョー』がカメラを気にするのか!?」
「いやぁ、だって俺基本人見知りですから」
「物騒な人見知りも居たもんだな!」
何が面白いのか、曾我部さんはげらげら笑いながらバシバシと背中を叩いて来た。
まぁ乱暴に叩かれたところで、奥義スキルである『寵愛されし者』の効果でノーダメージなんだが。
俺が居心地の悪さから気配を消してコソコソしていると、波柴さんが前へ出て既に集まっている人の中で明らかに探索者では無い、スーツ姿の年配の男性へと話しかけていた。
「こんばんは、町長さん。今回は色々と手を回して貰って助かりましたよ」
「いえいえ、波柴さんには日頃からお世話になっていますから、このくらいお安い御用ですよ。この後は予定通りで構いませんか?」
「ええ、お願いします」
どうやら話している相手は、『蓬莱鉱山』が出現するこの町の町長であるらしい。
話から察するに、波柴さんは俺たちがスムーズに採掘出来る様に事前に色々と手を回してくれていたようだ。
こういう事前の段取りがしっかりしてるところ、見習って行きたい。
波柴さんと町長さんの会話を横で聞いていると、事前にどんな取り決めがあったのかが判った。
俺たち十人による採掘作業は、とにかく大規模で派手だ。
これに他の探索者や観光の一般人が巻き込まれたら一溜りも無い。(『蓬莱鉱山』は山頂にポップするボスモンスター以外のモンスターは出現しない為、探索者では無い一般人も安全に観光をすることが出来る)
その為、事前に前年作製した『蓬莱鉱山』の地図を使って、俺たち十人が山のどのへんで採掘するかや、他の探索者たちが使うルートの決定、それに伴って誘導の為の警備員の配置を波柴さんと町長さんの間で決めてくれていたらしい。
普通は俺を含め波柴さん以外の九人も事前に話し合っておくべきなのだろうが……何せ俺たちが使用する工具『超弩級山岳解体機構 グランシェイカー』を使っての採掘は大雑把に過ぎるため、「大体この辺には近づかない様に」とかの雑な指示でも十分なのだ。
というか、それ以上に細かい運用は出来ない。十メートル、二十メートルが誤差に感じる様な道具でどうしろと?
ともかく、俺たちが覚えておけばいい事は三つ。
一つ、『採掘は山頂付近から指示された方向に真っ直ぐ行う』。
二つ、『誘導灯を持っている警備員には近づかない』。
三つ、『他の探索者に遭遇した場合は、一旦採掘を止めて警備員の元に案内する』。
以上である。
本当は事前に俺たちも町長さんの話し合いに参加しておくべきなんだけどなぁ。
俺含め、みんな何かしら忙しくて、事前準備は全て波柴さんに丸投げする形になってしまった。
後で改めてお礼を言っておかないと。
益々波柴さんへの尊敬の念を強めていると、他の探索者たちの集団から突如不穏な気配を感じた。
この感覚は―――
「――そこか」
「うわぁっ!?」
「きゃっ、なに!?」
「『亮二』くん!?」
「痛っつつ、いきなりな「動くな」っ!?」
不穏な気配の元凶へと伸縮自在の影の鎖『黒百足』を振るって、その主を引き摺り倒す。
更に相手が動揺している内に近づいて、ホルスターから引き抜いた魔導拳銃『クイックリヴォルヴ』の銃口を額に付きつけて警告した。
やれやれ、危ない危ない。
「なっ、なんっ……!?」
「誰よ! って、首刈レッドジョー!?」
「止めて下さい! 亮二くんに乱暴しないで!」
銃を突き付けている相手の名前は『亮二』と言うらしい。
見れば、俺と同じ高校生探索者であるようだ。
仲間であるらしい同年代の少女二人が騒いでいるが、今は無視だ。
先にこの亮二くんとやらに忠告しておかないと、最悪命に関わるからな。
「……亮二くんとやら、先に万が一誤解があってのことかもしれないから確認しておくが、君……今俺たちに対して『ステータス鑑定』スキルを使おうとしたな?」
「っ!?」
「ああ、答えなくていい。その反応だけで十分だ」
俺の指摘は図星だったようで、亮二くんは明らかに狼狽えた様子を見せる。
『ステータス鑑定』スキルは、『鑑定』スキルとはまた違う超がつくほどのレアスキルであり、所有している者は非常に少ない。
その効果は、見た相手のステータス情報……『基本能力値』に所持している『スキル』、及び『奥義スキル』や修得している『魔法』を看破すると言うものだ。
レアスキルだけあって非常に強力な効果のスキルだが……普通に考えれば判るが、ステータス情報は個人情報であり、無断でその情報を知るのは犯罪行為だ。
まぁ、『ステータス鑑定』スキルの保有者が極端に少ない為、一般にはあまり知られていないルールだが。
それに、探索者の中には『ステータス鑑定』スキルに対する対抗手段を持っている者も存在している。
実際俺たちがそうだ。
もし俺が止めず、亮二くんが『ステータス鑑定』を俺たちに使っていた場合、亮二くんは俺たち十人がそれぞれ用意している対抗手段……大体が解呪の困難な呪詛などを一人で受けて、かなり悲惨な目に遭っていた事だろう。
その事を俺は、亮二くんとその仲間二人にも判り易いように、懇切丁寧に説明した。
「――と言う訳で、あのままだと君がとんでもない目に遭っていた訳だ。俺の場合は、『ステータス鑑定』へのカウンターに『五感喪失』の呪詛を用意していたから、丸一週間は目も耳も鼻も舌も肌も利かなくなってたんだぞ?」
「本っっっ当に、すみませんでしたっ!!」
おお、話を理解した途端土下座するような勢いで謝罪して来るとは……思ったより聞き分けが良いな。
既に突き付けていた拳銃はホルスターに戻してある。
亮二くんの仲間の女の子二人も、俺の話を理解して一緒に謝って来た。
「うちのバカが、本当にすみませんでした!!」
「本当にごめんなさい!! それから、ありがとうございます。亮二くんが大変な事になる前に教えて頂いて」
「判ってくれたなら、それで良いさ」
うむうむ、素直に謝れるのは良い事だ。
以前似たような事を仕出かした相手に同じことを言ったら、逆上して殴りかかってきたりしたからな。
鳩尾にボディーブローを叩きこんで黙らせたが。
「本当にすみません。おれ、トップの探索者がどんなステータスをしているのか気になって……」
「まぁ、『ステータス鑑定』のスキルを持ってたら、当然誘惑にかられるよな。けど気を付けろよ? 俺の仕込んでる呪詛はまだ優しい方だけど、社会人組の用意している呪詛とか、かなりえげつないからな?」
「はい、肝に銘じます……ちなみに、どんな呪詛何ですか?」
五感が喪失する俺の呪詛の恐ろしさを正しく認識出来ているらしい亮二くんが、怖がりながらもそう聞いて来た。
怖いもの見たさって感じかな?
まぁけど、紫秋さんの呪詛の話を聞いたら、もう二度と不用意に『ステータス鑑定』を使おうとは考えないであろう。
何せ、男なら誰にとっても恐ろしいであろう呪詛だからな。
「実際に見た事は無いんだが……女性陣の一人が仕込んでる呪詛の中に、男を不能にする呪詛があるらしい。しかも永久に」
「……マジっすか?」
「マジです」
亮二くんの目を真っ直ぐ見つめてそう返すと、亮二くんは青ざめながらも「もう二度としません、絶対に!」と宣言した。
まぁそうなるよな。
俺だって、この歳でEDは嫌だからなぁ。
亮二くんはなろう作品によく居る、自分だけ利用出来るボーナスダンジョンでレベルを爆上げしつつ、ドロップの魔法書、技能書で強化しまくったタイプのチート探索者です。
自宅のタンスだの、引き出しだの、クローゼットだのにダンジョンが出現したってパターンが、結構存在してるんですよ。
この作品のチート探索者たちは、それを秘匿した上で個人利用しているんですが、これってこの作品の世界観だと導火線に火が付いているような、かなり危険な状況なんですよねぇ。(ヒント、EXモンスター)
なお、亮二くんのレベルは900超えですが、基本能力値は全て五桁に届いていません。
基本能力値に関してだけでなく、この世界のステータスってレベルやスキルよりも奥義スキルの方が重要なんですよね。
同じ三千打点でも、バニラの青眼よりも、なんかつえー効果しか持ってないドラグーンの方が強いのですよ。
『波柴 砕牙』
波柴コーポレーション前社長にして、『十職人』の実質的なリーダー。
『魔導機械技師』のジョブに就く事からも判る様に、魔法技術と機械工学を合わせた『魔導工学』の第一人者。
誰よりも早くダンジョン産の素材や魔法技術を利用した工学技術のノウハウを確立したことにより、隠居していたにもかかわらず、それまで中堅程度だった自社の規模をダンジョン出現後の数年で日本屈指のものに発展させた人。
引退した前社長がこれだけの活躍をすると、受け継いだ現社長である息子がコンプレックス抱えそうだが、息子も息子で父親以上の対人交渉能力を持っている為、コンプレックスとかは一切持っていない。
というか、父と息子で倍プッシュした結果が、今の波柴コーポレーションである。




