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プロローグ 「雪白の妖精」

Q、何でタイトル変更したの?


A、元のタイトルが長い上に、略称を思いつかなかったから。

いちいち「現実世界にダンジョンが~」云々言うのが面倒くさくて……。

これからは当作の事を呼ぶときは、短く「首刈」とか「レッドジョー」って呼べるようになりましたw


 月も星も雲に隠された夜。


 地上に広がる文明の光の合間を縫う様に駆ける、二つの影があった。



 一つは、逃げる大きな男の影。


 成人男性の平均を遥かに超えた体躯を持つそれは、まるで阿修羅の様に六本の腕を持ち、額からねじくれた一本角を伸ばす異形。


 『(おに)』、あるいは『(あやかし)』としか言いようの無いその人外の存在の正体は、現代においてなお社会の裏側、非日常と異常識の暗闇に潜む怪物、『妖魔(ようま)』と呼ばれる化け物である。



 もう一つは、追いかける小さな女の影。


 その体躯は成人さえしていない少女そのものであり、処女雪の如き穢れの無い白い髪と、磨き上げられた白銀の刃を持つ刀が、街灯りに照らされて輝いていた。


 触れれば折れてしまいそうなほど華奢な体躯にも拘らず、風の様にビルの合間を飛び跳ね駆け抜ける『妖魔』の後を、一瞬の澱みも無く追いかけ、徐々にその距離を縮めている。



 息つく間もなく走り、跳び、駆け続ける両者の顔は対照的で、男は顔に焦燥を浮かべ、女は獲物を狙う狩人の如き鋭い目で男を一瞬たりとも目を逸らさずに睨んでいた。




「……クソッ、クソクソクソッ……! なんで、なんでこんな事に……!?」


 異形の男が悪態をつきながらも必死に足を動かす。

 その独白は半ば現実逃避の様な物であったが、その呟きに応える声があった。



「――何故って、そんなの決まっているでしょう? 貴方が人を食べたからですよ」



 答えたのは、刀を手に男を追いかける少女であった。

 男が生きるために必死に体を動かして息を切らして居るのに対し、少女はまるで息を切らす事無く淡々と言葉を続けた。


「五人一家全員の捕食。先ず父親を惨殺した上で母親と三人の子供を捕まえ、一人を生贄として差し出せば残りを助けると言って、『母親に我が子を生きたまま捌かせた』のでしょう?」

それがどうした(・・・・・・・)って言うんだ(・・・・・・)!?」


 少女が淡々と並べた、極めて残虐な男の所業に対し、男は何故そんな程度の事で殺されなければならないのだと、自分の行いに対して一切の呵責も罪悪感も無い様子で返した。

 自分が理不尽な目に合っていると言わんばかりの男の言い分に、少女は憤る事も無く淡々と続けた。


「どうしたも何、だから貴方は殺されるのだと言っているんですよ?」

「ふざけるな! 何でそんな事で殺されなくちゃならない!? お前ら人間だって、獲物を甚振って楽しむだろうが!? 同じことをして何が悪い!!」


 男の言い分に対し、少女は呆れた表情を浮かべ……次の瞬間一切の感情の浮かばない無表情となった。


「それを人間(わたし)に言ったって仕方ないでしょう? だって、―――」

「かっ!」


 少女が言葉を区切った次の瞬間、男の首は一瞬で胴体と泣き別れしていた。

 刎ねられ、あらぬ方向に飛んだ男の首をキャッチしながら、物言わぬ男の首に少女は言葉の続きを語りかけた。


「――だって、人間(わたしたち)の害となったから、人間(わたし)が貴方を殺しに来たんですよ? お腹が空くのが当たり前のことなように、障害を取り除くのも当たり前の事なんです」




 最早言う必要も無い事だが、死者への礼儀としてそう語った少女は、男の首を片手にポケットから取り出したスマホを使ってどこかへ連絡した。


「もしもし、私です。標的(ターゲット)の討伐を完了しました。死体の回収をお願いします」

永長(えなが)ちゃん!? もう、何で一人で行っちゃうの!? 心配したんだよ!!』


 スマホから大音量で聞こえて来た少女の声に驚き、白髪の少女『永長(えなが)』は思わず耳からスマホを話す。

 そうしてスマホから聞こえる少女の声が落ち着いたところで、再びスマホを耳に近づけた。


「ごめんなさい、『菊菜(きくな)』さん。けど大丈夫ですよ。これでも私、探索者としても鍛えていますから」

『鍛えているからって絶対大丈夫とは限らないでしょ!? だいたい永長ちゃんは昔から……!』

「すみません。明日も学校があるので、この辺で切りますね」

『ちょ、話はまだ――』


 プチッ


 強引に通話を切った永長はスマホをポケットに仕舞い、そのままビルの合間を駆けて帰宅する。

 つい先ほど異形とは言え、男一人の首を刎ねたばかりだというのに、白髪をたなびかせて舞う様に翔けるその姿は、まるで『雪の妖精』のように美しかった。


「――そう言えば、大家さんから『先輩』への伝言を預かっていましたね」


 『先輩』、そう呟くのと同時に永長は花咲く様な笑顔を浮かべた。

 その表情から、彼女がその『先輩』に対してどのような感情を持って居るのかは想像に難くなかった。



「さぁて、純情可憐な貴方の『(しま) 永長(えなが)』が、逢いに行きますからね、先輩♪」



 空を覆う雲が途切れ、姿を現した月の明かりが永長を照らす。

 弾む様にそう呟く彼女は、妖精の様に神秘的で……そしてどこまでも、誰かに恋する普通の少女であった。

蓮上「……あれ? 主人公()の出番は?」


永長「次回からはありますよ、先輩♪」




新キャラ『(しま) 永長(えなが)』ちゃん登場。

名前だけは前回イズメのセリフで出てましたね。


ちなみに名前の元ネタは、北海道のクッソ可愛い鳥『シマエナガ』です。

……ちなみに本名ではなく偽名です。

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