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第十四話 「魔導教典書士の絶体絶命」

前回のあらすじ


世界をムシャれる鳥さんを、毎晩毎晩夢の中で首チョンパしてその体を抱き枕にして熟睡しているサイコパス主人公が居るらしいですよ?

いやぁ、一体どこの『首刈真拳開祖』さんなんでしょうねぇ~(そりゃ『アノ化け物』呼ばわりされるわ)

 青ヶ谷女子と緑河女子を送った後、ダンジョン管理局支部へと戻ると、そこは死屍累々だった。

 いや、この短い時間に何があった?


 野戦病院、というほど酷くは無いが、ダンジョン入り口前の広場に負傷して寝かされている探索者が幾人も居り、ダンジョン入り口からは更に追加の負傷者が運び込まれている。

 全員回復魔法かポーションによって治療済みであるらしく、命に関わるような怪我を負った者は居ないようだが、これはちょっと酷いな。

 丁度近くを通った顔見知りの探索者の男に事情を聞いてみる。


「おい、何があった。全員デウスホーンにやられたのか?」

「首刈、戻って来たか! ならお前も直ぐに応援に向かってくれ! 今は和菓子団と秤間のお嬢たちが抑えてくれてるが、このままじゃ厳しい」

「姫樫たちも合流してたのか……」


 俺が居ない間に黄村の所属するクラン『姫樫堂和菓子団』のメンバーも合流していたらしい。

 しかし、藍藤たちと姫樫姉弟が揃っていてなお、これだけの負傷者が出ているのか? ……状況は思った以上に悪いのかもしれない。


「奥義個体だとは聞いていたが、そんなに強いのか?」

「強いなんてもんじゃない。通常個体よりも全ての基本能力値が高い上に『防御神性』持ちだ! おまけに高い自己回復能力と『防御神性』とは別に常時展開型の障壁までもってやがる」

「生存特化タイプかよ、面倒な……まぁ、攻撃特化じゃないだけましか」

「ああ、おかげと言って良いのか判らんが、幸い死人は出て無い」


 『防御神性』と言うのは、一部のボスモンスターたちが持つ特殊な防御能力で、『神聖特性』と言う特性を持つ攻撃以外を全て無効化するという能力だ。

 これを持つモンスターは、有効打となる攻撃が非常に限られてしまう為、対抗手段が無ければそのまま一方的に磨り潰されてしまいかねないほどに厄介だ。

 また、『神聖特性』と言うのは神由来の装備や魔法、スキルの事を指し、例を挙げるなら俺の持つ『朱雀羽織』や夜刀神から手に入れた奥義スキル『天破激震の頂』などがこれに当たる。


 『神聖特性』を持つ装備や魔法、スキルは例外なく強大な力を持っており、それに比例して入手難易度も高い為、持っている者は非常に少ない。

 幸い藍藤たちや姫樫姉弟は神聖特性持ちである為、防御神性相手でもダメージを与えることが出来るが……現状が防御神性を抜きにしても、今回のデウスホーンドラゴンが並々ならぬ強敵である事を証明している。


 聞いた限りでは生存特化―――攻撃能力が高くない代わりに、防御や自己回復などで生存能力が高いタイプのようだが、全ての基本能力値が通常個体より強化されているという事は、通常個体の持つ攻撃手段が全て強化されているという事でもある。

 聞いた限りでも、非常に厄介な相手だな。


「話は判った、俺も直ぐに向かう」

「ああ、そうしてくれ。 ……頼んだぞ、『首刈(くびかり)レッドジョー』!」

「任せろ!」


 男に別れを告げてダンジョン入り口へと走り、入り口を超えたところで起動状態のままである『朱雀羽織』で空へと舞い上がる。

 すっかり夜の帳の下りたダンジョン内で、四季山の一角に炎や雷の激しい光が確認出来た。

 間違いなく奴はあそこに居る。俺は『朱雀羽織』を大きく羽ばたかせて飛翔した。




 ◇




 光の発生源へと近付くと、稲妻を纏いながら炎のブレスを地上に向けて吐くデウスホーンドラゴンの姿が小さく確認出来た。

 『千里眼』スキルと『鑑定』スキルを併用してデウスホーンドラゴンの名前を確認する。

 奥義個体は名前に奥義スキルの名前が組み込まれている為、名前を見れば奥義スキルの効果を凡そ予測する事も出来る。

 まぁ、判り易い名前ばかりと言う訳でも無いのだが。



神龍の角(デウスホーンドラゴン)寵愛されし者(アマデウス)



 『寵愛されし者(アマデウス)』?

 防御神性や障壁、自己回復能力は神様の寵愛の証ってか? 誰が不沈艦を作れって言ったよ!?

 この全力で余計な事をして行く感じ、さてはギリシャだなおめぇ?(偏見&信頼)


 何て事を考えていると、突如デウスホーンドラゴンの上空に巨大な魔法陣が展開され、その中心に太陽の如き純白の輝きが発生して―――って、やべぇ!?


「回避ィーーーーーッ!!!」


 慌てて翼を畳み、落下と急降下を合わせて最速で地上に突っ込む。

 着地の衝撃を五百万超えの筋力で無理矢理捻じ伏せ、『朱雀羽織』で全身を包む。


 次の瞬間、魔法陣から発生した巨大な光の柱がデウスホーンドラゴンを飲み込み、大爆発を起こしてその爆風や衝撃が俺の元へと殺到した。


「『天破激震の頂インパルス・オブ・ザ・ワン』―――ッ!!」


 特にスキル名を口に出す必要は無いのだが、勢いで叫びながら奥義スキルを発動させる。

 この奥義スキルは、『衝撃波を操る』と言う単純かつ自由度の高い能力だ。

 発生する衝撃波の威力は俺の筋力値に比例し、五百万を超える筋力値から放たれる衝撃波を、俺は全身からごく短い距離で全方位に向けて放つことで、衝撃波の鎧を作り出した。

 ぬぐぉお、負けるかぁあ!!




 襲い来る爆風をやり過ごす事十数秒、衝撃波の鎧を維持したまま『朱雀羽織』を解いて光の柱が放たれた方を見る。

 するとそこには、爆風によって抉られ薙ぎ倒された山肌や森の木々、そして光の柱によって穿たれた大穴と、全身から黒煙を上げながらも飛行状態を維持しているデウスホーンドラゴンの姿があった。


「マジかよ……『天道開門(ハイペリオン・ゲート)』の直撃でもあの程度のダメージなのか!?」


 先程デウスホーンドラゴンを飲み込んだ光の柱、その正体は『神聖特性』を持つ光属性の最上級攻撃魔法『天道開門』である。

 使用したのはおそらく、というか間違いなく姫樫姉弟の弟の方、『大魔導士』のジョブを持つ『姫樫(ひめがし) (じゅん)』であろう。


 あいつは重度の魔法狂い、というか魔法火力狂いであり、複数の魔法強化系奥義スキルを持つ国内最強格の魔法使いだ。

 レベルこそ俺よりも大分低いが、魔力強化系奥義スキルを複数持っている為、筋力強化系奥義スキルを複数持つことで五百万以上の筋力値となっている俺に匹敵するほどの魔力値を持っている。

 その男が放った最上位攻撃魔法でも、デウスホーンドラゴン相手に致命傷を与える事は出来なかったのだ。

 その上、自己回復能力のおかげか、見る見るうちに全身のダメージが回復して行っている。

 『屍征獣』でもあそこまでの防御力は持ってなかったぞ!?


 認識を改めよう。

 あれは明らかに、探索者に一方的に狩られるボーナスモンスターでは無い。

 『屍征獣』にも匹敵する、最強クラスのレイドボスモンスターだ。

 『EX(エクスペディション)モンスター』では無い事が、唯一の救いか。


 とりあえず、先に戦っているはずの黄村や藍藤たちと合流しよう。

 再び空に舞い上がり、『気配感知』スキルと『千里眼』スキルを併用して他の探索者たちを探す。

 おそらく、先ほどの『天道開門』の余波にも耐えられるだけの陣地を築いているはずだ。

 でなければ、流石に姫樫弟もあんな大規模破壊魔法を使ったりしないだろう。

 ……しないよね? ちょっと不安になって来た。



 『気配感知』で強い気配が集団で存在している場所を見つけ、そちらを『千里眼』で確認するとそこには黄村たちの姿が見えた。

 良かった、『天道開門』の余波に巻き込まれたりはしていないようだな。

 黄村たちが居る場所には数十名の探索者が集まっており、その集団の外側には円形に大量の白い札がばら撒かれている。

 おそらく姫樫姉、『陰陽大師』である『姫樫(ひめがし) 綾乃(あやの)』さんが張った結界であろう。

 魔法攻撃特化の弟と、そのサポートをする姉のコンビネーションは、姫樫堂和菓子団の基本戦術の一つだ。

 ……まぁ、単なるサポートに収まらないのが綾乃さんな訳だが。


 というか、よく見たら集団の中に母さんとお祖母ちゃんも居るじゃないか!?

 うへぇ……黄村が居るから、俺がダンジョンに来ていた事は知っているだろうし、合流するのが遅いと怒られるかもしれない。

 一応青ヶ谷女子と緑河女子を送って来たからって言う正当な理由があるが……それとは別で最近家に帰っていない事を怒られるかもな。

 うん、まぁ覚悟しておこう。


 若干及び腰になりながらも、とにかく合流しようと飛んで行くと、上空……今度はデウスホーンドラゴンの上だけでは無く、辺り一帯の空を埋め尽くすかのような超巨大魔法陣が展開された。

 こんな規格外の超大規模魔法が使える術者なんて、この街には姫樫弟しかいない為、誰がやったのかは直ぐに判ったが、一体何の魔法を発動させようとしているかが問題だ。

 ってか、防御神性持ち相手に使う超広域魔法って言ったら絶対『星天嘲弄ツィツィミトル・リディキュール』だろ!?

 おい止めろ馬鹿!! 最上級天体魔法何かに巻き込まれたら、流石に俺でも大怪我負うぞ!?


 空一面の魔法陣が輝きを増し、今にも魔法が発動しそうな中を全速力で飛翔する。

 うおおっ間に合えっ! 敏捷値四万超えの俺なら間に合うはずだ!!


 速度的には到着まで一秒と掛らないが、そのごく僅かな時間が酷く長く感じる。

 肉眼で捉えた先には、杖を掲げ今にも魔法を発動させようとしている姫樫弟の姿があった。

 ええいクソっ、声を掛けて止めてちゃ間に合わん。強硬手段だ!


「『星天――』」

「ストォォォップゥゥァァアアアアアーーーーーッ!!! 止まれ姫樫弟ぉーーーーーっ!!!」

「!? 何事ですかなぁーーーーーっ!?」


 杖を掲げる姫樫弟に抱き着く様に押し倒して、魔法の発動を止める。その際に姫樫姉が張ったであろう結界をぶち破ってしまったが、緊急事態ゆえ許して欲しい。

 くそう、なんで男なんぞに抱き着いて押し倒さねばならんのだ。どうせならでっかい熊とかモフモフした動物相手にやりたかった!


 何にせよ、俺は先行していた探索者たちの救援に間に合った。

 ここから反撃開始だ! と言いたいが、正直もう帰ってペットたちをモフりたいです……。

『星天嘲弄』(ツィツィミトル・リディキュール)


半径数キロメートルから数十キロメートルの範囲に隕石を雨霰と降らせる天体魔法。

マヤ・アステカ神話の破壊の女神『ツィツィミトル』の名を冠しているだけあって凄まじい破壊力を持っている。

なお、術者である『姫樫 純』(ひめがし じゅん)の恐ろしい所は、自身の全ての攻撃を必中化させる奥義スキル『魔弾の王』(ザミエル)を併用する事で超広範囲に降り注ぐ隕石群を、標的一体に全弾命中させて来る事である。

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