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第二十四話 「『あいつシマエナガの話になると急に早口になるよな?』系首刈」

(・▲・)「ジュリリィ」

 平日の五日間があっという間に過ぎ、気付けば土曜。

 今日はお祖父ちゃんに頼まれていたアパートの除草や掃除の為に来ていたのだが。



「……で、何で三人とも居るんだ?」

「いやぁ、横で話を聞いてござったし、折角だから拙者も何か手伝おうと思いましてな」

「私たちは永長ちゃんにお呼ばれしたんだよ。良かったら遊びに来ませんか? って」

「『シュガー・ポップ』のCDやライブDVDもいっぱい持って来たんス! ……けど、」


 大きな紙袋を掲げてそう言った緑河女子が、途中で言葉を詰まらせる。

 その視線は、メリーの住むアパート『赤蓮荘(あかはすそう)』の建物に向いていた。

 視線の先にあるのは、築うん十年経ってそうな感じの、古びた木造アパートである。


「なんつーか、古風なアパートっスねぇ……」

「素直にボロいって言ってくれて構わないぞ? 俺もそう思うし」

「あ、あはは……」


 俺の言葉に青ヶ谷女子が反応に困ったように笑っている。

 まぁ、そんな反応になるよなぁ。


 お祖父ちゃんが大家をしているアパート『赤蓮荘』は、今時なかなか見ないくらい古めかしい見た目の木造アパートだ。

 見た目はかなりボロそうに見えて、隙間風や雨漏りが容赦なく入って来そうなイメージがする。

 だが、実際に中に入るとそんな事は全然なく、設備も整っていて良い物件だと俺は思う。

 しかし、如何せん見た目が悪くて実際に暮らそうって言う人が居ない為、あんまり人気の無い物件でもある。

 まぁ、その人気の無い物件に好き好んで暮らしている人も確かに居るのだが。


「さ、いつまでもここに居てもしょうがないし、行くか」

「そうでござるなぁ」

「えー、行くんスかー? ……床抜けたりしないっスよね?」

「ちょ、ハルちゃん!? 流石に失礼だよ!」

「いや、実際床抜ける事もあるから気を付けろよ?」

「「え!?」」

「冗談だ」


 俺が冗談だと付け加えると、青ヶ谷女子と緑河女子はズルっとその場でこけてしまった。

 ギャグかな?




 ◇




「あ、先輩! 皆さんもいらっしゃいませ! 狭い部屋ですけど、どうぞ~」


 三人を連れて、先にメリーの部屋を訪ねた。

 除草作業なんかがある俺はともかく、青ヶ谷女子と緑河女子は遊びに来ただけだからな。

 二人をメリーに任せたら、俺は黄村と一緒にアパートの掃除だ。


「おお、ここが嶋殿の部屋でござるかぁ。ぬいぐるみが多いのでござるなぁ」

「ホントっス! エナエナの部屋、滅茶苦茶可愛いっスね!」

「可愛い~。永長ちゃん、このぬいぐるみの鳥さんは何て言うの?」

「この子たちは『シマエナガ』って言う鳥ですよ、青ヶ谷先輩」


 メリーの部屋でまず真っ先に目立つのは、部屋中に飾られた白い体と黒や茶色の翼を持つ鳥、『シマエナガ』のぬいぐるみだ。

 これらは全て俺が作ってメリーにプレゼントした物なのだが……いやぁ良いっすねぇ。

 シマエナガだらけの部屋とか最高かよ! 何時間でもこの部屋に居たいわぁ。


 そんな気分で部屋を見ていると、青ヶ谷女子と緑河女子がシマエナガについてメリーに質問していた。


「『シマエナガ』……って、永長ちゃんの名前と同じだよね。偶然?」

「いいえ、シマエナガが私の名前の由来何ですよ? この子たちは北海道に棲んでいる野鳥で、『雪の妖精』って呼ばれてるんですよ」

「ほぇ~、そうなんスかぁ。雪の妖精なんて、ピッタリなあだ名っスね。エナエナにも似合いそうっスよね、雪の妖せ「甘い!」――!? な、何スかジョーくん!?」

「あ、やば」


 メリーが口元に手を当てて「やば」とか言っているが、今はどうでもいい!

 そんな事より緑河女子、全然判っていないぞ!


 ガシッ、と緑河女子の両肩を掴んで詰め寄る。

 ここは俺が、しっっっかりとシマエナガについて説明せねばなるまい。


「ひゃっ!? 急になんスか!?」

「良いか、緑河女子! シマエナガってのはなぁ!!」


 大抵の事に大らかである自身のある俺であるが、シマエナガについてだけは譲れない。

 シマエナガって言うのはなぁ。シマエナガって言うのはなぁ!


「この部屋に飾られているシマエナガのぬいぐるみは色んなサイズで作られているが、北海道に生息している本物のシマエナガは体長十四cmほどで、まずそこからメリーとは全然違う。あの小さくふわふわしたフォルムこそがシマエナガの可愛さを最大限に発揮する理想の大きさなんだ! この部屋に置いてあるクッションサイズのシマエナガのぬいぐるみの可愛さは、あくまで本物ありきの物でしかない。まず人間と小鳥を比較すること自体がナンセンスだ。星の美しさ、宝石の美しさ、花の美しさ、それぞれが別種の美しさを持つように、メリーとシマエナガの可愛さは別種の物であって引き合いに出したりするような物じゃない。俺は外見の可愛さを語る時、大事なのは見る角度だと思っているが、それにしたって俺がシマエナガの可愛いと思う角度と、メリーの可愛いと思う角度は別々なんだ! シマエナガが可愛いのは正面の角度……丁度ぬいぐるみがあるから実演するけどこの角度だ! 正面のこの角度から見ると、丁度翼の黒い部分が頭の輪郭と重なって、見る角度によってロップイヤーのウサ耳やイヤーマフを付けているように見えるんだ! この角度! この角度だぞ!! シマエナガはダンジョン出現前から存在する生き物だけど、俺は正直シマエナガは半分以上ファンタジー世界の生き物だと思っている。それくらい、この世の物とは思えないくらいシマエナガは愛らしい!! 丁度スマホに北海道在住のシマエナガ好きの同志がネットにアップしてくれた写真があってな……これ、これだ! 何してるんだ黄村、青ヶ谷女子も! もっと近くで見ろって! マジで可愛さと愛らしさが爆発してるから!!」




 ◇




 その後、メリーに入れて貰ったお茶を飲んで喉を潤しながら、たっぷり二時間ほどシマエナガについて三人に語り尽くした。

 ちょっと掃除や除草作業に使う時間が減ってしまったが、シマエナガの魅力を存分に語れたので悔いはない!!

こいつ(蓮上)、シマエナガの話になると急に早口になるよなw


なお、このあと黄村、青ヶ谷、緑河の三名は、


「シマエナガカワイイ!」

「シマエナガダイスキ!」

「シマエナガサイコー!」


と、しばらく片言でシマエナガを讃え続けました。やったぜ

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― 新着の感想 ―
[良い点] 凄い早口で言ってそう(小並感) つまり、それだけ気に入ってる動物から名前を取ってるって事は、 ……いや、これ以上は野暮ってもんだな…… 次も楽しみにしてますぜ! 次はテンカラーズ…
[一言] お前アイドル狂いの二人の同類じゃねーか! 人のこといえねーぞおい
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