閑話 「コノハの一日(夜)」
今回で閑話は終了、次回から『第一章 首刈の日常』の開始となります。
「……わふぅ?」
庭で昼寝をしていたはずのコノハが目を覚ますと、いつの間にかリビングに居た。
「あ、起きた?」
「わぅ、起きた~……」
気が付くと、コノハはイズメに膝枕をされながら、髪や尻尾のブラッシングをされていた。
窓の外はすっかり暗くなり、キッチンからは夕飯の美味しそうな匂いが漂って来ていた。
「ワゥ! ご飯!」
「うん、もう直ぐ出来るみたいだから、一緒に待ってようね~」
「ワフッ、待ってる」
ブンブンブンッと、コノハが尻尾を大きく振り回したことで、まだ途中だったブラッシングがやり難そうになったが、イズメは特に気にした様子も無く慣れた手つきでコノハの尻尾を捕まえて、ブラッシングを再開していた。
ご飯が楽しみでソワソワキョロキョロとせわしなくキッチンの方を覗こうとするコノハの頭をイズメは撫でて落ち着かせる。
そうしている内に料理が完成し、キッチンから料理の乗ったお盆を持った蓮上とマミナが姿を現した。
「お待たせ~、出来たよ~」
「お盆を乗せるから、テーブルの上の物を退かして頂戴、イズメ」
「はいは~い」
マミナに言われてイズメはテーブルの上に広げていたブラッシング用の道具を手早く片付けた。
テーブルの上が開いた事で、蓮上とマミナの運んで来たお盆がドンッと置かれた。
料理が置かれたことで、四人がそれぞれテーブルを囲む様に定位置の席に座り、蓮上の挨拶で食事が開始された。
「それじゃぁみんな座って座って、お腹空いたし早速食べちゃおう。いただきます」
「「「いただきます!」」」
パクパクモグモグムシャムシャ。
争うような激しさは無く、同時に行儀の良い綺麗な食べ方で四人は夕食を口にする。
だが、そのペースは静かだというのに明らかに早く、テーブル一杯の料理は瞬く間に食べつくされて行った。
しかし、テーブルの上に空の食器が積み上げられるという事も無い。
蓮上が随時『収納』スキルで空になった食器を片付け、同時に『収納』内に仕舞ってある追加の料理を次々に出しているからだ。
激しさの無い静かな大食い大会。
そんな表現が相応しい赤松家の食卓であったが、大食い大会さながらのハイペースで食べているというのに、四人は普通に談笑をしながら食べていた。
「そう言えばイズメ、今日は朝から居なかったみたいだけど、どこ行ってたんだ?」
「マミナから聞いてない? 『永長』ちゃんと一緒に『源八郎』お爺ちゃんのとこの道場に言ってたんだよ」
「聞いてないな。源爺ちゃんのとこに行ってたのか……何で教えてくれなかったんだ?」
「蓮上が二度寝なんかするから言い損ねたのよ。お昼食べた後はずっと庭でトンカントンカン夕方まで作業してたでしょ? 私は家の中で掃除や洗濯をしてたから、言う暇がなかったの」
「ああ、ならしゃぁないか。二度寝の件は許して」
「別に怒ってるわけじゃ無いわよ。お母さんならこっぴどく叱りそうだけど」
「だよねぇ~」
「はぐはぐ! 蓮上、おかわり!」
「あいあい」
「よく食べるねぇ~、そんなにお腹空いてたんだ。コノハは今日一日何してたの?」
「わう?」
イズメからの質問にコノハは今日一日の事を思い出す。
今日一日の自分の行動を思い出した結果、コノハの出した結論は―――
「――ワフ! 今日も一日、頑張った!」
「そっか~、コノハは偉いねぇ~」
「ワウッ! コノハ、偉い!」
頑張っていません。
朝起きて二度寝して、お昼食べて昼寝して、夕飯食べた後は寝るだけです。
外出していてその事を知らないイズメはともかく、蓮上とマミナはその事を知っているはずだが……
「そうだな、今日もコノハは元気いっぱいだったぞ」
「そうね、コノハは今日も可愛かったわ」
「わふぅ!」
蓮上とマミナから褒められて、コノハは嬉しそうにパタパタと尻尾を振っていた。
二人はコノハが別に頑張っていない事を知っていたが、その事は口にせずに「頑張っていた」以外の言葉で褒めるという、大分甘い対応をしていた。
コノハは赤松家の最年少であり、赤松家では末っ子が可愛がられる傾向にあるのだ。
◇
そうして一人と三匹の不思議な家族は、今日も賑やかに一日を終える。
こんな日が、きっとこの先も続いて行くのだろう。
『………フンッ』
そんな中、誰よりもそこに近いのに、ただ一匹そこに交われない緋色の鳥が鼻を鳴らした。
その声は、どこか羨ましそうにも、寂しそうにも感じられた。
おや、緋色の鳥くんの様子が……?
ダークソウル考察の『不死人の正体は古竜であり、火を求めるのは人であった頃の温かさを求めているから』説好き。
超常の存在が、定命の存在を通して命に対する価値観を変化させる展開とか、作者は凄くエモく感じる。
緋色の鳥くんも、蓮上を通して家族の温かさとかを感じているのだろうか……?
……まぁそれはそれとして緋色の鳥くんは、毎晩夢の中で首刈野郎に首チョンパされまくっているんですが。
毎日の首刈のせいで、住処である赤い原野に自分の血で血の池作られてる緋色の鳥くん可哀想。




