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第十五話 「魔導教典書士と五色教典」

前回のあらすじ


主人公、人間衛星兵器の攻撃に巻き込まれかける。

隕石降らせる系の魔法を現実で使ったら大惨事になるとあれほど(ry

 男に抱き着く趣味は無いので、押し倒した姫樫弟を「ソォイッ!」とぶん投げながら立ち上がる。

 投げられた姫樫弟「ほんとに何なのですぞーーーっ!?」と叫びながらぶっ飛んで行ったが、こちとら危うくお前の攻撃魔法に巻き込まれるところだったんだから、これでお相子だろ?


 という理論武装の下、改めて周囲の面々の顔を確認する。

 ほとんど全員見知った顔だな。この『四季巡礼の山地』で活動している上級探索者ばかりだ。


「……」

「……」

「あ……」


 とそこで、この中で誰よりも見知った顔をした約二名が、物凄ぉく怖い笑顔で俺を見ている事に気付く。

 その二人とは、俺と同じくこのダンジョンの上級探索者をしている俺のお母さんとお祖母ちゃんだった。


 そう言えば居るんだった!

 やべぇよ、姫樫弟を思いっきりぞんざいに扱った所を見られちまったよ!


 これ絶対怒られるなぁ……と後悔していると、集団の間を縫って歩き、黄村が喜色を浮かべながらこちらへ近づいて来た。


「首刈殿! ようやくお越しになったのでござるな。青ヶ谷殿と緑河殿は?」

「家まで送って来た。それより、レイドに参加しているのはここに居るメンツだけか?」

「ああ、それでしたら「――他の連中は怪我人を担がせて先に帰らせたよ。この先の戦いにはついて来れ無さそうだったからね」――と、綾姉……」


 黄村の言葉に被せて、新たな人物が会話に参加して来た。


 狩衣と軍服を融合させたような不思議な衣装に身を包み、背中には身の丈ほどある両刃の体験が装備されている。

 更に左手には錫杖が、右手には先ほど俺が投げ飛ばした姫樫弟が抱えられていた。

 髪は膝まで届くほど長い金髪だが、もみあげの一房などの一部分が何か所かメッシュを入れたかのように赤くなっているのが特徴的であった。

 絶世と呼んで憚らない美貌の女性であったが、隠す事の無い悪辣さを感じさせる笑顔が、その魅力を半減させていた。


 黄村が『綾姉(あやねえ)』と呼んでいたから判るだろうが、彼女こそクラン『姫樫堂和菓子団』のリーダー、『姫樫(ひめがし) 綾乃(あやの)』さんである。


「あ、どうも綾乃さん」

「おう、こんばんは蓮上。あたいの弟を可愛がってくれたようだね?」

「誤解です綾乃さん。姫が……純君は可愛くありません。可愛さを求めるなら、森にウリ坊でも探しに行きます」

「え、そう言う問題でござるか?」


 いやだって、どう考えても人間の野郎なんかより可愛いだろウリ坊。

 デウスホーンドラゴンもなぁ、もっとモフモフしてたら良かったのになぁ。


 何て事を考えていると、綾乃さんは笑い声を上げて俺の意見を肯定した。


「アッハッハ! 確かに! うちの弟は可愛くないな!」

「ちょ、姉上氏! 笑っていないで弟がぶん投げられたことに文句を言って欲しいのですぞ!?」

「ハッハッハ! あ~そうだ。蓮上、よくもあたいの結界をぶち破ってくれたね? おかげで呪符が何枚も駄目になったじゃないか!」

「え~、それは悪かったと思うけど~、俺も急がなきゃ純君の魔法の巻き添え食らってたし~、何ならここに来る途中で『天道開門(ハイペリオン・ゲート)』の余波も食らったし~」

「あ、余波食らってたの? 怪我無い? 良かった(ほっ)。純! 蓮上が余波食らったそうじゃないか! だからもっと影響範囲の狭い魔法にしろって言ったろ!?」

「無茶言わないで欲しいですぞ姉上氏!? 神聖特性付きの魔法なんて、大規模破壊魔法以外持ってないのですぞ!!」

「だったら収束させたら良いだろう! 何の為の『魔弾の王(ザミエル)』だってのさ!?」

「『必中』と『収束』じゃ効果が違いますぞ!!」


 お互いにギャーギャーと騒ぎながら、姫樫姉弟は喧嘩を始めてしまった。

 よし、運良く矛先を逸らすことが出来たぞ!

 後はこの話を戦いに紛れて有耶無耶にしてしまえば完璧―――



「――レンくん、お話がありますから今夜は家に帰って来なさい」

「――お夕飯の準備はこっちでするから、みんなで帰って来るのよ。蓮上君?」

「……あい」



 ――と思っていた時期が俺にもありましたが、母さんとお祖母ちゃんに捕まりました、はい。

 正座でお説教コースかなぁ? まぁしゃあねぇや、イズメたちは喜ぶだろうし。


 何にせよ、デウスホーンドラゴンはまだ回復に時間がかかるみたいで、しばらくこちらに攻撃してこないようだ。

 今の内に情報共有をしておこう。




 ◇




 情報共有を行い、デウスホーンドラゴンに関しての情報を更新した。


 まず、デウスホーンドラゴンの周囲に展開されている障壁は『天道開門』クラスの破壊力ならぶち破れるという事の確認と、実際に目で見てデウスホーンドラゴンの自己回復速度を確認することが出来た。

 障壁をぶち抜いた上で、本体を撃墜出来るだけの威力を維持する事は出来ないようだが、そこは『天道開門』以外の攻撃手段を用意すれば解決する。


 また、障壁は一度破壊すれば再び復活するまでまた、五秒ほど掛かるという事も判った。

 たった五秒と思うかもしれないが、五秒あれば障壁が復活する前にデウスホーンドラゴンに近付いて首を刎ねる事は十分に可能だ。


 以上の事から、まずデウスホーンドラゴンの障壁を『天道開門』でぶち抜いてから、追撃で俺が首を刎ねるという作戦が自然と立てられたのだが、この作戦には一つ欠陥がある。

 姫樫弟の攻撃にしろ、俺の攻撃にしろ、デウスホーンドラゴンに気付かれて対処されたらどうしようもないという事だ。


 自身の攻撃に『必中効果』を付加する奥義スキル『魔弾の王』を持つ姫樫弟の場合は、最悪魔法を発動させることさえできればそれで済むが、問題は俺の方だった。

 俺の弱点と言うか、俺の纏う『朱雀羽織』の弱点なのだが、こいつは起動状態だと俺が『気配遮断』スキルなどを使っていても存在が察知されてしまうのだ。

 俺の強みは、無警戒状態の相手にどんな状況、どんな体勢からでも首刈を行うことが出来る事なのだが、存在を察知された場合その強みの片方、あるいは両方が封じられてしまう。


 『朱雀羽織』を外して飛行魔法で向かうと言う手もあるが、それでは遅すぎる。

 姫樫弟の魔法の直後に、一瞬で距離を詰めて首を刎ねるのが望ましいのだ。

 それに、筋力と違って俺の耐久力はそれほど高くない。

 攻撃前に察知されて反撃されれば、あるいは察知する以前に自身を中心とした範囲攻撃でも使われれば、返り討ちに合う可能性もある。


 理想を言えばデウスホーンドラゴンの陽動や空中での足止めを行える者が居れば良いのだが……。


 その事を口にすると、黄村と藍藤の二人が囮役を志願して来た。


「ならば、陽動作戦は拙者が致しましょう。拙者も神聖特性持ちでござるし、何よりこういった事は忍者の得意分野でござるからな!」

「神聖特性持ちが必要という事なら、(わたくし)も陽動に参加しましょう。何より空中戦は、『空聖騎士エアリアル・パラディン』である私の領分ですもの!」


 忍者っぽい要素があればいつだって自信満々の黄村と、自身のジョブを引き合いに出して胸を張る藍藤。

 普段は残念な所も多いが、こういう時は本当に頼もしいよ二人共。


 この場に居る神聖特性持ちの探索者は黄村と藍藤、そして俺と姫樫姉弟の五人のみだ。

 役割分担の結果、黄村と藍藤がデウスホーンドラゴンを攻撃してヘイトを集め、その間に姫樫弟が攻撃魔法の準備、綾乃さんは結界を更に張る事と、姫樫弟の攻撃の直前に黄村と藍藤を転移魔法で回収を担当し、俺は姫樫弟の攻撃に合わせて出撃し、障壁を失ったデウスホーンドラゴンの首を最短最速で刎ねる事となった。


「攻撃に関しては我に万事お任せですぞ!」

「防御と二人の回収はあたいに任せな。英一郎、玲乃蘭ちゃん、大船に乗ったつもりで、思い切りぶつかってきな!」

「承知にござる!」

「ええ、頼みましたわ。綾乃さん」


 全員気合十分のようだ。

 みんなの実力は知っているし、このままでも十分やれると思うが……一応渡しておくか。


「――みんな、これ貸すから使ってくれ」

「「「「おっと!」」」」


 四人それぞれに向かって、『収納』スキルから取り出した四本の巻物を投げ渡し、俺自身も一本持つ。

 渡した物の正体を知る黄村が、驚きの声を上げた。


「『五色教典(ダークフルード)』ではござらんか!? 頂いてしまっても宜しいんでござるか!? 宜しいんでござるね!!」

「おい馬鹿誰がやるか! 貸すだけだ、貸すだけ。五本セットで五十億の値がつくんだぞ!?」

「「「「「「「五十億!?」」」」」」」


 あ、やっべ、つい大声で言っちまった。

 周りの探索者たちが、巻物を物凄い目で見ている。

 そんな目で見たってやらないからな! 大体、これらを作るのにどんだけ手間がかかったと思ってんだ!!


 『五色教典』とは、俺が『魔導教典書士スクリプチュア・メーカー』としての技能とそれまで手に入れた素材類をフル投入して作り上げた、最高傑作の『魔導教典(スクリプチュア)』だ。


 『魔導教典』とは『魔導書(グリモワール)』の亜種であり、それぞれの関係は『教科書』と『ノート』に例えられる。

 どちらも『魔法とスキルを記録し、所有者に代わって自動発動させる』という機能をデフォルトで持っているが、『魔導書』が完全個人用である代わりにより強大な力を発揮するのに対し、『魔導教典』は読んだ者が記録された魔法やスキルを修得するのを補助するという正に教科書のような機能を持っている。


 『五色教典』には俺が今まで修得した、奥義スキルを除く全ての魔法とスキルが系統ごとに分類されて記録されている。

 持っていて損は無いはずだ。


 四人にはそれぞれ、黄村には『五色教典(ダークフルード)黄金斜陽(アダスターゴールド)』を、藍藤には『五色教典(ダークフルード)蒼穹深淵(ブルーD)』を、綾乃さんには『五色教典(ダークフルード)漆黒庭園(ブラックガーデン)』を、姫樫弟には『五色教典(ダークフルード)白皙気功(ホワイトオーラ)』を渡した。

 それらを手に、四人は更に気合が入った顔でそれぞれ動き出した。


「では、行って来るでござる!」

「出撃いたしますわ。私たちに勝利を!」


 黄村と藍藤が『五色教典』による強化を受けて、普段以上の速さで駆けて行く。


「さーて、我らも準備を開始するのですぞ!」

「これ、ほんとにすごいね。ステータスメニューを確認するまでも無く、あたい自身が強化されているのが判るよ」

「我もですぞ! 今なら普段の全力以上の全力も出せそうですな!!」

「「「「「「「出さんで良いっ!!」」」」」」」


 全員が声を揃えて突っ込む。

 姫樫弟に渡したのは失敗だったかもしれんな。

 火力馬鹿が普段以上に生き生きし出すとかシャレにならん。

 頼むから手綱はしっかり握っていてくれよ、綾乃さん。



 ものの数秒でデウスホーンドラゴンの元に辿り着き、即座に攻撃を開始した黄村と藍藤の姿を『千里眼』で確認しながら、俺も『収納』スキルからの直接装備で全身を本気装備に切り替えて準備を整える。

 巻物を持つ左手に力を籠めると、手に持っている魔導教典、『五色教典(ダークフルード)紅蓮覚醒(レッドライジング)』がほのかに熱を帯びたように感じた。

魔導教典(スクリプチュア)』と、『魔法書(マジックブック)』&『技能書(スキルブック)』の違いって何?


前者が『わざマシン』、後者が『わざレコード』みたいな感じ。使っても無くならないのが前者で、使うと消えるのが後者。

ただし、『魔導教典』は読んだ者に魔法やスキルを強制修得させるのではなく、『修得速度上昇』効果付きの教科書となっている。

直ぐに使えないなら『魔法書』と『技能書』で良くね? と思うかもしれないが、勉強して覚える分魔法やスキルに対する理解度が高まる為、『魔導教典』の場合は魔法やスキルを修得した後直ぐに使いこなすことが出来る。

また、『魔導教典』を使って勉強すると魔法使い系の上級ジョブに転職する為に必要な魔法への理解度や熟練度を非常に効率良く上げることが出来る為、世界各国の大富豪が子供へ魔法の英才教育を施す為に買っている。


『五色教典』の名前の元ネタが露骨に遊〇王。

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[気になる点] 魔導教典を持っただけで 強化されている的な 発言があったのは 気分の問題ですか? [一言] 今後のジョー君の 活躍にも期待しています!
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