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閑話 「コノハの一日(朝)」

短め、『ほのぼの』タグのターンですわよ。

「くふわぁ~……」


 日の出と共に、ベッドの上の布団がもぞもぞと動き出す。

 気の抜けるような欠伸の声と共に布団がずれ、中から灰白銀の犬耳……否、狼耳が姿を現した。


 『赤松(あかまつ) 蓮上(れんじょう)』のペットの内の一匹、『人化』スキルによって狼の耳と尻尾を持つ少女の姿となった『スノーダスト・ウルフ』、『コノハ』である。


 コノハの一日は、基本的に日の出と共に始まる。

 本能のままに一晩中月に吠え続ける満月の夜、その翌日の朝を除いてコノハは基本的に早起きだ。


「んにゅ~……」


 両手を前に出し、伏せの体勢でググっと背筋を伸ばす姿は犬その物。

 しかし、彼女の事を犬と呼んではいけない。

 彼女の事をワンコ呼ばわりして良いのは、ご主人様である蓮上や赤松家の家族だけなのだ。


「ワゥ、朝っ、蓮上!」


 体をほぐし終えたコノハは、大好きなご主人様の名前を口にしてから部屋を飛び出した。

 今日は日曜日であり、蓮上は学校へは行かない。

 平日に蓮上を起こすのはコノハと同じく蓮上のペットであり、コノハのお姉さんでもある『アカギツネ』の『イズメ』の仕事だが、休日に蓮上を起こすのはコノハの仕事なのだ。


 蓮上の部屋の前に辿り着いたコノハは耳を澄ませた。

 中からは蓮上の静かな寝息が聞こえて来る。

 昨夜は遅くまで、『魔導教典書士スクリプチュア・メーカー』としての仕事である『技能書(スキルブック)』作成の作業を行っていた為、普段なら目を覚ますような時間になってもぐっすり眠っているようである。


 ここでもし、起こしに来たのが平日の様にイズメだったのであれば、「今日は休みの日だしゆっくり寝かせておいてあげよう」となっていたかもしれないが、あいにくコノハにその様な考えは無い。

 学校のある日は我慢しているが、本当は一日中ずっと蓮上の傍に居たいのがコノハなのだ。


 折角の休日なのだから、今日は一日中蓮上に遊んで貰う。

 それが今日のコノハの一日の行動計画である。(もちろんコノハは具体的に何をするかなどは一切考えていない。たとえ遊んで貰えなくても、蓮上と一緒ならコノハはそれで幸せいっぱいなのだ)


「ワウワウ! 蓮上! 朝だよ!!」


 ぴょーんとジャンプしたコノハは、ベッドですやすやと眠っている蓮上へとダイブした。


「へぐえっ!?」


 コノハのダイブを無防備に受け止めた蓮上から、日常生活の中ではまず上げないであろう妙な声が聞こえて来た。

 目を白黒させながら起床した蓮上は、周囲をキョロキョロと見回した後、自分の上にのしかかるコノハの姿を見て落ち着きを取り戻した。

 そして次の瞬間、ガバっと素早くコノハをベッドの中に引き摺り込み、そのまま抱き締めると再びウトウトと仕出した。


「……おはよう、コノハ」

「ワゥ! 蓮上、朝! 起きて!」

「まだ眠いよ。だから一緒に二度寝しよう?」

「わぅ、一緒? ならコノハも二度寝する!」

「うん、おやすみ……」

「おやすみ!」

「「……すぴー」」


 お互いにおやすみと声を掛け合ってからほんの数秒ですやすやと眠りにつく。

 寝つきが異様に良いのは赤松一家全員の特徴であり、ペットであるコノハにもしっかりと受け継がれていた。


 本来起こしに来たのに、一緒に二度寝して良いのか?

 そのような疑問は、最初からコノハの脳内には存在していない。


 蓮上に抱きしめられながら眠るコノハが感じているのは、大好きなご主人様の匂いに包まれている事への幸福感だけだった。

蓮上のペットたちである『イズメ』(キツネ)、『マミナ』(タヌキ)、『コノハ』(オオカミ)の三匹は、背の高さと中身の幼さが反比例しているので、一番小さい『イズメ』がお姉さんで、一番背の高い『コノハ』が末っ子みたいな感じです。


次回はお昼。

序章では出番の少なかったペットたちですが、第一章からは沢山出して行きたい。

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