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第二十三話 「首刈と新魔法」

自己強化アイテムを自作出来る。

それこそが生産職の強み!

 その後、イズメの名前を叫んでからガックリと崩れ落ちてしまったメリーに事情を聴いた。


 何とこの後輩、サプライズで自腹を切って俺を温泉旅行に招待するつもりだったそうだ。

 しかも、独自のコネを使ってイズメたちペット三匹も一緒に泊まれるところに。


 イズメたちは元々ただの動物コノハだけはモンスターだがだったのが、『人化(じんか)』スキルで人型になっているという特殊な存在である為、存在が認知されているこの街以外に連れて行くのは非常に難しい。

 連れて行く先々で無遠慮な好奇の目に晒されるのは当たり前、下手すればどこぞの国だの研究機関だのが実験体として攫おうとする、何て事も実際に起きた事がある。(なお、過去にイズメたちを攫おうとした連中は悉く父さんが潰した)


 そんな訳で、イズメたちを街の外に出そうとすると様々な問題が立ち塞がる為、余り遠くへ遊びに連れて行けて無いんだよなぁ。

 安全第一だからと言って、あの子たちに遠出をさせて上げられないと言うのは辛いものがあった。

 前に一度、コノハが海に行ってみたいと言っていたのに、未だに連れて行けていないのが本当に悔やまれる。


 そこに来ての、今回のメリーの申し出である。


 メリーはイズメたちの事情を知っている。その上で一緒に泊まれるところを用意してくれたという事は、何かしらの対策を講じてある場所という事だろう。

 この街以外の場所を、テレビで見る事しか出来ないあの子たちに旅行をさせてあげられるこの機会、絶対に逃せないな。

 俺だってみんなと温泉旅行に行きたい!!


 ……けど、どうしよう。

 『蓬莱鉱山』の件は、生産職の皆さんと去年からリベンジしようって約束してたものだから、今更取り止めって事には出来ない。

 採掘を最速で終わらせれば途中参加でも温泉かライブのどっちかは行けると思うが、どっちか片方だけに行くって言うのも忍びないしなぁ。


 一応それぞれの行き先によるが、俺の敏捷値なら往復出来ない事も無いのだが、基本的に探索者のステータスを発揮しての高速移動は法律で禁止されている。

 なんとかライブと温泉を往復出来る方法があれば良いのだが……。



「……いや、あるぞ!」

「? あるって何がでござるか?」

「採掘と温泉旅行とライブ、全部に俺が参加する方法がだよ!」

「本当ですか!?」


 ガバっと、メリーが勢い良く顔を上げる。

 その顔には、期待と興奮が混ぜこぜになっていた。

 そんな顔されちゃぁ、応えない訳には行かないよな。

 ちょっと俺が忙しくなって、あんまりゆっくり出来なくなるが、まぁそれくらいは安い出費だ。


「けど、三か所だよ? 移動は何とかなるのかもだけど、赤松くんがとっても忙しくなるんじゃない?」

「問題無い。青春時代の思い出作りと考えれば、寧ろプラスだ」

「思い出作りっスか? なんか良いっすねぇ~、正に学生! って感じで、写真とかいっぱい撮っちゃうっスか!」

「お、良いでござるなぁ。ならば当日は、拙者も父上の一眼レフを持参するでござる!」

「それで先輩! その方法って何なんですか!?」


 みんなで写真か、良いなぁ。

 家族写真はいっぱい撮った事あるけど、学校の友達と写真を撮る何てこと、今までほとんどなかったからなぁ。

 物凄くリア充っぽい、これで俺もリア充側(ライトサイド)デビューか?


 ……いや、無理だな。だって行く先アイドルのライブだもん。

 どう足掻いてもオタク側(ダークサイド)


 って、それは良いんだって。

 今は三か所参加を実現させる方法を披露しないとな。


「まぁ待てってメリー、今実演するから。 ……四人ともちょっと、そっちの通路の奥見ててみな」

「「「「?」」」」


 俺が指さした先、店の入り口とは反対側の店の奥の方へとみんなの視線が集まった。

 よし、今だな。



「――『短距離転移(ショート・ワープ)』」



 唱えた瞬間、俺は指さしていた先にある誰も座っていなかった席に座っていた。

 元居た席の方から呆気にとられた顔でこちらを見ている四人の方に手を振りながら、席から立ち上がって歩いて戻る。

 みんなが座っている一角の前に来たところで、腰に手を当てつつ胸を張って俺が何をしたのかを説明した。


「じゃじゃーん! 俺、ようやく『転移魔法』を覚えたんだ。すごいだろ?」

「「「「『転移魔法』!?」」」」


 四人が声を揃えて驚く。


 そりゃそうだろう。瞬間移動、空間転移、呼び方は色々あるが、『転移魔法』って言うのはファンタージーの定番であり、距離を無視して目的地へ移動出来るこの魔法は、全人類の憧れの的と言っても過言では無い。

 その上、現在知られている『転移魔法』の使い手は、世界中で百人にも満たないと言われている。

 その内の一人に、俺も目出度く加わったと言う訳だ。


「こ、この間までその様な魔法は使えなかったではござらんか!? どうやって取得したのでござるか!?」

「どうやっても何も、この間のデウスホーンの素材を使っていくつか転移系統の魔法の『魔法書(マジックブック)』を使って覚えたんだよ。元々技量的には作成可能な段階に入ってたんだけど、今までは必要素材が足りなくってな」

「『転移魔法』ってあれっスよね? 物凄く珍しいジョブに就くか、ダンジョンの深層で運良く魔法書を見付けないと覚えられない激レア魔法! 世界的に見ても、使える人が極端に少ないアレっスよね!?」

「そのアレだな。ちなみに俺を含めると、日本国内で『転移魔法』を使えると判っているのは三人だけだ」

「確か一人は政府直属で、もう一人は何とかって組織の所属なんだっけ?」

「『日本魔法研究協会』だな。あそこは元々魔法オタクみたいな人たちが作ったサークルが前身で、特に反社会的な思想がある訳でも無いし、政府と仲が悪いって訳でも無いから、術師の道に進むなら加入しとくのをお勧めするぞ? 実際俺や姫樫姉弟なんかも一応籍を置いてるし」

「えっと、『転移魔法』って確か色々種類があって、中には長距離移動が出来ないものもあるんですよね? 先輩はその辺り大丈夫なんですか?」

「行った事のある場所や会った事のある人物の元に転移する『指定転移(テレポート)』が使えるから大丈夫だ。転移する時は事前に電話するから、ある程度広い場所まで移動してくれ」



 席に座り直しながら、四人からの質問にそれぞれ答える。

 一通り質問に返したところで、改めてゴールデンウィーク中の予定について話し合った。



「それじゃぁ俺が採掘を終わらせてからになるが、当日は各々に連絡して貰って、そこに俺が転移するって感じで良いか?」

「それで良いでござろうな。各々方はどうでござるか?」

「私はそれで構いませんよ。先輩がいない間は、私がイズメちゃんたちの面倒を見ておきますから安心して下さい!」

「ああ、頼むよ」

「私も問題無いよ。あ、所で永長ちゃん。良かったら永長ちゃんもライブ来ない? 私が『シュガー・ポップ』の魅力を手取り足取り教えるよ!」

「ライブチケットは、何枚か余分に用意してあるっすからねぇ。この機会に新規の人にもぜひ来て欲しいっス!」


 おおう、青ヶ谷女子と緑河女子がメリーに布教を始めている。

 だがすまんな二人共、俺の『転移魔法』を当てにしているんだろうが、それは出来ないんだ。


「あー二人共、俺がメリーも一緒に転移させればライブに参加出来ると思っているんだろうが、それは出来ないんだ」

「え、そうなの?」

「ああ、俺が取得してる『転移魔法』は全部一人用なんだ。集団での転移が可能な魔法の魔法書は、まだ作れなくてな」

「そうなんスかぁ、残念っス」


 しょぼーんと肩を落とす青ヶ谷女子と緑河女子。

 何かすまんな。


「メリーも悪いな」

「あ、いえ、大丈夫ですよ! 元々、旅館の方でやる事もありましたから」

「? そうなのか?」

「はい、イズメちゃんたちの宿泊をOKして貰う代わりに、ちょっと頼まれた仕事があるんですよ」

「そうだったのか!? なら、俺も何か手伝うが?」

「いえいえ! 仕事自体は元々別件で頼まれていた物だったんですよ。丁度近くに旅館があったので、報酬のついでに泊まれるようにしてくれって頼んだだけですから、先輩の手を煩わせる程じゃないですよ」

「そうか? なら良いが」

「それに……今回の仕事は私の専門分野(・・・・)ですから、素人の先輩を連れて行く訳には行きませんし」


 その言葉で色々と察する。

 メリーの専門分野という事は、十中八九『妖魔』に関連した案件であろう。

 確かに、ダンジョンのモンスターならまだしも、現代に生き残った妖怪変化など完全に専門外だ。

 俺が居ても、逆に迷惑になるのだと思う。

 なら、素直にメリーの言い分に従おう。


 ……ただ、


「そう言う事なら、これ以上何も言わないが……それでも心配だし、これ持っとけ」


 そう言って、『収納』スキルからボールペンほどの小さな巻物を四本取り出して、うち一本をメリーに渡す。残りは黄村と青ヶ谷女子、緑河女子の分だ。


「? 先輩、これは?」

「『転移魔法』を利用して作ってみたマジックアイテムだ。みんなの分もあるから、お守りだと思って持っててくれ」


 三人の前に巻物を差し出すと、それぞれ興味深げに受け取る。

 この場の中では、俺に次いで『魔法書』系統の知識がある黄村が渡した巻物について質問して来た。


「小さな巻物……『魔導教典(スクリプチュア)』とは違う様でござるが、『呪文書(スペルスクロール)』の一種でござろうか?」

「あ、鋭いな。これは『呪文書』を基に俺が作ったオリジナルのマジックアイテムだ」


 『呪文書』とは、一度だけ込められた魔法が使えるという、使い捨てのマジックアイテムだ。

 通常は、所有者が任意のタイミングで込められた魔法を発動するものだが、この巻物は特定条件下で込められた魔法を発動させるという特別仕様となっている。


「オリジナルのマジックアイテムっスかぁ……ジョーくん、どんな効果なんスか?」

「持っていると、ピンチの時に俺が助けに行く」

「……はい? どういう事っスか?」

「具体的に言うと、持ち主がピンチの時に込められた『転移魔法』が発動して、俺がその場に転移する。って言うマジックアイテムだ。まぁお守りみたいなもんだよ」

「それ、お守りと言うより最終兵器ではござらんか?」

「赤松くんの場合、大抵の事はフィジカルで解決できそうだもんね」

「む、失礼な。これでもスキルも魔法も保有数なら誰にも負けない万能型だぞ?」

「せせせ先輩!? つまりこれがあれば、いつでも先輩を召喚し放題って事ですか!? 二人っきりでしっぽり密着出来る密室とかでも!!」

「いや、出来れば広い場所が良いかな? 最悪壁に埋まるし。後、自動発動だから任意には起動出来ないぞ?」

「ボケに真面目に返さないで下さいよ!」

「でも半分以上本気だったろ?」

「九割以上本気でした!」

「知ってた」

「仲良いねぇ、二人共」


 青ヶ谷女子が、微笑ましい物を見る様な視線を俺とメリーに向ける。

 何だかちょっとこそばゆいな。



 兎に角、『転移魔法』のおかげで諸々の問題は解決しそうな訳だ。

 かなりハードな事になるが、ゴールデンウィークは頑張るぞ!




「……ところで、さっきから永長ちゃんが口にしてる『イズメ』ちゃんって誰なの?」

「そう言えば聞いた事無い名前っスね。ジョーくんとはどういう関係なんスか?」


 ああ、そう言えば青ヶ谷女子と緑河女子にうちのペットたちの事を話した事ってなかったな。

 その内会う事もあるかもだし、説明しておくか。

ちなみに蓮上が現在使える転移魔法は、


視界内の範囲で転移する『短距離転移(ショート・ワープ)

会った事のある人物の下、または行った事のある場所へ転移する『指定転移(テレポート)

手元にある物品を人物、または場所を指定して転移させる『転送(アスポート)


の、三つです。

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― 新着の感想 ―
[良い点] 良かった……エリアの境界線で不審な動きしてめり込む主人公は居なかったんやな。 次も楽しみにしてますぜ!
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