閑話 「コノハの一日(昼)」
休日に二度寝して、お昼まで寝てるあるある
「――それで、二人して朝ご飯も食べずにこんな時間まで爆睡してたって訳ね……なにか言う事は?」
「「ごめんなさい」」
「うん、宜しい」
リビングにて、蓮上とコノハの二人はカーペットの上で正座させられていた。
時刻は午後一時を少し過ぎた所、二度寝でお昼過ぎまで眠りこけ、朝食をすっぽかしたことを今日の食事当番であるマミナに怒られているのだ。
いつもの黒いドレスの上からフリル付きの白いエプロンを付けたマミナは、右手にお玉を持ちながら正座する蓮上とコノハをジト目で見ている。
ちなみに、この片手にお玉を持って正座させるという叱り方は、蓮上の母親と全く同じ叱り方であり、正座させられている蓮上は「最近ますます母さんに似て来たよなぁ、マミナ」何て感想を抱いていた。
そんなマミナであるが、二人が謝るとあっさりと許していた。
元よりマミナも蓮上が仕事の作業をしていたせいで寝不足だったことや、寝不足の蓮上を起こしに行くとベッドに引きずり込まれ抱き枕にされることは知っていた為、それほど怒っていた訳では無いのだ。
ただ、それはそれとして折角作った朝ご飯が冷めてしまった事も事実である為、『赤松家のルール』に則り正座させたのである。
大食い一家である赤松家では、どんな理由であれ食べ物を粗末にするような行動はお叱りの対象なのだ。
「じゃ、お昼はそのまま朝ご飯を温め直しちゃうから、二人共待っててね」
「「はーい」」
それだけ言うと背を向けてキッチンへと向かうマミナ。
その後ろ姿を眺めながら、蓮上とコノハはひらひらと揺れる、マミナの腰の辺りで結ばれたエプロンの白い帯にじゃれつきたいな、などと考えていた。
主従揃って、思考が犬猫並である。まぁ、片方は実際にワンコ(狼)なのだが。
とは言え、実際にじゃれついたりなどしたら更にこっぴどく怒られるのは目に見えている為、蓮上とコノハは大人しくテーブル前のソファに座って、料理を待つ事にした。
「さ、出来たわよー」
「「わーい」」
ドンッ! と、テーブルの天板と同じ大きさの巨大お盆に乗せられた料理をマミナが持って来てテーブルに置いた。
先程まで何も置かれていなかったテーブルの上には、今はまるで満漢全席のような大量の料理がお盆に乗せたままの状態で置かれている。
恐ろしい事に、これらはあくまで蓮上とコノハの二人分であり、更にまだ追加の料理が後に控えていた。
これが、赤松家の普段の食事量である。
「「いただきまーす!!」」
「はい、召し上がれ」
とは言え、一般人の目線から見れば異常な光景でも、赤松家からすればいつも通りの光景である。
蓮上とコノハは、食事量について一切の疑問も無くムシャムシャと料理を食べ進めた。
◇
「わふぅ~……」
お腹もいっぱいになり、今度はお昼寝をしたくなったコノハだったが、ご主人様である蓮上が庭で作業を始めたため、それに付き合って起きている事にした。
とは言え、既に半分くらい瞼が閉じかけていたが。
「ワフゥ……蓮上、何するの?」
「うん? ああ、ちょっとそろそろ『こいつ』を整備しておかなきゃと思ってな」
そう言うと蓮上は、『収納』スキルから何か途轍もなく巨大な金属製の物体を取り出した。
ゴズズゥンッ!!
「ワフッ」
取り出した物体の余りの重量に、地面が少し揺れる。
それに驚いたコノハの瞼が一瞬見開かれるが……またすぐにとろんと半分くらい閉じてしまった。
蓮上が『収納』スキルから取り出した物体、その姿は電車を二台並べたほどの幅を持つ超巨大なチェーンソーであった。
銘を『超弩級山岳解体機構 グランシェイカー』
文字通り、『鉱山を山岳丸ごと解体・回収する為』の超巨大工具である。
何故こんな物を所有し、整備しているのかと言えば、これを実際に使用する機会があるからだ。
ダンジョンの中には、年間を通してごく短い一定期間しか出現しないものや、世界中の何処かしらに一定期間のみ現れ、その期間を過ぎるとまた別の場所に出現するという特性を持ったものが存在する。
これらは一纏めに『期間限定ダンジョン』と呼ばれ、それらの中にはそこでしか手に入らない超稀少素材があったり、他のダンジョンでは稀少な素材が大量に手に入るという、非常に『おいしいダンジョン』も存在していた。
その中の一つである期間限定ダンジョン『蓬莱鉱山』は、山全体が稀少鉱石で構成されている上、山頂に出現するボスモンスター以外に、モンスターが一切出現しないという特性を持った非常に珍しく、稼ぎ易いダンジョンであった。
『収納』スキルは、どんなものでも大きさや重さに関係無く仕舞える万能のスキルであるが、いくつか制約が存在している。
その一つが『自分で持ち上げられる重さの物でないと収納出来ない』と言うものであった。
筋力値お化けである蓮上でも、流石に山一つを持ち上げる事は出来ないし、何より『地球自体が収納出来ない』様に、地面にくっ付いたままの山をそのまま『収納』する事は出来ない。
だが、『蓬莱鉱山』はたったの一週間しか出現しない期間限定ダンジョンだ、出来れば鉱石は最大限に確保したい。
そこで蓮上が取っている手段こそが、『山岳を持ち上げられる丁度良い大きさに切り分けて収納する』という方法であった。
とは言え、ダンジョンを個人で独占する事は出来ない為、当日は談合の上で『蓮上と同じ手段を取れる者だけ』が先に入山し、他の探索者たちの邪魔にならない場所に陣取って、ダンジョンの地形であるが故に無限に再生し続ける山岳を削り続ける予定である。
蓮上は、『蓬莱鉱山』で手に入る鉱石類や、その売却金額を想像しつつ、鼻歌混じりに『グランシェイカーイカー』の整備を続けた。
「~♪ ~~♪」
「わふぁ~……」
一方コノハは、庭の隅で丸くなりながら蓮上の鼻歌を聞いていた。
蓮上の鼻歌は昔から蓮上の母親が日常的に歌っていた物で、赤松家では子守唄の様な物でもある。
その為自然とコノハはウトウトとしだし、そのまま寝息を立て始めてしまった。
「zzz~……」
「ん? 寝ちゃったか」
それに気付いた蓮上は作業の手を一旦止め、眠ってしまったコノハに『収納』から取り出した『朱雀羽織』をかけた。
「ん~……蓮上……」
「よしよし」
寝言で自分の名前を呼ぶコノハの頭を微笑みながら撫でた蓮上は、撫でられたコノハが嬉しそうな笑顔になるのを見てから、整備作業へと戻った。
『超弩級山岳解体機構 グランシェイカー』
列車、無限起動、機甲部隊。
作者の中に、地属性・機械族の波が来てる。




